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虚空蔵菩薩

無限の智慧と慈悲の心を人々に与える菩薩

 

白い雲海の彼方に、音もなく輝く宮殿があった。
そこは形なき宇宙の蔵――すべての智慧と慈悲が眠る場所。
人々はその主を、虚空蔵菩薩と呼んでいた。
少年は、長い間、記憶の霧の中を歩いていた。
学びたいと願えば願うほど、言葉は指の間から零れ落ち、
心はいつも空虚だった。
ある夜、夢の中で、彼は剣と宝珠を携えた菩薩と出会う。
一つの顔に、二本の腕。
右手には煩悩を断つ剣、左手にはすべての願いを満たす如意宝珠。
その額には五仏宝冠が輝き、眼差しは宇宙そのもののように深かった。
「私は虚空蔵。
虚空のごとく無限なる智慧と慈悲を蔵する者。」
菩薩の声は、風のように柔らかく、雷のように力強かった。
少年はひざまずき、震える声で言った。
「どうすれば、私は真に学び、真に理解する者になれるでしょうか。」
虚空蔵菩薩は、静かに宝珠を掲げ、こう告げた。
「言葉は光であり、光は心の奥に届く。
汝、真言を唱えよ。
『オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ』
智慧と福徳は、すでに汝の内に眠っている。」
少年が唱え始めると、胸の奥で何かが目覚めた。
霧のようだった思考は澄み渡り、
断片だった知識は、一つの星座のようにつながっていく。
やがて菩薩は、さらに深い修行の道を示した。
「もし、すべての教えを瞬時に理解し、
記憶を失わぬ心を求めるなら、
『ノウボウ アキャシャ キャラバヤ オン アリキャ マリボリ ソワカ』
この真言を唱え続けるがよい。
百万遍の誓いは、百万の扉を開く。」
その言葉を聞いたとき、少年の心に一人の僧の姿が浮かんだ。
かつて、山中でただひとり、百万遍の真言を唱え続けた人物――
弘法大師空海。
彼もまた、虚空蔵菩薩のもとで、無限の智慧を授かったのだという。
「智慧は、選ばれし者のものではない。」
菩薩は静かに微笑んだ。
「願う者、歩む者、信じる者すべてに開かれている。」
少年は深く礼をし、目を閉じた。
目覚めた朝、世界は変わっていなかった。
だが、少年の内側は、まったく別の宇宙になっていた。
文字は光となり、言葉は音楽となり、
思考は静かな湖のように澄みわたっていた。
それからというもの、彼は学びの道を歩きながら、
心の中でいつも真言を唱え続けた。
オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ。
ノウボウ アキャシャ キャラバヤ オン アリキャ マリボリ ソワカ。
そして彼は知るようになる。
虚空蔵菩薩とは、遠い天上の存在ではなく、
人の心の奥に宿る、無限の蔵そのものであることを

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