スマホ動画も「ボケ」の時代へ
9月24日より発売されたiPhone13シリーズでサポートされたのが、「シネマティックモード」だ。すでにレビューも多く出ているが、iPhoneではこれまで写真だけだった被写界深度表現を、動画に持ち込んだもの、と考えれば間違いないだろう。
撮影時に自動でフォーカス追従したり、撮影後にもフォーカスポイントが変えられるなど多くの特徴があり、動画コンテンツに新風を吹き込むには十分な機能ではあるが、実際にそれらのクリップを使って何らかのコンテンツを作るとなると、iPhone上のiMovieで作るには限界がある。
プロ用ツールのサポートが待たれていたところだが、10月19日のApple MacBook Proの発表に合わせて、Apple純正の編集ツールであるFinal Cut Proがアップデートされ、シネマティックモードのクリップ編集に対応した。
また新MacBook ProのXDRディスプレイがHDR表示にも対応したことで、HDRで撮影したクリップの編集も、実際の輝度・色空間で確認できるようになっている。今回はAppleよりM1 Pro搭載の16インチMacBook Proもお借りす。
シネマティックモード」ホントのところ
iPhone 13から搭載されたシネマティックモードは、センサーサイズの問題から被写界深度が深くなりがちなスマートフォンの動画撮影において、フルサイズセンサーで撮影したかのような深度の浅さ、つまり背景や前景のボケを付加するというのが主な狙いである。このとき、被写体がカメラAIによってどう認識されるかが大きな問題となる。つまりターゲットとなる被写体へ合焦したのち、その物体の輪郭を抽出してそれ以外をボカすという処理になるからだ。
この深度表現としては、先に静止画で搭載された「ポートレートモード」がある。当初は人の顔しか認識できなかったが、やがてそれ以外のものが認識できるようになったという経緯がある。シネマティックモードの場合、ポートレートモードで先行して認識できていたものが数多くあるので、それが最初から使えるのがメリットだ。