世界の疾患の根源は、ただ一つ――無知故の愚かさ。

「求聞持聡明法」とは、人類の知性を三倍にも増やすという謳い文句が掲げられる。だが、その半分でさえも足りるという。もし、人々の知性が現在の水準よりも1.5倍も飛躍的に向上すれば、この地上から犯罪や戦争といった悲劇は一掃されるだろう。その理由は、人類が愚かであるが故にある。求聞持法により知性指数が倍増すれば、愚かでばかげた行為が如何に無益であるか、大人が子供のけんかを見るような心地となるだろう。

たとえ私や周囲のごく一部が、この法によってどれだけ賢明になろうとも、その価値は如何にあるだろうか。それが世界にどれほどの影響を及ぼすだろうか。私がこの法によって、偉大なる聖者と称されるほどの力を手にしようとも、どこかの愚か者が核ボタンを押せば、それで全てが終わる。世界は砕け散り、偉大なる聖者もまたその中に。

もちろん、偉大なる聖者であれば事前にそれを察知し、安全な場所に避難するだろう。だが、世界が壊滅し、生き残った者たちも核の灰に覆われ、半死半生の状態で生き延びる。自分とごくわずかな一族だけが生き残ったとして、その先に何が待ち受けているだろうか。ノアの方舟の時とは状況がまったく異なる。

このままでは、世界は必ず崩壊する。人類の大愚行を阻止するには、求聞持聡明法を世界中に広めねばならない。