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Mac

Forever Love feat. respect青山テルマ

Forever Love feat.

respect青山テルマ

 

忘れはしないよ 二人の愛は
いつまでもここにあるよ
たそがれの空へ向け
今はgood bye

突然と現れるものなのか
一つ一つの言葉で 気付き始めるのか
どうしても忘れられない想い出と
消えず形残るものが 切なく響く

このハート潤してくれた all your love
恋しくないとは言えなくて

Wherever you are 何処にいても
No matter how far 遠くにいても
変わらない思いで 眠り I’ll dream of you
Whatever you do 何をしても
No matter how hard 辛い事も
忘れてしまうほど 愛は消えずに Forever love

僕たちの砂時計が止まるころ
砂一粒の輝きが 想い出放つ

ここから新しく描く Lonely road
君の道へと繋がるだろう

Wherever you are 何処からでも
No matter how far 遠くからでも
見守る気持ちで 君を慕うよ
Whatever you do 何をしても
No matter how hard 辛い時も
乗り越える力を 与えてくれる Forever love

阿含宗における「1日の修行スケジュールモデル」

✅ 阿含宗における「1日の修行スケジュールモデル」

これは、信者の中でも真摯に修行に取り組む方を想定した一例です。無理のない範囲で取り入れてください。

🌅 早朝(5:30~7:00)

【1】起床・沐浴・身支度(清浄)

仏前に立つ前に身を清める(洗顔・沐浴など)

心身の穢れを祓い、「法を受ける準備」を整える

【2】朝の礼拝供養(約30〜45分)

仏壇や舎利奉安壇に向かい、以下を実践

三帰依文(仏・法・僧に帰依)

開祖・靖雄大覚尊への感謝と祈念

准胝尊観音真言の念誦(108回以上)

ご先祖への供養の一念

※本尊が准胝観音像であれば、蝋燭・線香・供花などを用意すると理想的

☀️ 午前中(仕事・学業の前後)

【3】心解脱行(生活の中の修行)

日常生活の中で「五戒」や「八正道」に基づいた行動を意識

「今ここ」を見つめる気づきの修行(例:正念)

他者への思いやり、奉仕の姿勢を日常に活かす

🌇 夕方~夜(18:00~21:00)

【4】夕べの修行(30分~1時間)

一日の行動を静かに振り返る(反省・懺悔・感謝)

再び准胝尊観音真言を念誦(例:54回~108回以上)

時間が許せば300回、500回、1000回と増やすことも可能

念誦カウンター(数取器)などを用いると便利

過去世・先祖・因縁の浄化と、解脱・悟りへの誓願を込めて唱える

🌙 就寝前(22:00頃)

【5】静坐瞑想・感謝の念

短時間でも座して心を整える(3分〜15分程度)

一日を仏に感謝し、深い安心のなかで就寝

✅ 自宅でできる「准胝尊観音真言」の唱え方(実践編)

🔸1. 環境の整え方

仏壇または小さな祭壇(なければ机でも可)に、

清水・供花・線香・灯明(ろうそく)を準備

准胝仏母像、観音像、または桐山靖雄師の写真があれば拝顔

🔸2. 真言の正しい読み方

のうば さったなん さんみゃく さんぼだくちなん たにゃた おん しゃれい しゅれい じゅんてい そわか

※「のうば(南無)」「さったなん(三世の菩薩たち)」などを一語一語大切に唱えます。

🔸3. 念誦の方法

方法詳細声に出して唱える音声が届くことで場が清まるとされる(唱える場が祈りの道場になる)念珠(数珠)を使う1珠=1回として、108珠で1セット。集中力の補助になる心で唱える夜遅い時間や移動中でも行える。心静かに集中できる人向け

🔸4. 念誦数と時間の目安(初心者~上級者)

レベル目安の回数時間(目安)初心者108回約10~15分中級者300回約30分前後上級者500~1000回以上1時間〜

※最重要は「回数よりも、心を込めること」と桐山師は強調されています。

✅ 実践の心構え

准胝真言の念誦は“現世利益”と“解脱”の両輪。

桐山師は「念誦は専修念仏の如く」と説き、心が散っていても続けることが大切だと指導されました。

続ける中で、徐々に心が静まり、願いと祈りが深まります。

✨おわりに

阿含宗における修行は、日々の生活と深く結びついています。「朝の清らかな祈り」「日中の正しい行動」「夜の静かな省察」を柱に、准胝尊の真言を日々の拠り所とすることが、仏との縁を強め、内なる光明への道を開くことにつながります。

 

七覚支編 序章 闇より囁く声 五力――信、精進

七覚支編

序章 闇より囁く声

五力――信、精進、念、定、慧。
その力をひとつずつ、自らの心に確かに植えつけた者たちがいた。

漣 真輝は、日々の介護の現場において、その五つの力を揺るがぬ灯火として心に宿し、もはや「失敗への恐れ」に囚われることはなかった。
柚季の言葉は、彼にとって「信」の種となり、そして自らの一歩が「精進」の花を咲かせた。
心は今、「道の完成」へと向かっている――七つの覚支の修行へ。

しかし、その歩みを見つめる者がいた。
暗き想念のなかで生まれ、信を嘲り、進む者の足元に疑いを蒔く存在。
それは、「疑念を糧とする者たち」。

彼らは姿を持たない。
囁きとなり、問いとなり、時には愛する者の顔を借りて語りかける。
「その覚りは本物か?」
「お前の精進は、誰のためのものか?」
「お前の“慧”は、ただの思い込みではないのか?」

真輝は気づかぬうちに、自らの心の中に新たな影を抱き始めていた。
その影は、やがて「念」の修行に試練をもたらし、「定」を揺るがし、「慧」を濁らせる。

だが、それこそが――
七覚支の第一の関門であった。

 

第一章 念

真輝は、職場や日常の中で、ふとした瞬間に「雑念」や「迷い」が頭をもたげるのを感じ始める。

以前のような動揺はないが、どこか心が浅く、表面的な集中にとどまっていると気づく。

ある日、柚季が「お兄ちゃん、今日ちょっと違うね」と言う。彼女は真輝の心の微細な乱れを感じ取っていた。

師である慧道は、真輝に「念とは、ただ今にあることではない」と語る。
「今にあることを知りつつ、そこに慈しみと智慧を灯す。そうして初めて“覚支”としての念になるのだ」と。

真輝は、自らの「念」が観察に留まり、真の気づきと慈しみを伴っていないことに気づく。

その矢先、職場でのある出来事――
認知症の高齢者に対して同僚が怒りを露わにする現場に立ち会う。
真輝の中に、「あの人は間違っている」という正義感が湧くが、その心に闇の囁きが入り込む。
――「お前も、本当はイライラしているんだろう?」

真輝は立ち止まり、自らの心を深く観る。「今、私は本当にどう在りたいのか?」
その問いの中で、彼の「念」が、ただの集中から「目覚めの力」へと深化していく。

このように、「念」の章では“外からの揺さぶり”と“内なる観照”を通じて、「気づき」の本質に迫る展開が可能です。

第二章 択法覚支

静かな夜だった。
施設の夜勤を終えた帰り道、真輝はどこか引っかかるような思いを抱えていた。
職場では、新しいケア方針を巡ってスタッフ間に対立が生じていた。

一人のスタッフが言った。
「もっと機械的にやったほうが効率的だ。心なんて入れてたら、回らない」
別のスタッフが反論した。
「でもそれじゃ、人を人として扱ってるとは言えない」

どちらの言葉も、真理に一部は触れているようで、どこかで決定的に何かが欠けていた。

――私は、どちらを選ぶべきなのか?
――いや、それとも別の選択があるのか?

真輝の内で、再び“あの囁き”が蘇る。

「正しいかどうかなんて、結局わからない」
「“道”なんて、誰かの幻想かもしれない」

その声は、今度はより理性的で、もっともらしい姿で語りかけてくる。
「あなたの思いやりは、結局“自己満足”ではないのか?」
「本当に“相手のため”だと思っているのか?」

かつて抱えていた恐れとは違う、もっと冷たい疑念。
それは、五力では打ち消せない種類の問いだった。

その夜、真輝は慧道のもとを訪ねた。
闇の囁きをそのまま語ったとき、慧道はしばらく沈黙し、やがて静かに口を開いた。

「それでよい。疑いを持て。だが、“自分の願い”にまで疑いを向けるな」
「正しい法とは、正しい情報ではない。“正しい選び”のことだ。
その選びが、怒りから出たか、恐れから出たか、慈しみから出たか――
それを見極める目こそ、択法覚支の目である」

真輝は、はっと息をのんだ。
彼の心にずっと残っていた問い――
「何が正しいか」ではなく、「どう選ぶか」が道を開く鍵だった。

そして、その選びの基準はただ一つ。
慈しみから出たかどうか。

翌日、職場でのスタッフ会議。
真輝は発言した。
「効率も大事です。人として接することも大事です。でも、僕は“その人の孤独を少しでも和らげたい”と思って動きたい。
それが遠回りでも、それが僕の選びです」

それは反論ではなかった。
ただ、静かな選択の宣言だった。

そのとき、闇の囁きは聞こえなかった。
真輝の中に、静かに根を張る「択法覚支」の光があった。

 

第三章 精進覚支

雨が降っていた。
朝から冷たい小雨が降り続くその日、施設の一角では入居者の一人・田辺さんの容態が急変していた。

食事を拒み、言葉も少なくなった彼の姿に、看護師たちは医療的対応を協議し始めていたが――
真輝は、ふと立ち止まり、彼の目をじっと見つめた。

「田辺さん……何か、伝えたいことはありますか?」

わずかに震える唇が動いた。
「……もう、がんばりたくない」

その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。
けれど、確かにその言葉は、真輝の胸に届いた。

その夜、施設の責任者から「延命治療の同意を家族から取ってほしい」と指示が下る。
だが真輝の中では、揺れが起きていた。

――自分の中の“選び”を、信じきれているか?
――あの人の心に、もっと深く寄り添える余地があったのではないか?

ここで“精進”とは、ただ熱心に働くことではない。
迷いがありながらも、選び抜いた「慈しみの実践」を貫き続けること。

慧道の言葉が蘇る。
「道を見極める者に問われるのは、“後戻りしない勇気”だ。
進みながら疑い、働きながら揺れる――そのなかで、“なお歩む”力こそが精進なのだ」

次の日も、真輝は田辺さんのそばに座り続けた。
言葉ではなく、ただその沈黙と呼吸に耳を澄ませた。
数日後、田辺さんがふと呟いた。

「ありがとう……もう少しだけ、いてもいいかな」

涙がにじんだ。
それは病が癒えたということではなく、「生きることへの意志」がかすかに戻ってきたということだった。

職場には依然として、忙しさや方針の違いが渦巻いていた。
真輝もまた、日々疲れ果てることがある。

けれど、ふとした瞬間に思い出す。
田辺さんの「もう少しだけ」という言葉を。

それは、真輝自身にも向けられた“精進”の言葉だった。
――もう少しだけ、歩いてみよう。
そう心に灯すたび、彼の中の「精進覚支」は、静かに力を増していった。

第四章 喜覚支

季節は春に移りつつあった。
冷えた空気が緩み、施設の庭先にも小さな花が咲き始めていた。

ある日、真輝はふと立ち止まった。
見慣れた庭に、小さな変化があったのだ。

――田辺さんが、外に出たいと願ったのは初めてだった。

車椅子を押しながら、真輝は小さな沈黙を共有していた。
風が吹き、鳥が鳴く。
何の特別さもない瞬間が、胸の奥を満たしていく。

「ここ、いいね」
田辺さんがつぶやいた。
それは、どこか遠い記憶をなぞるような穏やかな声だった。

その瞬間、真輝の内に何かが灯った。
強くではない。
けれど確かに、あたたかく、柔らかな光だった。

「……ああ、自分は、今、道の上にいる」

その実感だった。
報酬でも、評価でもない。
正解かどうかもわからない。

ただ、自分が歩んできたこの小さな選択の積み重ねが、
誰かの“生きていてよかった”という瞬間に寄り添えている。

そのことが、言葉では言い表せない深い喜びとなって、
真輝の胸の奥にじんわりと広がっていった。

その夜、慧道に報告する。

「今日、初めて“喜び”というものが、力になるんだとわかりました」

慧道は頷く。
「よい。喜びとは、苦から逃れるための慰めではない。
苦の中に灯る“意味”へのまなざしだ。
それを得た者は、闇の囁きに飲まれぬ」

その言葉通りだった。
“疑念を糧とする者たち”は、歓喜の光には手を伸ばせない。
なぜなら、喜びとは「確証」ではなく、「実感」だからだ。

それは他人が否定できるものではなく、
ただ、内から滲み出る「道の証」だった。

こうして真輝の中に、第四の支え――喜覚支が芽生えていった。
その光は、次の試練を照らすために、確かに育ちつつあった。

 

第五章 軽安覚支

春の日差しが柔らかく施設を照らしていた。
真輝は、以前よりも忙しい日々を送っていた。
入居者の看取り、介護記録の整理、新人職員の教育――
日々の仕事は次々と押し寄せ、終わることがなかった。

けれど、ふと気づく。

――以前なら、この忙しさに押し潰されそうになっていたはずだ。
――でも今、自分は、心が澄んでいる。

感情が消えたわけではない。
重さを感じないわけでもない。

ただ、「抵抗」していない。
この仕事も、この瞬間も、誰かの苦しみも、
そのままの姿で受け止めている――そんな実感だった。

ある日、新人の職員が慌てた様子で駆け込んできた。
「すみません、また同じミスを……! 本当に、向いてないかもしれません」

かつての真輝なら、なんと声をかけるか悩んだだろう。
でもこのとき、自然と口をついて出た言葉があった。

「僕も、ずっと怖かったんです。
でも、怖いときは深呼吸して、いったん空を見上げてみてください。
そのうえで、もう一歩だけ前に進めば、それで十分です」

その瞬間、新人の目にわずかな笑みが戻った。
“教える”というより、“寄り添う”。
“正しさ”ではなく、“軽さ”が場を変えたのだ。

その夜、真輝は思った。
――あの時、自分の中に“軽安”があったから、重い心を引き受けずに済んだのかもしれない。

慧道がかつて語ったことを思い出す。
「苦を受け止めながら、なお軽やかに生きる者がいる。
その者の歩みは、風のように自由で、波のように柔らかい。
それを“軽安”というのだ」

真輝はその言葉の意味を、実感として知っていた。
そしてその“軽さ”は、彼の身体にも変化をもたらしていた。

夜勤明けの身体に感じていた重だるさが、最近ではほとんどない。
肩の力が抜けている。
まるで、身体そのものが「余計な重荷」を手放し始めたかのようだった。

そう、軽安とは、心が身体を変える力でもあった。
“道を歩む”ということは、苦行ではない。
それは、余計なものを一つずつ脱ぎながら、
本来の身軽さを取り戻していく旅だったのだ。

そのとき、真輝の背後にひとひらの風が通り抜けた。
ふと見上げた空に、白い雲がゆっくりと流れていく。
心のなかに、静かでやさしい風が吹いていた。

それは、第五の支え――軽安覚支がもたらした風だった。

 

第六章 定覚支

夜勤明けの施設は、まだ静けさに包まれていた。
夜のあいだ、呼吸の乱れを見せていた入居者の方が、朝になって穏やかな表情を取り戻していた。

真輝は、一つ深く息を吸った。
そして気づく――この静けさは、周囲の“音がない”というだけではない。
自分の中が静かであるという感覚だった。

目の前の出来事が、良いとか悪いとかに左右されない。
ただ、起きていることを、起きているままに受け入れている。

それは冷たい無関心ではなく、
温かく、けれど波立たないまなざしだった。

ふと、慧道が以前語ったことを思い出す。

「定とは、心の湖が風にさざなみ一つ立てず、
ただ真っ直ぐに月を映すようなものだ。
そこには“判断”も“欲”もない。
ただ、在るべきものが在る――その静けさだ」

その日、施設に一報が入った。
田辺さんが転院先の病院で息を引き取られたという報せだった。

電話を受けたあと、真輝はしばし無言のまま立ち尽くした。
深い悲しみが、そっと胸に差し込んでくる。
けれど、その感情の波に呑まれることはなかった。

――そうか。あの人は、今、苦しみから離れている。
――僕が感じているこの悲しみも、慈しみの証なのだ。

それは冷静さではなく、深い受容だった。
善悪も損得も超えたところで、心が定まっていた。

夜、ひとりで空を見上げる。
月がまっすぐに浮かび、雲ひとつない夜空に静かに光っている。

「田辺さん……どうか、安らかに」

その言葉は祈りというより、静かな“送り”だった。
言葉の後に、何も残らなかった。
ただ、心の奥に澄みきった水面のようなものがあった。

誰かに褒められることもない。
報われるとも限らない。
でも、確かにここにあるこの静けさこそが、
自分が“道の上”にいるという確かな証明だった。

こうして真輝の内に、
第六の支え――定覚支が根を下ろしていった。

その心は、揺れず、争わず、
ただあらゆる命を包み込む「場」へと変わり始めていた。

 

第七章 捨覚支

柚季は、今日も病室で静かに横たわっていた。
一時は快方に向かっていたが、再び病状は悪化していた。
真輝は、心を整えてから病室に入った。

柚季はかすかに目を開け、声をかけた。
「……今日は、空を見た?」

「うん。風が気持ちよかったよ。雲がすごく高くて、まるで全部、許してくれてるみたいだった」

柚季はうっすらと笑い、そっと目を閉じる。
生きることの苦しさも、かすかな希望も、
すべてが薄紙のように透き通っていた。

真輝の心に、一つの思いが浮かんでいた。
――この子の命を救いたい。
――でも同時に、この子の「今」を壊したくない。

その矛盾を抱えたまま、彼はそっと手を握った。
だがそのとき、ふと気づいた。
「助けたい」という思いの裏にある“焦り”や“結果への執着”を――。

「……僕ね、ずっと答えを出そうとしてた。
なにが正しいのか、なにをすべきなのか。
でも今日、わかった気がするよ。
“答えがなくても、一緒にいる”ってことが、
たぶん、いちばん大切なんだって」

その瞬間、真輝の心の奥で、何かがふっとほどけた。
「この子をどうにかしなければならない」
「自分が支えにならなければならない」――

そうした“役割”や“責任”といった重さから、
自然と心が離れていった。

それでも、愛はそこに残った。

ただ、彼女といる。
今この一瞬に、すべてが満ちている。
何かを得るでもなく、失うでもなく、
ただ、共にいることが「仏の眼差し」そのものだった。

そのとき、柚季がささやいた。

「ねえ……“今ここ”って、たまに、すごく綺麗だよね」

真輝はうなずいた。
「うん……ほんとうに、そうだね」

彼の中には、波立つものがなかった。
悲しみもある。希望もある。
けれど、どちらにも偏らず、心は静かだった。

この心こそが、**捨(うつ)**だった。

「捨」とは、感情を捨て去ることではない。
欲望や恐れを手放したうえで、
すべてを平等に見つめ、静かに寄り添える心である。

――念があった。
――法を選び、精進し、喜び、軽やかになり、心を定めてきた。
そのすべてが、ここに溶けている。

そして今、
真輝の心はただ、柚季と一つの時を共有していた。

そこには、目的も結論もなかった。
けれど、これ以上に“完成された一瞬”はなかった。

それが、第七の支え――捨覚支だった。

七覚支を得たとき、
人ははじめて「道が完成した」と言える。
しかしその道は、新たな始まりへの門でもある。

 

 

 

 

 

 

 

五力編 『魂の灯火 ~四つの道を歩む者たち~』 第三部:五力編

五力編

 

『魂の灯火 ~四つの道を歩む者たち~』

第三部:五力編

序章「揺るがぬ力の在処」

夜明け前の都市――まだ陽が昇りきらぬ灰色の空の下、静寂を裂くように一人の青年が走っていた。

その名は漣 真輝(さざなみ まさき)。かつて深い迷いに沈んでいたが、「念」を礎に再生の道を歩みはじめた一人だ。だが、目覚めた意識を日々の荒波の中で保つことは容易ではない。

ビルの谷間をすり抜け、人気のない公園にたどり着いた真輝は、ベンチに座り込むと、自問するように目を閉じた。

「この道を歩む力は、本当に私の中にあるのか……?」

そこにふと現れたのは、和服姿の小柄な老人だった。名を**安慧(あんね)**という。真輝がかつて出会った導師、蓮真の師であり、老いてなお鋭いまなざしの奥に静かな慈悲を宿している。

安慧は、真輝の問いに答えることなく、そっと問い返した。

「その問いを抱えて、なお歩む者にこそ、五つの力は宿る。そなたは、それを確かめに来たのだろう?」

真輝は黙ってうなずいた。

こうして、五つの力――信・精進・念・定・慧――を深く体得する旅が始まる。

 

第二章「精進 ― 越えゆくもの」

朝の光が、静かにカーテンの隙間から差し込んでいた。
漣 真輝は、目覚ましよりも早く目を覚まし、枕元の時計をぼんやりと見つめた。

午前5時45分。

起き上がるにはまだ少し早いが、横になっていても昨日のことが脳裏をよぎるばかりだった。

――利用者の一人、山崎さんが転倒した。

ほんの一瞬、真輝の気が逸れた隙だった。声をかけようとしたときには、彼女の体が床へと傾いていた。

「あなた、見てなかったの?」と、同僚から鋭く言われた声が胸に残っている。

何度も頭の中で繰り返された場面。
どこで止められた? どうして声をかけなかった? そもそも、俺は……。

「また、失敗した……」

その言葉が、真輝の心の底に染みついていた。

職場での朝礼はいつもどおりに始まったが、真輝の耳にはほとんど入ってこなかった。
目の前にいる利用者一人ひとりの顔を見るたびに、あの日の失敗が蘇る。

「精進、か……」

真輝は、昨日読んだ安慧の書き記した言葉を思い出していた。

《精進とは、過ちを悔やみ続けることではなく、過ちを抱えたまま進むことだ》

それは、柚季と安慧に出会った夜に贈られた言葉でもあった。

その日の帰り道。
職場を出た真輝の足は、なぜか自然と柚季の家へと向かっていた。

柚季の母親・遥子は、驚いたように出迎えたが、真輝を見るとすぐに笑って言った。

「また夢を見たらしいのよ。お坊さんが、“次は火をくぐれ”って言ったんだって」

柚季は廊下でぺたぺたと足音を立てながら現れた。

「“火をくぐる”って、なに? 燃えない?」

「それは……燃えるかもしれないな。でも、焦げた分だけ、強くなるかも」

そう答えた真輝の声には、どこか本気の響きがあった。

「お兄ちゃん、きっとまた立ち上がれるよ」

柚季が何気なく言ったその言葉が、真輝の胸の奥に、ゆっくりと沈んでいった。

翌朝。
真輝は、前夜に何度も反芻した言葉と共に、利用者の前に立っていた。

「……山崎さん、おはようございます。今日は、どうですか?」

山崎は、無言だった。表情にはまだ不安の影があった。
だが、真輝は静かに微笑んだ。逃げずに、そこにいることを選んだ。

――過ちを抱えたまま、それでも向き合い続ける。

――それが、精進。

「今日は手を、しっかりお支えしますね」

真輝の掌が、山崎の手を包んだとき、彼女の顔にふと、微かな笑みが戻った。

その夜、真輝は一人でノートにこう記した。

《火は怖い。失敗も、怖い。でも、燃えることを恐れて何もせずにいたら――、心は凍えてしまう》
《だから、今日も一歩だけ、火の中へ足を踏み出してみた》

 

第三章「念 ― 今ここを歩む」

カップに注がれた温かいお茶から、湯気がゆっくりと立ち上っていた。

漣 真輝は、職場の休憩室でその湯気を見つめていた。
時間にしてわずか5分の小休憩。それでも、彼にとっては大切な「間(ま)」だった。

「心が、今ここにあるか?」

安慧から教えられた問い。それを胸に刻んでから、真輝は一日に何度も立ち止まるようにしていた。

仕事は、介護という名の連続した“対応”である。
認知症の利用者の急な言動。転倒の危険。食事の介助、排泄の見守り。
職員間の連携もまた、注意が必要だ。焦りや苛立ちが、すぐに現場に影を落とす。

「“今”にいないと、心がすぐに引き裂かれる」

それを痛いほど感じたのは、ある日の午後だった。

その日、真輝は思考を巡らせすぎていた。

「あの時、山崎さんが転倒したのは――」
「昨日のあの職員の指示、ズレてたかもしれない」
「明日の研修、間に合うように記録をまとめなきゃ」

意識が“過去”と“未来”にばかり向かっていたその瞬間――
小柄な女性利用者が、立ち上がろうとしたのを見逃
支えようとした時には、彼女はすでに体を傾けかけていた。

幸い大事には至らなかったが、真輝はその夜、深く自分を責めた。

翌朝、真輝はふたたび安慧庵を訪れた。

「念とは何ですか……?」

そう問うと、安慧は何も言わず、一枚の紙と筆を差し出した。

「ここに、“今、ここ”と書いてみよ」

真輝は筆を持ち、「今、ここ」と書き記した。

「では、それを見つめながら、今の自分の呼吸を感じてみよ」

言われるままに呼吸に意識を向けると、不思議なほど胸が静まり、心が身体に戻ってくるのを感じた。

「“念”とは、“今・ここに・在る”という智慧だ。
人は多くの時間を、“いま”を通り過ぎて彷徨っておる。だが、道は“いま”の足元にしかない」

その言葉が、真輝の心の中心に刻まれた。

その日から、真輝は仕事の合間にそっと深呼吸するようになった。
利用者の目を見るとき、手を添えるとき、「いまここにいます」と心で唱える。

――目の前にいる人に、心を届けるために。
――過去にも未来にも逃げないで、いまを生きるために。

ある日、柚季がふらりと職場の玄関前に現れた。母親の遥子が近くで買い物している間だという。

「お兄ちゃん、いる?」

「……今、ちょっとだけね」

玄関前のベンチに二人で並んで座った。
沈黙のあと、柚季がふとつぶやいた。

「“今ここ”って、難しいね。すぐ、どっか行っちゃう」

「うん。でも、気づいたら、また戻ってくればいいんだよ」

「……帰ってくる場所があるって、いいね」

真輝は笑った。

「うん、“今ここ”は、帰ってこれる場所なんだ」

その夜、真輝のノートにはこう綴られていた。

《念とは、心の定位置を知ること。
流されても、迷っても、ここに戻ればいい。

第三章「念 ― 今ここを歩む」

カップに注がれた温かいお茶から、湯気がゆっくりと立ち上っていた。

漣 真輝は、職場の休憩室でその湯気を見つめていた。
時間にしてわずか5分の小休憩。それでも、彼にとっては大切な「間(ま)」だった。

「心が、今ここにあるか?」

安慧から教えられた問い。それを胸に刻んでから、真輝は一日に何度も立ち止まるようにしていた。

仕事は、介護という名の連続した“対応”である。
認知症の利用者の急な言動。転倒の危険。食事の介助、排泄の見守り。
職員間の連携もまた、注意が必要だ。焦りや苛立ちが、すぐに現場に影を落とす。

「“今”にいないと、心がすぐに引き裂かれる」

それを痛いほど感じたのは、ある日の午後だった。

その日、真輝は思考を巡らせすぎていた。

「あの時、山崎さんが転倒したのは――」
「昨日のあの職員の指示、ズレてたかもしれない」
「明日の研修、間に合うように記録をまとめなきゃ」

意識が“過去”と“未来”にばかり向かっていたその瞬間――
小柄な女性利用者が、立ち上がろうとしたのを見逃
支えようとした時には、彼女はすでに体を傾けかけていた。

幸い大事には至らなかったが、真輝はその夜、深く自分を責めた。

翌朝、真輝はふたたび安慧庵を訪れた。

「念とは何ですか……?」

そう問うと、安慧は何も言わず、一枚の紙と筆を差し出した。

「ここに、“今、ここ”と書いてみよ」

真輝は筆を持ち、「今、ここ」と書き記した。

「では、それを見つめながら、今の自分の呼吸を感じてみよ」

言われるままに呼吸に意識を向けると、不思議なほど胸が静まり、心が身体に戻ってくるのを感じた。

「“念”とは、“今・ここに・在る”という智慧だ。
人は多くの時間を、“いま”を通り過ぎて彷徨っておる。だが、道は“いま”の足元にしかない」

その言葉が、真輝の心の中心に刻まれた。

その日から、真輝は仕事の合間にそっと深呼吸するようになった。
利用者の目を見るとき、手を添えるとき、「いまここにいます」と心で唱える。

――目の前にいる人に、心を届けるために。
――過去にも未来にも逃げないで、いまを生きるために。

ある日、柚季がふらりと職場の玄関前に現れた。母親の遥子が近くで買い物している間だという。

「お兄ちゃん、いる?」

「……今、ちょっとだけね」

玄関前のベンチに二人で並んで座った。
沈黙のあと、柚季がふとつぶやいた。

「“今ここ”って、難しいね。すぐ、どっか行っちゃう」

「うん。でも、気づいたら、また戻ってくればいいんだよ」

「……帰ってくる場所があるって、いいね」

真輝は笑った。

「うん、“今ここ”は、帰ってこれる場所なんだ」

その夜、真輝のノートにはこう綴られていた。

《念とは、心の定位置を知ること。
流されても、迷っても、ここに戻ればいい。
“今ここ”に心を置く。それが、歩く力になる》

 

 

“今ここ”に心を置く。それが、歩く力になる》

 

 

第四章「定 ― 揺るぎなき静けさ」

――波立つ水面に、月は映らない。

その言葉を、真輝は繰り返し思い出していた。
静寂を知らなければ、物事の本当の姿は見えない。
安慧がそう語ったのは、ある月夜だった。

季節は秋の入り口。夜風がひんやりと頬を撫でる。
ある日の勤務後、真輝は久しぶりに安慧庵を訪れていた。

「お前の心は、今、波立っておるか?」

安慧の問いに、真輝は答えられなかった。
仕事にも少しずつ慣れ、焦りや自責からは離れつつある。
けれど、その分だけ、ぼんやりとした“空虚”が心に滲んできていた。

「やっても、終わらない気がするんです。
がんばっても、報われるかどうかもわからない。
それでも、ただ繰り返して……」

すると安慧は、笑って言った。

「よくぞ気づいたな。
お前の心にあった“恐れ”の雲が薄れ、今は“倦怠”という風が吹いておる」

「……どうすれば、止められるんでしょうか。この風を」

「止める必要はない。ただ、その風の中に“坐る”ことじゃ」

その日、真輝は初めて坐禅を体験した。

足を組み、背筋を伸ばし、目を半眼にして呼吸を数える。

最初は、呼吸を数えるたびに雑念が押し寄せた。
過去の場面、明日の仕事、柚季の言葉、自分の不安。

けれど、それを打ち消そうとせず、ただ“気づいて、戻る”を繰り返すうちに、心が次第に鎮まっていった。

風はまだ吹いている。けれど、その風に巻き上げられない“核”のようなものが、自分の中にあると感じた。

「……これが、“定”なんですか?」

「そう。“定”とは、何も考えない状態ではなく、何があってもそこに在るという“静けさ”じゃ」

それからの日々、真輝は朝の10分だけ、自宅で静かに座る時間を作るようになった。
雑念は相変わらず湧いたが、それを追い払おうとしないことで、逆に心の芯が見えてくる気がした。

ある日、職場で同僚が感情的に怒鳴る場面に出くわした。
かつての真輝なら、心が強く揺さぶられたはずだった。
だがそのとき、真輝は深く息を吐き、ただ“そこに在る”自分を感じていた。

――ああ、今、ここに、揺るがずにいる。

その静けさは、言葉にはならなかったが、周囲にも伝わっていくように思えた。

その夜。真輝はふと、柚季の描いた一枚の絵を思い出した。
それは、穏やかな湖の水面に、月が映る絵だった。

「これ、心だって。お兄ちゃんの」

そう言って彼女が笑った顔を思い出しながら、真輝はノートにこう記した。

《心を落ち着けることで、世界の本当の姿が映る。
揺れないことではなく、揺れても戻れる“静けさ”を持つこと。
“定”とは、戻る場所を知る智慧だ》

第五章「慧 ― 闇を照らすもの」

――闇を恐れる者は、まだ灯火を手にしていない。
だが、闇を見つめる者は、光を探している。

漣 真輝は、静かな覚悟を抱きながら、ある訪問先へ向かっていた。
それは、しばらく顔を見せなくなった柚季の母、遥子の家だった。

数日前、施設の玄関で柚季が泣いていた。
いつも明るく、どこか達観していた少女が、その日だけは小さな肩を震わせていた。

「……お母さん、最近、ずっと寝てばかりなの」

真輝は胸の奥が締めつけられるようだった。
彼女の家庭に複雑な事情があることは、言葉の端々から察していた。
だが、真輝自身もまた「誰かの苦しみに踏み込む」ことに臆病だった。

――自分に何ができる?
――下手に手を出して、余計に傷つけてしまうかもしれない。

その問いが、かつての“失敗への恐れ”を呼び覚ました。
だが、心はもう、逃げなかった。

「怖さに気づけるのは、智慧のはじまりだ」

安慧の言葉を思い出しながら、真輝は行動を選んだ。
それは、勇気ではなかった。ただ、「照らしたい」と願う心が、彼を動かした。

遥子の家は、古びた団地の一角にあった。

ピンポンと鳴らしてもしばらく反応がなかったが、ようやく扉が開いた。

現れた遥子は、かつての姿からは想像もつかないほど憔悴していた。
化粧もせず、視線は定まらず、声も弱い。

「……あんた、誰だったっけ」

「漣です。柚季ちゃんのことで、少しだけお話を――」

そう言いかけたとき、遥子の目に、かすかに警戒の色が走った。
しかし、その中に、「助けて」という微かな火も見えた。

しばらく沈黙が続いたのち、遥子はぽつりと漏らした。

「……わたし、もう、どうしていいかわからないの」

真輝はその場で、何も語らず、ただ座って向き合った。
相手の沈黙を埋めることなく、ただ“在る”という静けさを携えて。

やがて遥子は、ぽつりぽつりと語りはじめた。
仕事を失ったこと。自分を責め続けていたこと。柚季に手をあげてしまったこと。
「母親でいる資格なんてない」と、涙ながらにこぼした。

その言葉を、真輝は静かに受け止めた。

「……僕も、何度もそう思いました。
誰かにとって、自分は“害”なんじゃないかって。
けど、だからこそ、“照らす心”を持ちたかったんです。
過ちの中にも、灯りを見つけられることを、信じたかったんです」

遥子は、ハッとしたように真輝を見た。
その目に、初めて“他人の言葉”ではないものが映った。

その夜。真輝は安慧庵に戻り、師に報告をした。

「私は、誰かの闇に、そっと光を灯せたでしょうか」

安慧は笑って、こう答えた。

「灯火とは、“正しさ”ではなく、“共に居る心”じゃ。
人の苦しみに照らされて、なおも歩もうとする心。
それが“慧”という名の、光じゃよ」

後日、遥子は少しずつ生活を取り戻しはじめた。
柚季の笑顔も、以前より柔らかくなった。

真輝は、自分の心に起こった変化を、手帳に記した。

《慧とは、知識ではない。
闇を否定せず、光を探す心だ。
照らすとは、“正す”ことではなく、“寄り添う”こと。
そのとき初めて、真の力が芽生える》

光と闇は、対立ではない。
光があるから、闇が見える。
闇があるから、光を求める。

そのことを知ったとき、真輝は本当の意味で、**「五力」**の最後にたどり着いていた。