UA-135459055-1

ホモ・エクセレンスの資格ライセンス

ホモ・エクセレンスの資格ライセンス

その技術は、まだ公には名を持たない。
ただ、選ばれた者たちはそれをこう呼んでいた――
ホモ・エクセレンスの資格ライセンス。
それは試験でも、血統でもない。
訓練によって、人が人を超えるための“通行証”だった。

一度、目にしたもの。
一度、耳にした言葉。
それらは、もはや記憶という領域を超え、魂の奥に刻まれる。
忘却という現象が、彼らには存在しない。
複雑な構造は、見るより先に理解される。
因果は瞬時に解体され、本質だけが静かに残る。
推理も分析も、もはや手順ではない。
それは“見える”という感覚に近かった。
言葉を介さず、思考が生まれる。
純粋思考――
概念が音になる前に、すでに創造は完了している。
もし、ヒトの平均知能を一・〇とするなら、
彼らは二・五、あるいは三・五に達するだろう。
その中でも最上位の脳は、
四次元を「理解する」のではなく、「住処」として扱う。

彼らは見る。
不可視と呼ばれてきた領域を。
赤外も、紫外も、
闇に沈んだ世界の輪郭を、当たり前のように受け取る。
彼らは聴く。
超音波のささやきを、風の一部として。
高度な知能と拡張された感覚が結びついたとき、
未来は予測ではなく、兆しとして訪れる。
それは超能力ではない。
自らの肉体と精神を、完全に統御した結果にすぎなかった。

思えば、最も恐るべき力は、
「自分を変える」能力だった。
思念ひとつで、性質を変え、
行動ひとつで、他者を動かす。
個人を越え、集団を、
やがて環境そのものを、自分の理に沿って創り変えていく。
――それが、彼らの担う能力の輪郭だった。

では、ホモ・エクセレンスとは何者か。
ホモ・サピエンス――
ほかならぬ、われわれ自身。
その延長線上に現れる、
「特別な能力を身につけた優秀なるヒト」。
ある者は、彼らをこう呼んだ。
ホモ・インテリゲンス――聡明なる未来人。

かつて、バリ大学の人類学者、
ジョルジュ・オリヴィエ教授は語った。
「未来の種属、超・ヒトは、
おそらく脳発達度係数三・九を持つだろう」
彼は続けた。
第四次元の理解。
複雑な全体を一瞬で把握する能力。
第六感の獲得。
無限に発展した道徳意識。
そして、
われわれの悟性では説明不可能な精神的特質。
――それらを備えた存在。
彼らの姿形も、行動原理も、
われわれには理解できないだろう。
なぜなら、われわれが“盲”であるのに対し、
彼らは千里眼の持ち主なのだから。

高度の知能は、
必ず高度の倫理を伴う。
彼らにとって、
いまの宗教や教義は、
かつての童話のように映るかもしれない。
神や仏を外に求める必要はなくなる。
なぜなら――
ヒトそのものが、神仏とひとしくなるからだ。
それは支配ではない。
霊性の獲得である。
無限に発展した道徳意識。
不可解と呼ばれてきた精神的特質。
それこそが、神仏の霊性にほかならない。

かつて、人類に必要なのは霊性だと説いても、
多くの者は耳を貸さなかった。
だが、時代は変わった。
危機は増大し、
文明は自らの限界に触れはじめた。
いま、
「霊性」という言葉を聞いたとき、
人々は直感的に理解する。
――それこそが、次の扉だと。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*