健康 魔法の薬はあるのでしょうか。

現代に生きる私達は、人類史上かつてないほど長生きしていますが、たとえ寿命は延びても、必ずしも以前より健康になったわけではありません。それどころか、運動不足に加えて、座りっぱなしの生活や食生活の乱れで不健康な生活習慣に拍車がかかり、慢性疾患や早期老化が増える一方です。

そんな中で、このような疾患の発生を最小限に抑えるため、細胞レベルで有害な酸化ストレスや慢性炎症の予防を助け、長寿につながるとされる植物性物質への関心が高まっています。誰もが望む健康長寿を達成するための鍵は、心臓と脳の健康を維持することにあります。植物性食品に含まれるレスベラトロール、オリーブ葉エキス、ブドウ種子エキス、中鎖トリグリセリド(中鎖脂肪酸)といった成分には、長寿だけでなく健康増進にも役立つエイジングケア効果が期待できます。

1. レスベラトロール

レスベラトロールは、70種以上の植物に含まれるポリフェノールの一種で、特にブドウとその果皮や種子をはじめ、赤ワインやブルーベリーなどに多く含まれています。このレスベラトロールがエイジングケアに有効な食品とされているのは、中からキレイにすると考えられているからです。もう一つ、レスベラトロールならではのメリットは、さまざまな神経変性疾患の予防に有益な神経保護作用があると考えられることです。これは、脳が代謝副産物の一部を除去しやすいように助けることで生じる作用です。この副産物が脳に蓄積されてプラーク(コブ)を形成すると、高齢者に見られる認知症などの症状を引き起こすと言われています。

レスベラトロールは、細胞のミトコンドリアを保護することで、神経保護作用を発揮するという説があります。つまり、このポリフェノールは、酸化ストレスの有害な影響から細胞レベルで体を保護できると言えるかもしれません。また、レスベラトロールには軽度の刺激作用があり、活力増進に役立つ可能性があることから、疲労緩和にも期待できそうです。さらに、レスベラトロールの保護作用には、アミロイドペプチド(アルツハイマー病の発症に関わっているとされる脳内タンパク質の一種)を除去しやすくして、神経細胞アポトーシス(組織の成長過程でプログラム化された細胞死)を減少させることが含まれます。

健康長寿を目指す上で重要な要素の一つは、心臓の健康を維持することです。レスベラトロールは、心拍に不可欠な心臓細胞内のカルシウムの流れを改善するとみられる他、体重とトリグリセリド(中性脂肪)濃度を減らし、血圧をサポートし、心血管疾患を軽減する可能性もあります。

なお、レスベラトロールの摂取量については、1回1gの服用であれば副作用がほとんどなく、1日最大5gまでは安全とされています。ただし、1回2.5g以上の場合、人によっては胃腸の不快感を感じるケースがあるようです。

2. オリーブ葉エキス

地中海食に欠かせないオリーブオイルには、健康や食事に重要な成分として認識されている遊離脂肪酸やトリグリセリドがさまざまな量で含まれています。オリーブ葉エキスは、還元成分が豊富で抗炎症作用もあり、代謝や心血管の保護作用に役立つ可能性があります。オリーブオイルには健康への効果が認められている成分が数多く含まれていますが、その中でも特にポリフェノールが注目されています。このうちの一つが、オリーブ葉エキスに含まれる化合物であり、オリーブやオリーブオイルの苦味の素であるオレウロペインです。

オレウロペインのようなオリーブ葉エキスの化合物は、過剰な日光、栄養バランスの悪い食生活、強度のストレスなどによる細胞損傷後に放出されがちな炎症性メディエーター(体内で炎症反応を起こしたり維持したりする物質)を減少させるのに役立つことがわかっています。また、オリーブ葉エキスに含まれる化合物は、炎症性カスケード(カスケード=生化学的反応などを介して1つのシグナルを段階的に増幅させる生物学的プロセス)を引き起こす炎症マーカー(炎症指標)であるインターロイキン6(IL-6)の血中濃度を減少させることも明らかになっています。このマーカーを減らすことで、体内の細胞は炎症反応を起こしにくくなり、痛みや損傷の他、早期老化を招く症状やあらゆる兆候の予防につながります。

オリーブ葉エキスが持つもう一つのエイジングケア特性は、コレステロール値の低下を促進する能力です。オリーブ葉エキスの補給について調べた動物研究では、悪玉コレステロールとして知られるLDLコレステロール値が低下しました。このコレステロールが血管内に溜まると、心血管系の健康状態が低下しやすくなり、心臓だけでなく脳にも影響が及ぶことがわかっています。また、オリーブ葉エキスは、食後の満腹感を高めやすい酵素を増やすことも示されました。

3. ブドウ種子エキス

ブドウの種子と果皮には、かなりの量のポリフェノールが含まれています。過去何千年にもわたってブドウが利用されてきた理由は、果物としての栄養価やワインの需要だけでなく、栄養補助食品としての特性にもあるでしょう。通常、ワインの製造工程で廃棄されるブドウの種子と果皮には、ブドウ種子エキスの中で最も重要なポリフェノールであるフラボノイドと非フラボノイドが含まれています。ちなみに、ブドウ種子エキスに含まれるフラボノイドは、ストレスを軽減する化合物であることが示されています。

その高い還元成分含有量により、ブドウ種子エキスには慢性疾患に対する予防効果や心血管の保護作用があると言われています。その上、ブドウの果皮に含まれるポリフェノールは、ブドウを細菌感染から守ることがわかっており、人体でも、黄色ブドウ球菌による皮膚細菌感染症の予防にも役立つと考えられています。皮膚マイクロバイオーム(皮膚微生物叢)に多いこの細菌は、異常繁殖して感染症を引き起こすことがあります。

ブドウ種子エキスに含まれるフラボノイドには心臓保護作用もあると考えられています。赤ワインが心臓に良いと信じられているのは、LDL(悪玉)コレステロールの低下を助ける働きがあるフラボノイドを多く含むためでしょう。フラボノイドによるその他の心臓保護効果は、このポリフェノールの特性によるものと考えられています。還元成分は血管壁の保護に役立ち、血管内の炎症反応を抑えることで、瘢痕(はんこん。損傷)を防ぎやすくすることから、血液がスムーズに流れる健康な血管内腔(けっかんないくう。血液の通り道)を維持すると言われています。さらに、還元成分は、脳への血流を維持し、脳に必要な栄養素の供給を促進し、年齢と共に蓄積されて数々の慢性神経疾患の原因となる老廃物を除去することにより、神経保護作用を発揮するとされています。

4. 中鎖トリグリセリド(中鎖脂肪酸)

健康体重を維持することは長寿への近道であることが明らかになっています。スカンジナビアで犬を対象に行われた動物モデル研究では、体重が少なめの個体は生存率が高い見込みがあることが示されました。飽和脂肪酸は不健康な食事の一端をなすものとして、多くの世界的権威が摂取を制限することを推奨しています。ただし、飽和脂肪酸といってもさまざまな種類があり、こうしたアドバイスの多くは、健康への悪影響が比較的大きいとされる長鎖トリグリセリドを評価した研究結果に基づいたものです。

その一方で、中鎖トリグリセリドは心臓を保護する効果があることがわかっています。長鎖トリグリセリドと中鎖トリグリセリドの最大の違いは鎖の炭素数で、長鎖型は炭素数が12以上、中鎖型は6~12です。中鎖トリグリセリドはLDLコレステロール値を下げる働きがあるとされ、総トリグリセリド濃度には影響を与えなかったことが研究で示されました。中鎖トリグリセリドは、オイルのサプリメントとして摂取できる他、ココナッツオイルやパーム核油(パームカーネルオイル)に含まれていることもあります。これらのオイルは、カロリー消費と満腹感に影響し、胃腸の健康と体重増加を抑えるのに役立つことがわかっています。つまり、消化時にカロリーを消費しながらも腹持ちが良いということになります。

さらに、中鎖トリグリセリドは減量をサポートするだけでなく、心臓保護作用があり、長寿につながるエイジングケア効果があることも示されています。また、血清コレステロール値の低下に期待でき、糖尿病などの慢性疾患の予防に重要な血糖コントロールを促進する可能性もあります。このような慢性疾患を予防することで、中鎖トリグリセリドは心血管系の健康維持に役立ち、長寿に寄与すると考えられます。なお、中鎖トリグリセリドを補給する際に起こり得る副作用として一部の胃腸障害が挙げられますが、許容範囲内で少量ずつ摂取することで最小限に抑えられるでしょう。

魔法の薬はあるのでしょうか。

健康寿命の延伸を目指す医学の進歩に伴い、加齢に伴う生活の質(QOL)について考えることも重要です。健康的な加齢を左右するのは、遺伝的な要素よりもむしろ生活習慣です。バランスの良い食事をはじめ、適度な運動、質の高い睡眠、禁煙の他、ストレスを減らしたり、脳を鍛えたり、社交的であるといった要素は健康長寿につながる重要な鍵であり、特に以下の地域がそうした特徴で知られています。

  • イタリア・サルデーニャ島
  • カリフォルニア州ロマリンダ
  • コスタリカ
  • 沖縄

健康長寿を目指すなら、やることリストや、食べるものリストに従うのではなく、生活習慣全体として考えることをお忘れなく。結論として、レスベラトロール、オリーブ葉エキス、ブドウ種子エキス、中鎖トリグリセリドは、老化を防ぐのに役立つ魔法の薬なのでしょうか。残念ながら違います。ただ、この4種類をはじめとするサプリメントは、心臓と脳の健康維持を後押しすることで、できるだけ長く活動的でいられるように、絶えず脳を刺激するのに一役買うかもしれません。また、普段の生活で生じるストレスによって蓄積されがちなフリーラジカルに抑えやすくするなど、この4種類の成分は、健康長寿を目指して加齢の影響に立ち向かう上で強い味方となるでしょう。

レスベラトロールとは


レスベラトロールとは赤ワインに含まれるポリフェノールの1種で、赤ブドウやピーナツの薄皮などに含まれます。

赤ワインに含まれるポリフェノールには抗酸化作用、アンチエイジング、動脈硬化の予防などに効果があることは有名な話です。
しかし、この効果の主役が、レスベラトロールによるものということはあまり知られていません。

レスベラトロールは長寿遺伝子サーチュインを活性化させ、健康で若々しく生きるために必要な役割を果たしています。

レスベラトロールがもたらす効果効能


レスベラトロールは肌や髪の老化予防のほか、病気に対する効果もあります。
レスベラトロールの効果について具体的にどのようなものがあるのか以下で説明します。

肌の弾力改善

肌の弾力を保つコラーゲンは加齢や紫外線により破壊されます。
コラーゲンが減少すると肌のハリがなくなり、たるみができ肌の弾力が低下します。

レスベラトロールにより活性化される長寿遺伝子サーチュインは、コラーゲンの分解を抑える働きがあります。
コラーゲンの分解が抑えられると、肌の弾力が改善される効果が期待できます。

シミ予防

シミの主な原因は紫外線です。
皮膚の表皮細胞が紫外線などで刺激を受けると、メラニンを作る酵素であるチロシンキナーゼによりメラニンが作られます。

メラニンが蓄積すると色素沈着し、シミになります。
レスベラトロールはチロシンキナーゼを不活化することで、メラニンの産生を抑えシミがを予防する働きがあります。

ニキビ予防

ニキビはアクネ菌や皮脂分泌の増加などで引き起こされます。

レスベラトロールには、アクネ菌の増殖を抑える作用があります。
また、炎症を抑える効果もあるため、ニキビの悪化を防ぐことが期待できます。

メタボ予防

メタボリックシンドロームは生活習慣病が引き金となり、脂肪が内臓周辺にたまることで発症します。

レスベラトロールは、ミトコンドリア機能の活性化によるインスリン上昇の抑制肝臓脂肪の減少などの効果が期待されています。
そのため、カロリー制限をしたのと同じような効果(CRミミックリー)が得られるとされています。

白髪防止などの老化対策

体内で作られる活性酸素が増えることで老化が早まり、白髪が多くなります。
活性酸素の増加を抑制すると、老化を遅らせることができます。

レスベラトロールには強力な抗酸化作用があります。
体内の活性酸素の増殖を抑え、老化を抑えます

血流改善

レスベラトロールは一酸化窒素合成酵素の働きを活発にする作用があります。

一酸化窒素合成酵素は、血液をサラサラにしたり、血管が拡張するのを助ける役割があります。
この働きにより血流が改善され、血管を保護する効果が期待できます。

血糖値のコントロール

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。
インスリンの効きが悪いと血糖値が上昇してしまいます。

レスベラトロールはインスリンの感受性を高め、効きをよくしてくれる作用があります。
血糖値をコントロールし、糖尿病の予防に役立つ効果が期待できます。

癌の抑制

高濃度のレスベラトロールには癌の抑制に期待できる効果があります。
細胞の分裂を抑える働きのあるp53遺伝子を活性化させ、アポトーシスという癌細胞を死に導く働きがあります。

乳がんの抑制

少量のレスベラトロールは乳がんの予防に役立つ作用があります。
遺伝性乳がんの関連遺伝子を抑制し、癌の増殖を抑える効果があると報告されています。

また、レスベラトロールは、乳がんのホルモン治療を効きにくくする遺伝子の発現を抑えて、乳がん細胞の増殖を抑制する働きがあります。

不妊改善

レスベラトロールは血流を改善する働きがあるため、卵巣の働きがよくなる効果が期待できます。
また、妊娠率の上昇や流産の低下の報告もあります。

なお、黄体期に服用すると流産率が上昇したという報告があるので、医師に相談して服用を開始したほうがよいでしょう。

長寿

加齢が進むと遺伝子の末端部テロメアが短くなります。
テロメアが短くなると、細胞を修復できなくなり、老化や病気の原因につながります。

また、テロメアの短くなるスピードが速いと、老化が早く進みます。
レスベラトロールは長寿遺伝子サーチュインを活性化することで、テロメアの短縮のスピードをゆるやかにしてくれます
健康的に寿命を延ばすのをサポートしてくれるでしょう。

男性特有の症状EDの改善

EDは陰茎動脈が十分に拡張されないことが原因で起こります。

レスベラトロールは、一酸化窒素を増やし血流をよくすることで、動脈を拡張させる働きがあります。
動脈拡張作用により男性機能低下の予防に期待ができます。

女性ホルモン様効果

閉経後は女性ホルモンが減少し、様々な更年期症状が現れます。
レスベラトロールは女性ホルモンと類似の構造をもつため、女性ホルモン様効果を有し、症状の緩和に効果が期待できます。

心臓病の予防

血液中に悪玉コレステロールが増えると、血管に付着し動脈硬化が起こり血管が狭くなります。
血流が悪くなると、狭心症や心筋梗塞につながる恐れがあります。

レスベラトロールは、悪玉コレステロールの酸化を防ぐことで、動脈硬化の進行を抑える働きがあります。
フランス人は脂肪分が多い食事をしているにも関わらず、心臓疾患の死亡率が少ないというフレンチ・パラドックスと呼ばれる現象があります。

心臓疾患の死亡率が少ないのは、赤ワインに含まれるレスベラトロールによる効果と考えられています。

レスベラトロール含有食品を紹介


レスベラトロールを含む食品にはどのようなものがあるかご存知ですか?
レスベラトロールは果物やワインなど身近な食品にも含まれています。

サンタベリー

サンタベリーはリンゴベリー、コケモモ、マウンテンクランベリーとも呼ばれます。

抗酸化作用が強く、熱や紫外線にも強いトランス型のレスベラトロールを多く含みます。
ビタミンEも豊富に含まれます。

ぶどう

ぶどうの皮や種はレスベラトロールを多く含みます。

また、赤ブドウに含まれるアントシアニンは目の疲れの回復に効果があります。
糖質を多く含むため、疲労回復によい果物です。

ピーナッツ

ピーナッツは薄皮部分にレスベラトロールを多く含みます。
少量でも栄養価が高く、タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素がバランスよく揃っています。

また、ピーナッツに含まれる不飽和脂肪酸はコレステロールを下げる役割があります。

赤ワイン

赤ワインはポリフェノールを多く含有するため、レスベラトロールも豊富に含みます。
レスベラトロールが多いぶどうの皮と種を含んだまま、発酵させて作ります。

また、白ワインやロゼワインに比べて、カリウムの含有量を約2倍多く含みます。
カリウムは塩分を排出してむくみをとる効果があるため、塩分の高い食事と一緒に飲むとよいでしょう。

白ワイン

白ワインはぶどうの皮と種を取り除いて作られるため、レスベラトロールがあまり抽出されません。
しかし、有機酸が豊富で食中毒菌への殺菌成分を含む特徴があります。

ロゼワイン

ロゼワインはピンク色で、赤ワインと白ワインの両方の製法が取り入れられています。
そのため、レスベラトロールの含有量は両者の中間に位置します。

また、糖質量はグラス1杯で赤ワイン1.5g、白ワイン2g、ロゼワインが4gと、ロゼワインはかなり糖質が高いため飲み過ぎには注意が必要です。

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