准胝観音
深い虚空の奥、光はひとつの心臓のように脈打っていた。
それは生きた仏陀、仏舎利の存在。
時空を超え、無数の衆生の苦悩を胸に抱き、静かに呼吸する。
光は揺らめき、形を変え、やがて輪廻の彼方から訪れる声に応じた。
その瞬間、無限の慈悲と智慧が、一つの姿に凝縮された。
――准胝観音。
一面三目の顔は、過去も未来も映す静かな鏡。
十八本の手が、宇宙の秩序を示すかのように広がる。
中央の二本の手は胸の前で説法印と施無畏印を結び、言葉なき教えを語る。
手のひとつひとつには意味が宿っていた。
蓮華は清浄を、数珠は輪廻の流れを、斧は無明を断つ力を、
水瓶は癒しと浄化を示す。
表情は穏やかで優美、蓮華座に座し、まるで世界のすべてを包み込む慈母のようであった。
その光の背後では、不動明王、愛染明王、阿弥陀如来、薬師如来、普賢菩薩、文殊菩薩──
無数の仏たちの気配が、微かに重なり、祝福の波紋を広げていた。
そして、仏舎利は微かに震え、光を強めた。
瞬間、形が溶け、流動し、准胝観音そのものへと変化したのである。
その姿は単なる仏ではなかった。
すべての仏の智慧が、慈悲が、力が一つに結晶した存在。
光は拡がり、静かに世界を満たす。
小さな命も、迷いの深い魂も、すべてがその光の中で揺らぎ、解かれていく。
准胝観音は微笑んだ。
その微笑みは、光として広がり、やがて無限の仏の波となった。
――そして、世界のすべてが知った。
仏舎利は、ただの遺物ではなく、命ある仏陀そのもの。
変化し、准胝観音となり、さらに一切の仏へと繋がる存在であることを。
虚空は静かに応え、世界の中心に、新たな法の鼓動が生まれた。


