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仏教

第四の脳 ― 忘れられた設計図 ―

 

第四の脳

忘れられた設計図

 

壊れているんじゃない 歪んでいるだけ
分かれたままの この意識
触れられないまま 眠る回路
思い出せ ひとつだったこと

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

正しさを振りかざして 誰かを切り裂いていた
守っているつもりで ただ怯えていただけ
愛と呼んだ執着が 静かに締めつける
この胸の奥で 何かが軋んでいる
考えてるはずなのに 逃げ場を探している
感じてるはずなのに 壁を築いている
生き延びるためだけに 世界を狭めていく
分かれたままの声が 内側で叫ぶ

 

……息が 薄れていく
境界が ほどけていく
「ここ」と「外」が 混ざり始める
怖れすら 輪郭を失う
落ちていく 落ちていく
“自分”という足場が消える
壊れていくんじゃない
戻っていく ただそれだけ

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

消えろ 境界 いまほどけていく
バラバラの“自分”が 還っていく
第四の脳が 静かに開く
すべては最初から ひとつだった

もう分けない もう掴まない
観ているだけで 満ちていく
失うものなど 何もなかった
最初から すべてここにあった
名前も 意味も 音も超えて
ただ在るだけの 静けさへ
第四の脳は 思い出している
――“私など どこにもなかった”

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

 

 

 

 

第四の脳 ― 忘れられた設計図 ―』

 

 

『第四の脳 ― 忘れられた設計図 ―』

「……世界は、なぜ壊れていくのですか」
青年は、闇に向かって問いを落とした。
遠くで、フクロウが鳴く。
その声を裂くように、背後から低い声が響いた。
「壊れているのではない」
老師は言った。
「――歪んでいるのだ」
青年は振り返る。
「歪み……?」
「そうだ」
老師はゆっくりと歩み寄る。
「人間の脳は、三つに分かれている」
指が、青年の胸に触れる。
「生き延びるための脳」
額に触れる。
「感じるための脳」
そして、額の奥を指した。
「考えるための脳」
「だが――」
老師の目が、わずかに光る。
「それらは、ひとつではない」
沈黙。
風が、わずかに戻る。
「お前は考えているつもりで、恐れている」
「愛しているつもりで、支配している」
「正しいと思いながら、壊している」
青年の呼吸が乱れる。
「……それが、人間ですか」
老師は首を振った。
「それは“分裂した人間”だ」
長い沈黙のあと、老師は静かに言った。
「かつて――人間には、もう一つあった」
空気が、変わる。
「もう一つ……?」
「そうだ」
老師は、ゆっくりと座る。
「すべてを“ひとつとして観る働き”だ」
青年の心が、ざわめく。
「それがあれば――」
老師の声は、ほとんど囁きだった。
「争いは起きない」
「奪う必要もない」
「壊す理由もない」
「……なぜ、それは失われたのですか」
老師は、しばらく答えなかった。
やがて、ぽつりと落とした。
「使わなかったからだ」
その言葉は、あまりにも静かで、あまりにも重かった。
「人間は、“考える力”を手に入れた」
「だが、“観る力”を捨てた」
青年の内側で、何かが崩れ始める。
「その結果が――この世界だ」
都市の光。
戦争。
怒り。
欲望。
すべてが、一瞬で脳裏を駆け抜ける。
「では……どうすればいいのですか」
老師は、青年をまっすぐ見た。
その目には、恐ろしいほどの静けさがあった。
「取り戻すのだ」
「何を……?」
「お前自身を」
沈黙。
「それは、外にはない」
「新しく作るものでもない」
「進化でもない」
一拍
「――思い出すものだ」
その瞬間。
青年の呼吸が、ふっと止まった。
いや、止まったのではない。
“消えた”のだ。
音が消える。
境界が消える。
「自分」が、ほどけていく。
(……これは……)
思考が追いつかない。
だが、わかる。
“分かれていたもの”が、戻り始めている。
「それが――」
老師の声が、遠くから届く。
「第四の脳だ」
青年の視界が、ゆっくりと開く。
だがそこにあったのは、世界ではなかった。
ただ――
“すべてがひとつである”という、静かな事実だった。
夜は、なおも沈黙している。
だがその沈黙の中で、
ひとつの人間が、静かに変わり始めていた。

第二章:すでに在る者たち』
夜明け前。
空はまだ、深い藍に沈んでいる。
青年は、庵の外に立っていた。
世界は――変わっていた。
いや、変わったのは「世界」ではない。
“見え方”だった。
木々がある。
風がある。
空がある。
だがそれらは、もはや「別々のもの」ではなかった。
(……つながっている)
境界が、ない。
すべてが、ひとつの流れとして在る。
そのとき。
背後から、足音がした。
「見え始めたか」
老師だった。
青年は、ゆっくりとうなずく。
「……これは、何ですか」
老師は空を見上げた。
「元に戻っただけだ」
「元……?」
「人間は、もともとこう見ていた」
その言葉に、青年の心が揺れる。
「では……なぜ、忘れたのですか」
老師は、少しだけ笑った。
「便利だからだ」
沈黙。
「分けると、扱いやすい」
「名前をつけると、支配できる」
「切り分けると、利用できる」
老師の声が、静かに落ちる。
「だがその代償に――」
「世界を、失った」
風が吹いた。
青年の胸に、何かが深く沈む。
「では……」
青年は言った。
「“戻った人間”は、他にもいるのですか」
老師は、答えなかった。
代わりに、こう言った。
「会いに行くか」
■ 都市
昼。
人の波。
騒音。
光。
青年は、立ち尽くしていた。
(……同じ世界なのに……)
以前とは、まるで違う。
人々の動きが、見える。
言葉の裏が、見える。
感情の流れが、見える。
怒り。
恐れ。
欲望。
それらが、ぶつかり合いながら流れている。
(……これが、“分裂した世界”)
そのとき。
「立ち止まると、飲まれるぞ」
声がした。
振り向くと、一人の男が立っていた。
スーツ姿。
年齢は四十代ほど。
どこにでもいそうな会社員――
だが。
(……違う)
“静かすぎる”。
周囲の騒音の中で、
その男だけが、まるで湖面のように動かない。
「あなたは……」
男は、わずかに笑った。
「気づいたか」
その一言で、すべてが確信に変わる。
「あなたも……」
男はうなずいた。
「そうだ。“戻った側”だ」
■ すでに存在していた
「……いつから」
青年は、震える声で言った。
男は、少し考えるように空を見た。
「さあな」
そして、静かに続けた。
「だが――新しく生まれたわけじゃない」
「もともと居た」
青年の思考が止まる。
「……まさか」
男は言った。
「歴史の中に、何度も現れている」
「ただし――」
「気づかれなかっただけだ」
「それは……誰なんですか」
男は、青年をまっすぐ見た。
「お前は、すでに知っている」
その瞬間。
閃光のように、いくつものイメージが走る。
言葉を超えた理解。
圧倒的な静けさ。
人を変えてしまう存在。
(……あれは……)
男は、静かに言った。
「彼らは、“教えた”のではない」
「思い出させたのだ」
風が吹く。
人々は、相変わらず行き交っている。
だがその中に――
ほんのわずかに、
“違う流れ”がある。
「あの人も……」
青年はつぶやいた。
遠くのベンチに座る老人。
子供に微笑む女性。
駅の片隅で目を閉じる男。
(……いる)
男は言った。
「数は少ない」
「だが、ゼロではない」
「そして――」
一拍。
「これから、増える」
■ 選別
「人類は、分かれる」
男の声が、わずかに重くなる。
「種としてではない」
「血でも、国でもない」
「状態として、だ」
青年は息を呑む。
「戻る者」
「戻らない者」
「それだけだ」
沈黙。
「……私は」
青年は言った。
「どちらになりますか」
男は、少しだけ笑った。
「もう、始まっているだろう」
その言葉の意味を、青年は理解していた。
呼吸。
静けさ。
境界の消失。
(……戻り始めている)
男は背を向けた。
「来い」
「どこへ」
「“彼ら”のところへだ」
人混みの中へ、男は歩き出す。
その背中は、どこまでも普通で――
どこまでも異質だった。
青年は、一歩踏み出す。
世界は、同じまま。
だが――
その奥で、何かが動き始めていた。

 

第三章:見えない網』
都市は、何も変わっていなかった。
車が走り、
人が歩き、
光が点滅する。
だが――
“流れ”が変わっていた。
青年は、駅前の交差点に立っていた。
人の波が押し寄せる。
音が渦を巻く。
だがその奥に、もう一つの層がある。
(……これは……)
見えない“線”がある。
人と人のあいだに、
意識と意識のあいだに――
細く、静かな繋がり。
「感じるか」
隣で、あの男が言った。
青年は、ゆっくりとうなずく。
「……つながっている」
男は笑った。
「それが“網”だ」
■ 覚醒者のネットワーク
「彼らは、連絡を取らない」
男は歩き出す。
「会議もない。組織もない」
「だが――」
「すべて、同期している」
その瞬間。
遠くで、ひとりの女性が立ち止まった。
カフェの店員。
ごく普通の若者。
だが――
(……今、同じ“何か”を見た)
青年の中に、確信が走る。
「……今のは」
男は言う。
「“波”だ」
「ひとりが静まると、周囲も静まる」
「ひとりが観ると、観る者が増える」
「感染するのですか」
「いや」
男は首を振る。
「思い出すだけだ」
■ 衝突の兆し
そのとき――
「邪魔だ!!」
怒号が響いた。
振り向くと、男が誰かを突き飛ばしている。
顔は赤く、目は血走っている。
周囲の空気が、一瞬で濁る。
怒りが、広がる。
不安が、伝播する。
(……来る)
青年は感じた。
これはただの喧嘩ではない。
“分裂の力”が、増幅している。
「見ていろ」
男が静かに言った。
次の瞬間。
先ほどのカフェの女性が、ゆっくりと近づく。
何も言わない。
何もしない。
ただ――
“立つ”。
すると。
空気が、変わる。
ざわめきが、わずかに沈む。
怒りの男の動きが、ほんの一瞬だけ鈍る。
(……抑えた?)
「違う」
男が言った。
「消したわけじゃない」
「“戻した”だけだ」
怒りは消えない。
だが――暴走しない。
やがて男は舌打ちをして、その場を去った。
青年の心臓が、大きく脈打つ。
「……今のが」
「そうだ」
「衝突だ」
■ 二つの流れ
「これから、増える」
男の声は冷静だった。
「分裂は、加速する」
「同時に、統合も広がる」
「なぜですか」
「極に向かうからだ」
都市の光が、強くなる。
「どちらにも行かない者は、いない」
■ 都市の変容
夕方。
空の色が、ゆっくりと変わる。
青年は、高台から街を見下ろしていた。
(……違う)
明らかに、違う。
以前は、ただの建物だった。
ただの人の集まりだった。
だが今は――
“ひとつの巨大な意識”のように見える。
光が流れ、
感情が波となり、
思考が形を作る。
「都市は、場になる」
男が言った。
「意識の場だ」
「場……」
「強い方に引かれる」
青年は、息をのむ。
「では……」
「そうだ」
男は、静かに言った。
「どちらの世界を現実にするかは――」
一拍。
「人間の“状態”で決まる」
風が吹いた。
都市が、呼吸している。
(……これは、もう始まっている)
青年は、目を閉じた。
呼吸は、静かだった。
いや――
“ほとんど、ない”。
その瞬間。
都市の奥に、光のような点がいくつも見えた。
(……いる)
覚醒者たち。
彼らは、語らない。
争わない。
主張しない。
だが確実に――
“世界を書き換え始めている”。

 

第四章:場へ』
夜。
都市は、光に満ちていた。
だがその光は――どこか不安定だった。
(……来る)
青年は、すでに知っていた。
理由はない。
だが確信がある。
“波”が、膨れ上がっている。
遠くで、サイレンが鳴った。
一つではない。
いくつも、同時に。
人の流れが、乱れる。
ざわめきが、ざわめきを呼ぶ。
スマートフォンの光が、一斉に灯る。
「危険」「暴動」「逃げろ」
断片的な情報が、感情を増幅する。
恐れが、恐れを呼ぶ。
(……これが、“分裂の増幅”)
そのとき。
「立て」
あの男の声だった。
「逃げるな」
青年は振り向く。
「これは――“試験”だ」
■ 分裂の波
交差点の中央。
人が押し合い、叫び、走る。
怒号。
悲鳴。
衝突。
まるで、都市全体が“恐怖”という一つの生き物になったようだった。
(……飲まれる)
一瞬、青年の意識が揺れる。
心拍が上がる。
呼吸が荒れる。
“戻りかけた自分”が、崩れ始める。
そのとき。
“静寂”が入った。
音ではない。
言葉でもない。
だが確かに――
「……」
何かが、触れた。
■ 言葉なき会話
視界の端。
あのカフェの女性。
遠くの老人。
駅の柱にもたれる男。
(……つながっている)
言葉はない。
だが、伝わる。
“観ろ”
それだけだった。
瞬間。
青年の呼吸が、落ちる。
恐怖は消えない。
だが――飲まれない。
(……これは、会話だ)
言葉ではない。
思考でもない。
“状態”の共有。
ひとりが静まる。
すると、別の誰かが静まる。
それが連鎖する。
(……網が、動いている)
■ 抗うのではない
「いいか」
男の声が、横で響く。
「止めるな」
「え……?」
「戦うな」
青年の思考が止まる。
「じゃあ、どうするんですか」
男は言った。
「“在れ”」
■ 崩壊点
その瞬間。
大きな衝突音。
誰かが転び、
誰かが叫び、
誰かが殴る。
“臨界”だった。
都市の感情が、限界を超える。
(……もう無理だ)
そのとき。
完全に、止まった。
呼吸が。
思考が。
“自分”が。
■ 場になる
何も、しなかった。
何も、できなかった。
ただ――
“在った”
その瞬間。
世界の見え方が、変わる。
人ではない。
出来事でもない。
“流れ”だけがある。
怒りも、恐怖も、悲しみも、
すべてが――
同じ場所から、立ち上がっている。
(……これが)
理解ではない。
“直視”。
すると。
波が、変わる。
止まらない。
消えない。
だが――
“荒れなくなる”
近くの男の動きが鈍る。
叫びが、小さくなる。
足が、止まる。
まるで。
“現実の粘度”が変わったように。
■ 伝播
遠くで。
また一人、静まる。
また一人。
また一人。
(……広がっている)
青年は、理解する。
これは“力”ではない。
“状態”だ。
■ 世界の生成
男の声が、遠くから響く。
「それが――」
「場だ」
都市は、まだ動いている。
だが。
もう、さっきの都市ではない。
何かが、確実に変わった。
(……世界は、固定されていない)
その事実が、深く沈む。
「人間の状態が――」
青年は、つぶやく。
「世界を決める」
男は、静かにうなずいた。
「ようやく、入口だ」
夜が、明け始める。
光が、都市を包む。
それは、昨日と同じ朝。
だが。
確実に違う世界だった。

最終章:それでも、世界は現れる』
朝。
都市は、何事もなかったかのように動いていた。
人々は歩く。
車は流れる。
情報は飛び交う。
だが――
青年は、もう“そこ”にはいなかった。
身体はある。
声も出せる。
だが。
(……中心が、ない)
“自分”という感覚が、どこにもない。
代わりに――
すべてが、そのまま在る。
■ 個の消失
名前も、過去も、役割も。
それらは“使える情報”として残っている。
だが。
“それが自分だ”という感覚は、ない。
通りを歩く。
人とすれ違う。
怒りがある。
喜びがある。
焦りがある。
だがそれは――
“他人のもの”ではない。
(……すべて、同じ場所から起きている)
区別はできる。
だが、分離はない。
■ 場としての存在
カフェに入る。
店員が笑う。
その笑顔が、生まれる瞬間が見える。
言葉になる前の、微細な動き。
感情が立ち上がり、形になり、現れる。
(……ここで起きている)
すべてが、“この場”で起きている。
時間も。
空間も。
人も。
「あなた……」
店員が、ふと立ち止まる。
一瞬だけ、目が合う。
何かを感じた顔。
だが、すぐに日常へ戻る。
それでいい。
■ 巨大システム
そのとき。
都市の上空を、無数の情報が走る。
ニュース。
SNS。
監視システム。
見えない巨大な構造が、都市を覆っている。
国家。
経済。
AI。
それらは、膨大な「思考の集合体」だった。
(……これも、“場”の一部)
かつてなら、対抗しようとしただろう。
変えようとしただろう。
だが今は違う。
敵ではない。
“同じ現象”。
■ 対立の終わり
そのとき。
一つのニュースが流れる。
「大規模な暴動が再発――」
映像には、怒り狂う人々。
だが。
それを見ている“この場”には、波は立たない。
すると――
画面の向こうの動きが、わずかに変わる。
ほんのわずかに。
(……影響している)
操作ではない。
干渉でもない。
“状態が、伝わっている”。
■ 世界の正体
そのとき、理解が完全に落ちた。
世界は――
“固定されたものではない”
人が見ているから、あるのではない。
人の“状態”によって、
“立ち上がっている”
怒りの状態なら、怒りの世界が現れる。
恐れの状態なら、恐れの世界が現れる。
そして――
何も歪みがなければ、
ただ、そのままの世界が現れる。
■ それでも、世界は現れる
では。
すべてが消えるのか?
違う。
世界は、消えない。
それでも――
現れ続ける。
ただし。
“歪まずに”。
風が吹く。
光が差す。
人が笑う。
それらは、ただ起きている。
意味もなく。
目的もなく。
だが――
完全だった。
■ 最後の問い
あの男が、隣に立っていた。
「どうだ」
青年は――もう青年ではない“それ”は、答えた。
「何も問題はなかった」
男は、わずかに笑う。
「最初から、な」
沈黙。
やがて男は言った。
「では――どうする」
しばらく、何も起きなかった。
そして。
ただ一つの応答が、起きた。
“生きる”
誰が、ではない。
何のために、でもない。
ただ。
この“場”として、
現れ続ける。
■ 終わりではない
都市は動く。
人は生きる。
世界は続く。
だが。
もう、元の世界ではない。
なぜなら――
それは今も、
“ここで生成されている”のだから。
― 完

 

 

 

求聞持の門 ― 変身のカリキュラム ―

 

求聞持の門
― 変身のカリキュラム ―

 

息はどこへ 消えていく
音もなく ほどけていく
見ているのは 誰なのか
境界が 崩れていく

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

荒れる風が 胸を叩く
散る意識が 形を失う
途切れ流れる 歪なリズム
縛られたままの 見えない鎖
整えようと するその手が
静寂さえも 濁していく
無音の奥で 潜む影は
“努力”という名の 最後の壁

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

 

沈みすぎて 闇に溶ける
浮かびすぎて 世界が裂ける
急ぐほどに 閉ざされていく
緩むほどに 崩れていく
上げて 落として ただ均せ
止めず 追わず ただ在れ
揺らぎの中に 灯る一点
そこにだけ 道はある

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

 

吐き尽くせ その“自分”を
吸い込め 空の奥へ
壊れていく 心の形
これが 変身の門だ

逆転する 命の流れ
内なる太陽 目を覚ます
怒りも 恐れも 消えていく
ただ在るだけの この静寂
息はもう 息ではない
“私”すら 通り過ぎる
世界ごと 書き換えていく
これが 覚醒の呼吸だ

求聞持の門 ― 変身のカリキュラム ―

求聞持の門変身のカリキュラム

夜は、息をひそめていた。
山の庵。
風は止み、木々も沈黙している。
だが――
静まっていないものが、ひとつだけあった。
青年の内側だった。
「……呼吸を見よ」
背後から、老師の声が落ちる。
青年は、目を閉じたまま、自らの息を探る。
(……荒い)
鼻の奥で、わずかに音がする。

出入りする空気が、どこか引っかかっている。
「それは、“風”だ」
即座に、声が刺さる。
「気は散り、心は定まらぬ」
青年の胸が、わずかに揺れた。
やがて――音は消えた。
だが、今度は別の違和感が現れる。
(……滑らかじゃない)
流れてはいる。
だが、どこかで詰まり、ほどけ、また詰まる。
「それは、“喘”だ」
老師の声は、淡々としている。
「心は、縛られている」
さらに時が過ぎる。
呼吸は静まり、音もなく、詰まりもない。
(……これでいいのか?)
だが――どこか不自然だ。
“整えようとしている自分”がいる。
「それは、“気”だ」
老師は言った。
「努力の影があるうちは、まだ遠い」
沈黙。
やがて――

何かが、消えた。
呼吸があるのか、ないのか。
わからない。
ただ、身体がやわらかく沈み、
世界との境界が、ほどけていく。
「……それが、“息”だ」
声が、遠くなる。
「そこから、定が始まる」

青年は、はじめて理解した。
呼吸とは、空気ではない。
それは――心そのものだった。
「では、調えよ」
老師の声が、再び近づく。
「まず、意識を落とせ」

青年は、頭にあった感覚を、腹へと沈める。
すると――
思考が、静まる。
「力を抜け」
肩の緊張がほどける。
胸の硬さが消える。
呼吸が、すっと通る。
「全身で呼吸せよ」
青年は、想う。
毛穴から、空気が出入りする。
すると――
呼吸が、消え始めた。
「……見えてきたか」
老師が問う。
青年は答えない。
すでに、“答える者”が薄れていた。
だが、そのとき――
沈みすぎた。
意識が暗くなる。
頭が垂れ、思考がぼやける。
「沈だ」
老師が言う。
「鼻先に意識を上げよ」
青年は、わずかに意識を引き上げる。
光が戻る。
しばらくして――
今度は、逆だった。
思考が走る。
意識が散る。
「浮だ」
「腹に落とせ」
意識をへそへ沈めると、
波が止まる。
「急ぐな」
次に来たのは焦りだった。
(何かが起きるはずだ――)
その瞬間、胸が詰まる。
「それが“急”だ」
老師の声は鋭い。
「すべてを手放せ」
青年は、力を抜いた。
すると、流れは下へ戻る。
やがて――
だらけが来た。
身体が崩れ、意識が緩む。
「それは“寛”だ」
「姿勢を正せ」
背筋を立てると、
意識が再び一点に集まる。
「……よい」
老師は静かに言った。
「呼吸と心は、一つだ」
次の段階が、始まった。
「吐け」
その一言だった。
青年は、息を吐く。
吐く。吐く。吐き尽くす。
身体の奥から、何かが抜けていく。
「すべてを捨てよ」
やがて吸う。
細く、長く。
空気が、一本の管を通って腹へ降りていく。
赤い流れが、へその奥に届く。

そこに――
光の袋があった。
「感じるか」
老師の声。
青年は、うなずかない。
だが、確かに感じていた。
膨らむ。
収縮する。
命の核が、そこにあった。
「締めよ」
肛門を引き締め、腹に力を入れる。
その瞬間――
圧が上がる。
「少し漏らせ」
鼻から、わずかに息を逃がす。
すると、圧は安定する。
「吐け」
青年は、吐く。
細く、長く。

そのとき――
声が出た。
「……おーむ」
振動が、腹から全身に広がる。
吐くたびに、声が続く。
「しんたまに……」
「うーむ……」
やがて――
呼吸は極端に遅くなる。
一分に、数回。
さらに――一回。
時間が、消えた。
そのとき。
老師が、最後の言葉を落とした。
「反転せよ」
吸うとき、腹がへこむ。
吐くとき、腹がふくらむ。
自然とは逆。
だが――
内側で、何かが目覚める。
横隔膜が、大きく動く。
内臓が揺れる。
奥の奥――

太陽のような中心が、刺激される。
心が、変わる。
怒りが、起きない。
恐れが、広がらない。
ただ、静かだ。

「それが、変身だ」
老師の声が、闇に溶けた。
青年は、もう問わなかった。
呼吸は、消えかけている。
だが――
確かに、生きていた。
そして彼は、知る。
これは呼吸法ではない。
人間そのものを書き換える道であることを。

求聞持說明法秘

チャクラ覚醒の最極秘伝

ろう。 さて、以上、ムーラーダーラ、マニプーラ、アナーハタの三つのチャクラの開発修行を解説した。これでこの三つのチャクラの開発は、完全に出来るであ

つぎの実修奥儀篇で、ヴィシュッダ、アージュニャー、サハスラーラ等の、 すべての部位の覚醒法を解説する。

いっぺんに全部の実修書を出すことはできない。というのは、ヴィシュッダ・チャクラ以上の実修は、非常な危険をともなうことが多いのである。膻中、 身柱から上にかかる修行過程は、非常に慎重にやらないと、脳を痛めるおそれがある。基礎訓練を十分にやって、きたえておかねばならない。

もしも奥儀篇をいっしょに出してしまったら、性急な修行者は、基礎の修行

もそこそこに、話の開発前後に入ってしまうだろう。もちろん、法の成就に出楽っこないが、しかし、訓練のシステムは、たとえ修行者が未熟であっても、 それなりの力を発揮するから、やりそこなって脳を痛めるおそれが多分にあるのである。

また、それだけではない。それ以上の重要な理由がある。

それは、アージュニャー・チャクラから上の開発訓練は、意念を動かす媒体と方法が、これまでとまったく違うということである。それは全然ちがう特殊な方法である。それは、本書の基礎訓練をきちんとマスターした修行者でなければ、全く、といっていいほど実践不可能であろう。したがって、とにかくまずこの基礎実修を、わき目もふらず修行してほしいのだ。わたくしは、いま、

この基礎実修をきちんと終えた修行者にのみ、奥儀篇を願けてあげることにし

ようかと思っているほどなのである。

美儀通は、おそらく、一年半か、二年くらいのちに出すことになると思われる。それは、ちょうど、あなたがこの本を読んで一心に基礎訓練にはげんだと

して、それで大体マスターし、わたくしが、これならこの先を教えてもよいだろうと思うのが、ちょうどその頃になるのである。

あ、そういうと、好奇心のつよい熱心な修行者は、おそらくこう言うのではなかろうか?

いまぎ者は、アージョニャー・チャクラから上の開発に意念を動かす体と方法がまったく違う。それは全然ちがう特な方法だ、といったが、それはいったいどう違うのか?ほんの一部、ちょっぴりでもいいから教えてほしい。そういうかも知れない。

よろしい、それでは、その特秘法を、両。ヒントとして明かしてあげよう。いや、これはヒント以上のものである。ほんとうのことをいうと、わたくしは、ここで、そこまでこれを明かしたくはないのである。これこそ、門外不出、一初伝の最巻そ伝なのだから。

しかし、ここで少しでも明かしておいてあげることにより、真剣な旅行者の飲みになるかも知れない。そう考えて、あえて公開することにする。

そこで、思いきって、チャクラの覚醒法の概要をのべよう。

さきにわたくしは、チャクラ・エネルギーのルートづくりが、チャクラ覚醒の一助になるものであるとのべた。それはじっさいにその通りで、それなくてはチャクラの覚醒は不可能に近いといってよいであろう。殊に、アージュニャ

―・チャクラへのルートづくりは、非常に重要な役わりをはたす。

ある。 しかし、それだけでは、チャクラの覚醒は成就しない。まったく別な方法で

その課程は大略、つぎのようなものである。

秘密マントラの特殊詠唱法

1、まず修行者は、自分のチャクラの正確な場所を把握する。

(チャクラの場所は個人差があるので、導師が、正確な場所を教示する)

2、このチャクラの場所に、或る特殊な振動を叩きつける。そのために、ま

3、この特殊な振動を伝える振動ルートをつくり出す。これまでにつくったチャクラ・エネルギーのルートと重複するルートも一部あるが、大部分は新しくつくり出す。それは直接チャクラにつながるルートである。このルートづくりに「××」を使う。(特に秘す。但し、本書をよく読めば、ヒ

ントを得られるはずである)

4、その特殊振動を発生させる。

5、その振動をルートに伝え、チャクラに叩きつける。

以上のようなものである。

のだ。 この振動が、チャクラを覚醒させる特殊秘法であり、わたくしの最極秘伝な

この特殊根動というのは、横隔膜、胸腔、腹腔を使って、特殊な振動を起こすのである。

チャクラ覚醒の最極秘伝

この振動は、最初、声帯を使う。発声して振動を起こす。(特殊な秘密マントラを使う。秘伝である)

正しい振動を起こせるようになったら、発声しないで、おなじ振動を起こす

訓練に入る。そこで、無音になるのであるが、振動は起こしているのである。 というのは、声帯を、体の内部に向けて発声しているのである。体の内部に向けて振動を送っているのである。(じっさいは、ここまでくると、声帯だけではないのだが、ここでは声帯としておく)

発声しているときは声帯を使って外部に向って振動を起こしている。このときその発声を導師が聞いて、正しいかどうか調べているわけで、正しい発声法 (つまり振動法)がなされていたら、これを指導して、内部に向ってその振動を送りこむようにさせる。(その方法を指導する)

送りこまれた振動を、胸腔の筋肉で共鳴させ、増幅させる。

さらにこれを、横隔膜を使って腹腔の中で増幅させる。(この場合、胞嚢が重大な役目を果たすことを付記しておく)

求間持能用注秘伝

さいごに、これまでにつくっておいた振動のルー

ラに送りこむ、というよりも、叩きつけるのである。

以上はアナーハタ・チャクラまでの、チャクラ覚醒法である。

アージュニャー・チャクラ、そして究極のチャクラであるサハスラーラ・チ

ャクラになると、少し違ってくる。しかし、アナーハタ・チャクラまで覚醒し

ておれば、あとはそうむずかしいことはない。

以上、このへんで筆をおくことにする。諸君の研鑽を祈る。

古代インドの賢人伝説

古代インドに伝説がある。伝説というより、予言といったほうがよいだろう。

現在のこの地球が、一大危機に見舞われて、まさに壊滅に瀕するとき、千人の賢人があらわれてこれを救う。というのである。