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Mac

四正断法

旧訳では四正勤という。断断・律儀断・随護断・修断の四つの修行。

断断=いま現に起こっている悪を断じてなくするようにはげむ修行。幾

度も断ずることをくりかえす。

修 断=まだ起こっていない悪に対して、今後起きないように努力する修行。

随護断=いますでに存在している善はこれをますます増大させるようにと努力する修行。

律儀断=まだ存在しない善に対して、これを得るように努力する修行。

光の道をゆく者 ― 四つの誓い

深い森の奥、霧が立ち込める小道を、一人の行者が歩んでいた。名は蒼蓮。心に闇を抱えながらも、悟りへの道を求めて旅を続ける若き修行者だった。

ある日、彼は古びた庵に住む老人と出会った。白髪のその男は、かつて王国に仕えた賢者であり、今はただ「無名の師」と呼ばれていた。

「そなた、真に光を求めるか?」
師の問いに、蒼蓮は静かにうなずいた。

「ならば、四つの剣を授けよう。これらを携え、己が心を斬り続けよ」

第一の剣断断の剣。
「すでに心に芽生えた悪を断つ剣だ。怒り、妬み、迷い――これらが現れたとき、何度でも斬り捨てよ。たとえ立ち返ろうとも、決して手を緩めるな」

第二章 断断の剣、闇を裂く

蒼蓮は山を越え、谷を渡り、荒れ地にたどり着いた。そこには、かつて人々が繁栄して暮らしていたという村の廃墟があった。瓦礫の間には、今もなお怒りと怨嗟の声が澱のように漂っていた。

夜、野営の焚き火の前で、蒼蓮の心にふと怒りの念が浮かんだ。過去の屈辱、裏切られた記憶、抑えてきた憤りが、まるで焚き火の火種をあおるように燃え上がる。

「なぜ、自分ばかりが苦しまねばならぬのか……」

その瞬間、彼の背に冷たい風が吹いた。無名の師の声が、かすかに風にまぎれて届く。

――すでに生じた悪を断て。怒りは、己の光を覆い隠す黒雲なり。

蒼蓮は目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えた。そして、心の中に立ち上がる怒りの幻影に向かって、心の剣を振るった。

「これもまた、幻影に過ぎぬ。」

何度も何度も、怒りがよみがえってくる。だがそのたび光の道をゆく者 ― 四つの誓い

深い森の奥、霧が立ち込める小道を、一人の行者が歩んでいた。名は蒼蓮。心に闇を抱えながらも、悟りへの道を求めて旅を続ける若き修行者だった。

ある日、彼は古びた庵に住む老人と出会った。白髪のその男は、かつて王国に仕えた賢者であり、今はただ「無名の師」と呼ばれていた。

「そなた、真に光を求めるか?」
師の問いに、蒼蓮は静かにうなずいた。

「ならば、四つの剣を授けよう。これらを携え、己が心を斬り続けよ」

第一の剣は断断の剣。
「すでに心に芽生えた悪を断つ剣だ。怒り、妬み、迷い――これらが現れたとき、何度でも斬り捨てよ。たとえ立ち返ろうとも、決して手を緩めるな」

、蒼蓮は剣を抜き、静かに斬り伏せた。怒りを退けるというより、それを見つめ、執着を断ち、手放す修行だった。

やがて、夜が明ける。焚き火は消えていたが、蒼蓮の心の中には、一筋の光が差していた。

「これが……断断の剣か」

彼はつぶやき、再び歩き出す。

第三章 修断の剣、未来を護る

山を下りた蒼蓮は、静かな湖畔の村に立ち寄った。水面は鏡のように澄み、遠くで子どもたちの笑い声が響く、穏やかな場所だった。だが、村の人々の目はどこか怯えていた。

「近くの森に、夜になると魔が現れる」と、老婆が語った。「まだ被害はないが、何かが忍び寄っている。皆、心の奥で不安に怯えておるよ」

蒼蓮は、村の静寂の中に潜む影を感じ取った。人の心に忍び寄る「まだ起こっていない悪」――それは恐れであり、油断であり、慢心でもある。

その夜、蒼蓮は森の入り口に一人、座して静かに心を整えた。焚き火も灯さず、ただ瞑目し、心に生まれようとするものを観察した。

ふと、不意に湧き上がったのは、「この村を守るべきか、立ち去るべきか」という迷い。自己保身の声、正義を装った偽りの思考――そうしたものが、芽を出す前の悪として、心の底でうごめいていた。

彼はそれに気づき、剣を抜いた。
修断の剣――それは、まだ形をとらぬ悪を断ち、未来を護る剣。

「恐れが芽生える前に、信を立てる」
「慢心が芽生える前に、謙虚を学ぶ」
「偽りが芽生える前に、真実を守る」

心に生まれかけた影を、ひとつずつ斬り払うたびに、夜の森は静まり返っていった。

やがて、東の空にわずかな光が差し込む。村に魔は現れなかった。だがそれは、剣で退けたのではなく、蒼蓮の内なる修断によって、未然に消えていたのだ。

翌朝、村人たちは何も知らぬまま、子どもたちと湖辺で遊んでいた。
蒼蓮は静かに村を去った。その背に、誰も気づかなかったが、彼の心には確かに一つの守りが築かれていた。

第四章 随護断の剣、善を育む灯

旅の途中、蒼蓮は一つの僧院に立ち寄った。山間にひっそりと佇むその場所は、草木に包まれ、風が静かに通り過ぎてゆくような、清らかな気の満ちた場所だった。

僧院では、十数人の若き修行僧たちが日々の勤行と学びに励んでいた。彼らは蒼蓮を温かく迎え入れ、共に座禅を組み、経を唱えた。

ある日、蒼蓮は年若い僧のひとり、明真(みょうしん)という少年と話をした。明真は、かつて家族を戦で失い、心に深い傷を負いながらも、今は静かに仏の道を歩もうとしていた。

「私はまだ、怒りを抱えているのです」と明真は言った。「でも、ここに来てから、少しずつ人を許す気持ちが芽生えたような気がするのです」

その言葉を聞いたとき、蒼蓮の心にひとつの剣が共鳴した。
随護断の剣――すでに芽生えた善を、育て、護り、燃やし続けるための剣。

蒼蓮は語りかけた。
「善は小さき火。風が吹けば消え、放っておけばやがて尽きる。だが、手を添え、囲い、灯し続ければ、闇を照らす灯明となる」

それからの数日、蒼蓮は明真と共に草を刈り、経を学び、夜は火を囲んで語り合った。怒りが再び胸を刺すたびに、明真はその感情を見つめ、言葉にし、涙を流した。

蒼蓮は黙って寄り添った。ただ、明真の中にある善の芽が、消えぬよう、折れぬように。

ある朝、明真は蒼蓮に頭を下げて言った。
「私は、人を赦せるようになりたい。善を、もっと大きく育てていきたい」

蒼蓮は頷いた。明真の中にあった善は、確かに育っていた。そしてそれは、自分の中の灯ともなっていた。

別れの時、蒼蓮は一枚の葉に言葉を刻んで明真に渡した。

「心にある善を、火のように守れ。
灯を継ぐ者は、いつか闇を照らす者となる」

彼はまたひとつ剣を強く握りしめ、次の旅路へと歩き出した。

第五章 律儀断の剣、未だ来ぬ光を求めて

冬の訪れが近づくころ、蒼蓮は北の地に向かっていた。雪雲が空を覆い、大地は凍てつき、草木は眠る。人々の往来も絶え、ただ白と灰だけが世界を塗りつぶしていた。

その地には、かつて偉大な修行者がいたという。彼は生涯をかけて慈悲を育て、智恵を求め続けたが、何一つ得られぬまま世を去ったと伝えられる。

「得られぬ努力は、無であるか」

蒼蓮は問いかけるように風の中を歩いた。

旅の途中、蒼蓮は一つの僧院に立ち寄った。山間にひっそりと佇むその場所は、草木に包まれ、風が静かに通り過ぎてゆくような、清らかな気の満ちた場所だった。

 

芽生えていない善がある。大慈、大悲、大智、大願――それらは未だ心に根を張ってはいない。だが、心のどこかで、それらを求める渇きが確かに燃えていた。

凍てつく野原で一人、彼は座した。寒さが骨を刺し、風が肌を裂くように吹く。だが彼は静かに目を閉じ、己の中に「まだ存在していない善」を求めた。

律儀断の剣――それは、未だ芽吹かぬ善を志し、歩み、得ようとする剣。

「たとえ今、慈悲を持たずとも、慈悲を求めよう」
「たとえ今、智恵を持たずとも、智恵に憧れよう」
「たとえ今、力を持たずとも、力を備える者となろう」

彼は手を合わせた。それは空を打つ祈りではなかった。確かな志として、未来に剣を立てる誓願だった。

やがて、雪が降り始めた。白く静かな空から、ひとひらの雪が蒼蓮の掌に舞い落ちる。それは、まだ訪れていない春の予兆だった。

彼は立ち上がった。歩みはゆっくりと、だが確かだった。

すでにある善は守り、今ある悪は断ち、来るべき悪を防ぎ、未だ見ぬ善を求める。

それが、彼が受け継いだ四つの剣――四正断の道であった。

終章 そして光は、歩む者の中に

その後、蒼蓮がどこへ向かったのかを知る者は少ない。だが、時おり語られる。

「かつて、一人の修行者が雪原を歩いた。彼の足跡には、光が宿っていたと」

そう、人々は語り継ぐ。光とは、どこかにあるものではなく、求め、守り、断ち、願う者の内にこそ生まれるのだと――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四正断法(ししょうだんほう) 旧訳では四正勤といいます。断断(だんだん)・律儀断(りつぎだん)・随護断(ずいごだん)・修断(しゅだん)の4つの修行 四つの剣──修行者トウマの道

四正断法(ししょうだんほう)
旧訳では四正勤といいます。断断(だんだん)・律儀断(りつぎだん)・随護断(ずいごだん)・修断(しゅだん)の4つの修行

 

四つの剣──修行者トウマの道

深山の庵に、ひとりの若き修行者がいた。名をトウマという。
師に従い、長い沈黙のなかで己と向き合う日々を送っていたが、ある夜、焚き火の前で師が静かに語った。

「トウマよ。仏道を歩む者には、心を護る四つの剣がある。
それが“四正断”──あるいは“四正勤”とも呼ばれる修行だ」

トウマは火のゆらぎを見つめながら、師の声に耳を澄ませた。

「第一は“断断(だんだん)”。
すでに生じた悪しき心──貪り、怒り、迷い。これを見極め、断ち切る剣だ。
お前は近頃、慢心に呑まれかけたことはなかったか?」

トウマは心を刺されたような気がした。
先日の坐禅の後、「自分は少し悟ったかもしれない」と、ふと誇りが胸をよぎったのを思い出した。

「第二は“律儀断(りつぎだん)”。
まだ起きていない悪しき心を、起こさぬように自らを律すること。
たとえ風のように心が揺れても、その風に火を灯さぬことだ」

「……風が吹いても、火種を起こさぬように」
トウマは呟いた。

師はうなずいた。

「第三は“随護断(ずいごだん)”。
すでに心に芽生えた善き思いを、壊さぬように見守り育てること。
慈しみも、精進も、油断すればすぐに枯れる。水を与え、陽を当てねばならぬ」

「第四は?」

「“修断(しゅだん)”。
未だ心に生じぬ善を、これから育てていく修行だ。
たとえば、他者を心から許すという智慧──お前はまだそれを学びつつあるだろう」

トウマは黙ってうなずいた。
彼の胸の内には、許せぬ過去と向き合うための修行が、いま始まろうとしていたのだ。

その夜、トウマは焚き火の前で長く座り、
四つの剣を一つずつ、心の中に刻んでいった。

第二章 断つべきもの、守るべきもの

その翌朝、山の気は澄み渡り、白い霧が谷を覆っていた。
トウマは、いつものように庵を出て、谷あいの村へと下りていった。今日は月に一度の托鉢の日である。

村では、子どもたちが彼を見て駆け寄り、大人たちも手を合わせて迎えた。
だがその中に、ただ一人、苦々しい目で彼を睨む男がいた。

リュウゾウ──かつてトウマの兄弟子でありながら、戒を破って山を下りた者。
村で噂を広げ、トウマを偽善者と呼び、人々の信頼を試そうとしていた。

その日も、リュウゾウはトウマに向かって言った。

「坊主の格好をして、清らかな顔をして……お前は、ほんとうに清らかか?
山の静けさに隠れているだけじゃないのか?」

トウマの心に、怒りの火が灯りかけた。

──断断。
すでに心に起きた怒りを、見つめて、断ち切るのだ。

彼は目を閉じ、ひと呼吸した。
リュウゾウの言葉に応じることなく、黙って頭を下げた。

それを見て、リュウゾウは一瞬たじろいだようだったが、背を向けて去っていった。

村人の一人が言った。「あの人の言うこと、気にしないでください。皆、あなたのことをよく知ってますから」

トウマは微笑んで言った。

「いいえ。心を律する機会をいただいたのです。ありがたいことです」

──律儀断。
悪しき心が芽生えぬよう、あらかじめ己を戒め、守ること。

山へ帰る道すがら、彼は道端に咲く一輪の花を見た。
ふと、そのかすかな命に目を留める自分の心に気づいた。

──随護断。
この慈しみの心を絶やさぬように。何気ない感動を守り育てるのだ。

その夜、師は火を囲みながら、トウマに問うた。

「リュウゾウに会ったか?」

「はい。怒りが胸に上がりかけましたが……それを断つことができました。
彼の言葉が、私の煩悩を照らしてくれました」

「それでこそ修行者よ。だが最後の剣は、まだ抜かれておらぬな?」

「……修断、ですね。善を、まだ生じていない善を生み出すこと」

師は静かに火を見つめていたが、やがて言った。

「明日、村の老女を訪ねなさい。目がほとんど見えぬが、かつては絵師だった。
その人の話を、よく聞いてくるのだ。お前の中に、新たな光を描く力があるかもしれぬ」

トウマはうなずいた。
それが自分にとって、まだ芽吹いていない善の種──
つまり、修断の修行なのだと、心に刻んだ。

 

第三章「絵を描く老女と、修断の始まり」

その朝、山の庵に風が吹き抜けた。
師の言葉に従い、トウマは小さな包みを持って村のはずれへと歩き出す。
目指すは、深い竹林の奥にひっそりと佇む、かつての絵師が住むという小屋。

扉の前に立ち、手を合わせて呼びかけた。

「お婆さま。私は山の庵から参りました。トウマと申します」

しばらくの静寂ののち、やがて軋むような音と共に扉が開いた。

現れたのは、白髪を後ろで束ねた、やせ細った老女だった。
目は濁り、視線は宙をさまよっているが、その顔には不思議な品があった。

「……仏の子か。入っておくれ。火はまだあたたかい」

小屋の中には、古びた筆と絵具が埃をかぶって並び、壁には色褪せた絵がかかっていた。
それでも、光を宿したままのように思えた。

「あなたが描いたのですね?」

老女はかすかに笑った。

「もう見えはせぬが、描くことは、やめたくてもやめられなかった。
光が見えなくなっても、心には、まだ残っていたからね」

「……光、ですか?」

老女は、火に手をかざしながら言った。

「私は、光を絵に閉じ込めようと生きてきた。
朝の山の気配、子どもの笑顔、死を前にした人の眼差し……
どれも、消えてしまう前に残したかった」

トウマは、胸の奥にふと暖かなものを感じた。

「あなたは、善を描こうとされたのですね。人の心を照らすものを」

老女はかすかにうなずいた。

「だけど、描くことができたのは、私が“見ていた”から。
今は……もう誰かに、見てほしいと思っている。
私の代わりに、この世界の光を」

その言葉に、トウマの胸が強く打たれた。

──修断(しゅだん)
まだ自分の中に生じていない善を、育てること。
それは、絵を描くことではなく、誰かの見えぬ光を共に見つけ、語ることかもしれない。

トウマはそっと、老女の前に座った。

「もしよろしければ……これから、時々ここに来て、あなたの記憶にある“光”を聞かせていただけますか?
私にそれを、言葉で描かせてください」

老女の目から、涙が一筋、頬を伝った。

「……それは、絵より美しい贈り物だよ」

小屋の中に、静かに火が揺れた。
それは確かに、ひとつの光だった。

 

第四章「光を紡ぐ言葉」

あの日から、トウマは幾度となく老女のもとを訪れた。
小屋の火はいつもあたたかく、そして老女の声は、まるで深い井戸の底から湧く清水のようだった。

彼女の名はユナという。

トウマは、ユナの語る記憶を、丁寧に言葉に起こした。
彼女がかつて描いた光景──山の朝霧、亡き夫の笑顔、少女時代に見た蓮の池、病に伏せた母の手の温もり──
そのすべてが、彼の中に静かに降り積もっていった。

「あなたの言葉は、筆みたいね」とユナは言った。

「私は……ただ聴いているだけです」
トウマはそう答えながらも、ふと気づいた。

──これは、心を写す修行だ。

彼の中で、「見る」という行為が変わりつつあった。
人の表情、言葉の背後にある沈黙、そして語られぬ哀しみや喜び──
それらが、言葉に宿る仏性として浮かび上がってくる。

ある日、ユナは語った。

「昔、村の子に“絵を教えてほしい”と言われたことがあったの。
でも私は、それを断ってしまった。“見える目がなければ描けぬ”と……
今になって思うの。あれは傲慢だったと」

トウマは、静かに言葉を紡いだ。

「……目に見えるものより、目に見えぬ“心の光”を伝えるほうが難しい。
だからこそ、あなたが私に話してくれることには、深い意味があります。
私はそれを描き続けます。言葉で」

ユナは、何も言わず、微笑んだ。

その帰り道、山道に一人の影が立っていた。
褐色の外套をまとい、木に背を預けていた男。
かつての兄弟子──リュウゾウだった。

「久しぶりだな。……ずいぶん穏やかな顔になったな、トウマ」

「……あなたが、ここに?」

「この山には、まだ捨てられぬものがある。いや……まだ、断ち切れていないのかもしれないな」

リュウゾウは、昔とは違う、疲れた眼をしていた。

トウマはその視線を受け止めながら、思った。

──これは、修断の続きなのかもしれない。
自分の中に、まだ芽吹いていない善。
かつて敵意を抱いた人と、もう一度向き合い、癒やしをもたらすという善。

だが、それは容易なことではなかった。
言葉を紡ぐだけでは届かぬ壁が、そこにあった。

山風が吹いた。
二人の間の沈黙が、冬のように冷たかった。

「また、会いましょう」
トウマは静かに言った。

「……ああ」
リュウゾウは背を向け、風の中へと去っていった。

だがその背には、かすかなためらいと、拭いきれぬ何かが、確かに宿っていた。

 

第五章「背を向けた者に灯す火」

あの日の再会以来、リュウゾウは姿を消した。
だが、どこかで見ている気配がある。
風の音に、落ち葉のざわめきに、彼の沈黙がひそんでいる気がした。

ユナの小屋で、火を囲みながらトウマは語った。

「……人の痛みに寄り添おうとするとき、自分の傷が疼きます。
だから、怖いんです。リュウゾウ兄は……僕の中に、いまも刺さっているから」

ユナは、静かに火に薪をくべながら言った。

「それでも、あなたは行くでしょう。
あなたの言葉には、火を灯す力がある。
冷たくなった心にも、種火は残っている。
それを吹き起こすのが“慈しみ”という火の技法なのだよ」

トウマは、その夜、筆を取り、手紙を書いた。

「リュウゾウ兄へ。
あなたの言葉を、ずっと待っていました。
あの時、僕もあなたに背を向けてしまった。
今、ようやく気づいたんです。あなたの苦しみは、僕の中にもあったのだと。
もしよければ、再び火を囲んで話しませんか?
言葉がなくてもかまわない。ただ、そこにあなたがいてくれれば」

そして手紙を、山道の祠にそっと置いた。
リュウゾウがかつてよく祈っていた場所だった。

数日後──

ユナの小屋に向かう道すがら、焚火の煙が上がるのをトウマは見た。
そこにリュウゾウがいた。
火の前に、無言で座り込んでいた。

トウマは近づき、黙って向かいに座った。
二人の間に火があり、風が枝を揺らしていた。

沈黙の中、やがてリュウゾウが言った。

「……あの時、俺は道を誤った。
正義の名のもとに、師に逆らい、お前を責めた。
でも……結局、自分を見失っていた。
“自分の善”がどこにあるかも、わからなかった」

トウマは、静かに火を見つめながら答えた。

「兄さん……僕も同じです。
でも今は、自分の中に芽生えつつある善を、見逃したくないんです。
あなたにも、まだそれがあると思う。
その火を……一緒に守っていけたら、うれしい」

リュウゾウの目に、光が揺れた。
それは涙ではなかった。
だが、彼の中で何かがほどけた気配がした。

火がパチリと音を立てた。

その音に乗せて、二人の心の距離がわずかに近づいた。

慈しみとは、語ることだけではない。
沈黙を分かち合うこと、同じ火に手をかざすこと──
それもまた、「修断」の一つだった。

 

第五章「背を向けた者に灯す火」

あの日の再会以来、リュウゾウは姿を消した。
だが、どこかで見ている気配がある。
風の音に、落ち葉のざわめきに、彼の沈黙がひそんでいる気がした。

ユナの小屋で、火を囲みながらトウマは語った。

「……人の痛みに寄り添おうとするとき、自分の傷が疼きます。
だから、怖いんです。リュウゾウ兄は……僕の中に、いまも刺さっているから」

ユナは、静かに火に薪をくべながら言った。

「それでも、あなたは行くでしょう。
あなたの言葉には、火を灯す力がある。
冷たくなった心にも、種火は残っている。
それを吹き起こすのが“慈しみ”という火の技法なのだよ」

トウマは、その夜、筆を取り、手紙を書いた。

「リュウゾウ兄へ。
あなたの言葉を、ずっと待っていました。
あの時、僕もあなたに背を向けてしまった。
今、ようやく気づいたんです。あなたの苦しみは、僕の中にもあったのだと。
もしよければ、再び火を囲んで話しませんか?
言葉がなくてもかまわない。ただ、そこにあなたがいてくれれば」

そして手紙を、山道の祠にそっと置いた。
リュウゾウがかつてよく祈っていた場所だった。

数日後──

ユナの小屋に向かう道すがら、焚火の煙が上がるのをトウマは見た。
そこにリュウゾウがいた。
火の前に、無言で座り込んでいた。

トウマは近づき、黙って向かいに座った。
二人の間に火があり、風が枝を揺らしていた。

沈黙の中、やがてリュウゾウが言った。

「……あの時、俺は道を誤った。
正義の名のもとに、師に逆らい、お前を責めた。
でも……結局、自分を見失っていた。
“自分の善”がどこにあるかも、わからなかった」

トウマは、静かに火を見つめながら答えた。

「兄さん……僕も同じです。
でも今は、自分の中に芽生えつつある善を、見逃したくないんです。
あなたにも、まだそれがあると思う。
その火を……一緒に守っていけたら、うれしい」

リュウゾウの目に、光が揺れた。
それは涙ではなかった。
だが、彼の中で何かがほどけた気配がした。

火がパチリと音を立てた。

その音に乗せて、二人の心の距離がわずかに近づいた。

慈しみとは、語ることだけではない。
沈黙を分かち合うこと、同じ火に手をかざすこと──
それもまた、「修断」の一つだった。

 

第六章「風の中の戒律」

山を吹き抜ける風が、季節の変わり目を告げていた。
トウマとリュウゾウは、村に向かって歩いていた。
かつて修行の場とされていたこの地に、今は一つの不穏な噂が流れていた。

──疫病が、広がり始めている。

山間の村には医者もおらず、里の者たちは恐れと偏見の中で声を失っていた。

「見舞いなど、危険だ」「感染する者を隔離せよ」
そんな声が飛び交い、やがて病人への差別と排斥が始まりつつあった。

トウマは唇を噛んだ。
かつての自分なら、ただ目を伏せて通り過ぎただろう。
だが今は、修断の道を歩む者として、退けぬ問いがあった。

──人と関わるとは、痛みを引き受けること。
──善を守るとは、誰かの孤独を見過ごさないこと。

トウマは、罹病した子供とともに閉じ込められた母親のもとを訪れた。
周囲の者は遠巻きに見ていたが、彼はただそっと戸口の前に座り、言った。

「僕は、あなたたちを独りにしません。
一緒にいます。ただそれだけしか、今はできないかもしれませんが……」

その姿を、リュウゾウは少し離れた場所から見ていた。
かつてのトウマにはなかった、静かな律(おきて)を感じた。

その夜、村の長老たちが集まり、トウマとリュウゾウを呼び出した。

「お前たちは、“修行僧”だろう? ならば、村の戒めを破るな。
感染を広げるような行為は、善ではない。
律を破れば、お前たちもこの村から追放だ」

トウマは答えた。

「私が学んできた“律”とは、人を傷つけないこと、人を恐れの中に放置しないことです。
病を防ぐための知恵と慎重さは必要です。
しかし、それが“排除”という名の悪へ変わってしまうなら……私はその律に従うことはできません」

リュウゾウは、トウマの隣に立った。
無言で、だがその姿が語っていた。

──この者の「律」を、私は信じる。

翌日から、二人は感染防止の策を講じながら、病人の世話を始めた。
道具を煮沸し、薬草を煎じ、誰よりも慎重に、誰よりも丁寧に。
それを見た若者たちが、少しずつ手伝い始めた。

風は変わった。
恐れの風から、希望の風へと。

数日後、快復した子供が笑いながらトウマの手を握った。

「ありがとう、トウマ。……お兄ちゃんみたいだ」

その言葉に、トウマの中の何かが静かに灯った。

リュウゾウはぽつりと呟いた。

「お前の律は……人を包むんだな」

トウマはうなずいた。

「でも、まだ揺らいでいます。
善を守るには、もっと深く、自分を問う必要がある気がする。
修断の道は、まだ続いています」

リュウゾウは笑った。かつての皮肉のない、初めての微笑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成仏法奥義————八科四十一道品

成仏法奥義————八科四十一道品

釈が教えた成仏法は、奇蹟を起こすためのものではない。

しかし、凡夫が成仏して仏陀になるということ自体、たいへんな奇蹟というべわざきではないか。それは、大神通力を持ってこそ、はじめてなし得る業である。平凡な人間が、平凡のままパッと仏けではない。その修行課程において、修行者は、

通力神通力大神通力

が身にそなわるのである。

成仏法奥義—————八科四十一道品

 

それは、大神通力を得て成仏するためには、アビダルマ仏教の論師たちがま

くとめた「七科三十七道品」だけでは完全ではない、ということである。

もうひとつ、絶対に必要な法がある、ということである。

わたくしは、この法を加えて、成仏法を「八科四十一道品」とする。

それは、つぎのようになる。

四念住法

四正断法

あなはなねんぼう四安那般那念法

四神足法

五根法

五力法

七覚支法

八正道法

四安那般那念法

である。

四安那般那念法は、つぎの四法から成る。

勝止息法 奇特止息法

上止息法

無上止息法

である。

四安那般那念法

四安那般那念法は、つぎの四法から成る。

勝止息法 奇特止息法

上止息法

無上止息法

である。

では、その「安那般那念法」とはどういう法なのか?

この中の、「奇特止息法」という文字に目をとめていただきたい。

「佛教語大辞典」によると、こうある。

【奇特】 特に異なっていること。不思議なこと。奇蹟。

つま今特近見店とは、顔を起こす力をあたえる特異な禅定法なのである。 このつの法は、すべて、奇蹟大神通力をあたえる特殊な法なのである。

では、その奇蹟とはなにか? 大神通力とはなんであろうか?

それは「解説力」である。

解説こと宇宙最高の奇蹟ではないのか。自分を変え、世界を変える、これ以上の奇蹟があるであろうか?

そして、この奇蹟の図録解説をなしとげる、因縁解脱力こそ仏法最高の大神通力なのである。したがって、この四つの法は、因縁解説をして成仏する大神通力をあたえる法なのである。

わたくしは、この四つの法は、四神足法の中の、「観神足法」とおなじであると考えている。というよりもら「観神足法」、あるいは「四神足法」そのものの具休的な説明・解説になっているのではないか、と思っているのである。そこで、アビダルマ仏教は、この四安那般那念法を、(わざわざ一科目立てることをせず)七科三十七道品の中に入れなかったのではないかとも考えられるが、しかし、やはりこの「科四品は、加えられなければならないものである。

それと同時に、阿含の型群が、四神足法を「一乗道」とした理由もうなずけるのではないか。

大神通力を得る禅定法

成仏法奥義————八科四十一道品

釈が教えた成仏法は、奇蹟を起こすためのものではない。

しかし、凡夫が成仏して仏陀になるということ自体、たいへんな奇蹟というべわざきではないか。それは、大神通力を持ってこそ、はじめてなし得る業である。平凡な人間が、平凡のままパッと仏陀に変身するわけではない。その修行課程において、修行者は、

通力神通力大神通力

が身にそなわるのである。

成仏法奥義—————八科四十一道品

 

それは、大神通力を得て成仏するためには、アビダルマ仏教の論師たちがま

くとめた「七科三十七道品」だけでは完全ではない、ということである。

もうひとつ、絶対に必要な法がある、ということである。

わたくしは、この法を加えて、成仏法を「八科四十一道品」とする。

それは、つぎのようになる。

Forever Love feat. respect 青山テルマ

Forever Love feat.
respect 青山テルマ

 

忘れはしないよ 二人の愛は
いつまでもここにあるよ
たそがれの空へ向け
今はgood bye

突然と現れるものなのか
一つ一つの言葉で 気付き始めるのか
どうしても忘れられない想い出と
消えず形残るものが 切なく響く

このハート潤してくれた all your love
恋しくないとは言えなくて

Wherever you are 何処にいても
No matter how far 遠くにいても
変わらない思いで 眠り I’ll dream of you
Whatever you do 何をしても
No matter how hard 辛い事も
忘れてしまうほど 愛は消えずに Forever love

僕たちの砂時計が止まるころ
砂一粒の輝きが 想い出放つ

ここから新しく描く Lonely road
君の道へと繋がるだろう

Wherever you are 何処からでも
No matter how far 遠くからでも
見守る気持ちで 君を慕うよ
Whatever you do 何をしても
No matter how hard 辛い時も
乗り越える力を 与えてくれる Forever love

枕抱きしめ顔沈めて 君のぬくもり思い出して
三年前に出会えてから 救われた日々忘れないよ
私だけ見つめてる君のsmile
隠しはしないから迷いのない想い伝えたい

Wherever you are 何処にいても
No matter how far 遠くにいても
変わらない思いで 眠り I’ll dream of you
Whatever you do 何をしても
No matter how hard 辛い事も
忘れてしまうほど 愛は消えずに Forever love