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Mac

徳の炎 ― 斯陀含

徳の炎 ― 斯陀含

 

山の朝に 闇は残り
光の中へ 溶けていく
消えぬままに 変わる影
我はただ 見つめている

 

流れに触れ 戻らぬと知り
それでもなお 波は揺れる
掴む手は ほどけはじめ
我という影 薄れていく

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

 

断ち切るのでは 終わらない
残る火種が 道を照らす
消えぬままに 弱くなる
それが次の 門となる

 

変えようとする その力を
そっと手放し ただ在ればいい
奪わず 裁かず 押さえずに
すべては静かに 還っていく

 

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

燃えぬ炎が 胸に灯る
奪わぬままに すべて鎮める
怒りは今 光へ変わり
還る道さえ やさしくなる

 

もう一度だけ この世に還る
未練ではなく ぬくもりとして
終わりを急ぐ 心を越えて
歩むそのまま 道は満ちる

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

 

消えぬ灯火 静かに抱き
世界の中で ほどけていく
離れぬままに 執らわれぬ
それが徳という 炎のかたち

 

徳の炎 ― 斯陀含

徳の炎 ― 斯陀含

山の朝に 闇は残り
光の中へ 溶けていく
消えぬままに 変わる影
我はただ 見つめている

 

流れに触れ 戻らぬと知り
それでもなお 波は揺れる
掴む手は ほどけはじめ
我という影 薄れていく
断ち切るのでは 終わらない
残る火種が 道を照らす
消えぬままに 弱くなる
それが次の 門となる

 

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

変えようとする その力を
そっと手放し ただ在ればいい
奪わず 裁かず 押さえずに
すべては静かに 還っていく

 

燃えぬ炎が 胸に灯る
奪わぬままに すべて鎮める
怒りは今 光へ変わり
還る道さえ やさしくなる

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

もう一度だけ この世に還る
未練ではなく ぬくもりとして
終わりを急ぐ 心を越えて
歩むそのまま 道は満ちる
消えぬ灯火 静かに抱き
世界の中で ほどけていく
離れぬままに 執らわれぬ
それが徳という 炎のかたち

聖者への四つの階梯 ― 青き光のはじまり ―

聖者への四つの階梯
― 青き光のはじまり ―

音のない山 凍る夜
息すら消える 境界で
“我”という影 ほどけていく
ただ在るものが 浮かび出す

 

浮かんでは消える 記憶の波
未来も過去も 影に過ぎず
掴もうとする その手を止め
ただ見つめるだけ 流していく
思考が騒ぐ 何度でも
意味を求めて 形を作る
そのすべてを 切り離し
“反応”さえも 手放していく

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

……そして 落ちる
何もない 深みへと
言葉も 感情も
ほどけて 消えていく
“ない”という 静寂が
すべてを 包み込み
残るものは ただひとつ
名もなき “在る”だけ

 

青き光が いま灯る
思考も感情も 越えてゆく
流れに逆らう その一歩
須陀洹の門が ひらかれる

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

見えない鎖 断ち切って
他者の記憶を ほどいてく
繰り返す因 その底から
自由の気配が 立ち上がる

胸の奥 さらに深く
閉ざされていた その場所に
微かな光が 息づいて
静かに世界を 照らし出す
それは炎では ないけれど
すべてを浄める 純度の光
触れたものから 崩れていく
因の影さえ 溶かしながら

何も持たずに ただ在れば
世界は最初から 満ちている
意味も評価も 消えたあと
真の現実が 現れる

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

青き光よ 導け
終わりなき流れ 越える者へ
戻らぬ道を 静かに行く
聖者の歩みが ここに始まる
アウトロ

風が戻る 山が息づく
だがもう 流されはしない
逆らう者として ただ立つ
静かな光を 宿しながら

無余の光 ― 阿羅漢

無余の光 ― 阿羅漢

 

音のない 夜の奥で
呼吸さえ 誰のものでもなく
消えていく “在る”の影
ただ静かに ほどけていく

流れに触れ 戻らぬと知り
濁りの川を 渡りはじめる
燃えるものを ひとつずつ見て
炎の奥で 静けさを得る
欲の彼岸を 越えてゆくたび
形あるもの 遠ざかっていく
残るものは 微かな影
気づかぬほどの “ここにいる”

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

それは声も 持たぬ確信
触れれば消える 最後の核
誰が在ると 言っているのか
問いは深く 底へ沈む
ほどけていく 境界さえも
観るものさえ 見失って
残らぬまま 崩れもせず
すべて最初から 無かったように

Namosattanan
sanmyaksanmodaktinan
taniyata
on shaley shurei juntei
sowaka

何もない それがすべて
生も死も ここにはない
光だけ 残りもせず
ただ在らず 満ちている

 

終わりさえ 起こらぬまま
成すべきは すでに尽きて
受け取る者 どこにもなく
言葉さえ 空に溶ける
何も持たず 何も起こさず
それでもなお 消えもしない
名も形も 越えたところで

第四章「無余の光 ― 阿羅漢」

第四章「無余の光 ― 阿羅漢」
夜は、ついに音を失っていた。
風もなく、虫の声もなく、木々のざわめきさえ消えている。
それは静寂というより――
すべてが、すでに終わった後の世界のようだった。
青年は、坐していた。
呼吸はある。
しかし、それは「自分がしているもの」ではなかった。
ただ、起こり、消えている。
「……ここまで来たか」
老師の声が、遠くからではなく、
まるで内側から響いた。
青年は、もう振り向かなかった。
振り向く者が、いないからだ。
これまで、彼は断ってきた。
欲を断ち、怒りを断ち、
無明の闇を、一つひとつ見破ってきた。
須陀洹において、流れに入った。
斯陀含において、炎を浄めた。
阿那含において、欲界を越えた。
そして今――
最後に残っていたもの。
それは、あまりにも微細で、
あまりにも巧妙だった。
「……“在る”という感覚……」
青年の内に、かすかな影が浮かぶ。
それは欲でも、怒りでもない。
ましてや迷いとも違う。
ただひとつ――
「私がここにいる」という、極めて静かな確信。
その瞬間。
老師の声が、鋭く落ちた。
「それすらも、捨てよ」
言葉は短く、しかし揺るがなかった。
青年は、その感覚を見つめた。
否定しない。
排除しない。
ただ、そのまま観る。
「これは……誰のものだ?」
問いは、深く沈んでいく。
「誰が、在るのか?」
さらに深く。
「“在る”とは、何か?」
やがて。
その感覚は、ほどけはじめた。
氷が、水に還るように。
水が、空に消えるように。
「……あ……」
そこには、崩壊も、苦しみもなかった。
ただ――
支えていたものが、もともと無かったことに気づく静けさ。
そのとき。
すべてが、止んだ。
呼吸も。
思考も。
時間も。
「……」
だが、それは“死”ではなかった。
むしろ逆だった。
何も持たないことによって、すべてが失われない状態。
生もなく、死もない。
得るものも、失うものもない。
ただ――
完全なる解放。
しばらくして。
いや、時間という概念が戻ったのかどうかさえ分からないまま、
青年のまぶたが、静かに開いた。
世界は、そこにあった。
木々も、空も、土の匂いも、
すべて変わらずに存在している。
しかし――
それを「見る者」は、もはや存在しなかった。
老師が、そっと近づいた。
青年――いや、もはやその名すら意味を持たぬ存在の前に立つ。
「……終わったな」
その言葉には、達成も、賞賛もなかった。
ただ、事実だけがあった。
やがて、静かに続ける。
「無余涅槃ではない。まだ身はある」
「だが――」
一瞬、間を置く。
「煩悩は、完全に尽きた」
その存在は、ただ座っていた。
何も求めず、何も拒まず、
何も残さず、何も起こさない。
それでもなお、
その場には、確かに“光”があった。
まばゆいものではない。
温かいものでもない。
一切の条件を超えた、揺るがぬ透明な光。
やがて、朝が来る。
鳥が鳴き、風が戻り、
世界は再び動き出す。
しかし――
その存在にとって、
世界が動こうと、止まろうと、
もはや何の差もなかった。
老師は、最後にこう言った。
「これが、阿羅漢だ」
「成すべきことは、すべて成された」
その言葉は、空に溶けた。
受け取る者が、いないからだ。
それでも。
その沈黙こそが――
真の完成であった。
(了)