ココナッツ

ココナッツオイルには中鎖脂肪酸の仲間である「ラウリル酸」が多く含まれています。ここにセレブたちが注目したのです。

ところが、アメリカ心臓協会から「Saturated fats: Why all the hubbub over coconuts?(英文)」と、ココナッツオイルが身体に悪いという発表が出されるなど、ココナッツオイルはそもそも本当に身体によいと言えるのか、疑問視する声も出てきました。


ココナッツの中鎖脂肪酸は健康によいのか、悪いのか

上記のように中鎖脂肪酸は、控えたい脂肪酸である「飽和脂肪酸」の仲間でありながら、エネルギー源として利用しやすいことから、「体脂肪をためない」と考えられ、セレブに愛用されました。実は病院の食事でも、「エネルギー源になりやすい」という性質を期待して中鎖脂肪酸を利用することがあります。

どのような患者様に対してかというと、

  • 手術後の患者
  • 未熟児
  • 低栄養
  • 摂食障害
  • サルコペニアの高齢者
  • 腎臓病

などです。これらの疾患はどれも低栄養で迅速なエネルギー補給が必要であったり、エネルギー補給の比率を変えるために通常の食品だけでは無理がある場合です。

この中で最も使用頻度が高いのは、腎臓病食です。腎臓病食は、「腎臓病治療食の人でも生でOK! 低カリウム野菜」で紹介したように、たんぱく質の制限があるため、糖質(炭水化物)か脂質でエネルギーを摂取しなければエネルギー不足でやつれてしまいます。炭水化物で摂取すると嵩(かさ)が増えてしまったり、意図しない甘さが追加されてしまったりして食べ辛いのです。

そのため、味が変わりにくい中鎖脂肪酸100%の中鎖脂肪(medium chain triglyceride:MCT)をお粥に混ぜたりおかずに混ぜたりして提供することはあります。腎臓病食は治療食の中でもかなり特殊な食事療法です。また、低栄養の食事もカロリーアップを狙った食事です。

中鎖脂肪を多く含むココナッツオイルを食べてはいけないということはありませんが、健康な人がココナッツオイルを使うことに健康的なメリットはほとんどないように思います。

むしろ中鎖脂肪酸は飽和脂肪酸の一種ですので、飽和脂肪酸は悪玉コレステロールであるLDLコレステロールを増やし、心臓疾患のリスクが上がるということは一つの事実です。今回、アメリカ心臓協会からのニュースが和訳され、「ココナッツオイルはお勧めできない。体に悪いから」として記事が注目を受けたことでも広く知られるようになりましたが、日本動脈硬化学会のQ&Aの中でも、同様の注意が促されています。

ココナッツオイルの上手な使い方

以上のことから、ココナッツオイルはすばやくエネルギーとして使うことができるため、低栄養や腎臓病の患者様にとっては「身体にいいアブラ」と言ってよいと思います。使用量を医師や管理栄養士に確認しながら上手に利用していただくとよいと思います。

一方で、元気で働ける年代の健康な人、ダイエットをしたいと考えている人などは、エネルギーの摂取は控えたいわけですから、ココナッツオイルを使ってエネルギーを強化する必要はありません。管理栄養士として考えると、身体の潤滑油として必要な不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルやごま油などを選ぶようにするのがよいのではないかと思います。

個々人の身体の状態やライフスタイル等に合わせて、上手にアブラを選びたいものですね。

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