UA-135459055-1

守護神と共に歩む成仏の道。

夜は深まり、空には雲ひとつなく、星々が鋭い光を落と実に、何かが降りてきていた。

真輝の呼吸は次第に変わっていった。
吸う息は氷のように冷たく、吐く息は火のように熱い。
その呼吸が進むほど、体の感覚は境界を失い、まるで身体そのものが呼吸へと変わっていくかのようだった。

千導が声を低く響かせる。

「恐れるな。
今、お前に課せられているのは、受け入れるという一点のみ。
呼吸は門。
意志は灯火。
その両方が揃った者に――守護神は宿る。」

真輝の心臓が大きく跳ねた。
意識は深い湖へ沈むようでありながら、どこか極端に澄んだ静けさに満たされていく。

そして――その時だった。

背後の闇の中から、風ではない風が動いた。
空気が震え、見えない圧力が部屋いっぱいに満ちる。

蝋燭の炎が長く伸びる。
影が揺れる。
だがその影は壁に沿うだけではなかった。
――ひとつ、炎の揺らぎとは無関係の影が立ち上がっていた。

真輝の意識の内側に、声が響く。

「目を開けよ。
だが肉眼で見るな。
心の眼で視よ。」

その声は、師のものではない。
男でも女でもなく、年齢も形も超えた響きだった。

真輝はゆっくりと意識を外へ向ける。
すると影が輪郭を帯び始めた。

最初は霧。
次に波紋。
そして光へ――。

その姿は、人であり、神であり、炎であり、静寂そのものだった。
まるで古代から呼ばれ、忘れられた時代の記憶が今再び形をとって現れたようだった。

千導が厳かに語る。

「――現界せよ。
これはその身に宿るべき徒弟。
名と使命を与えよ。」

光の存在が真輝へ近づく。
その足音はない。
だが大地そのものが踏みしめられるような重みがあった。

声が再び響く。

「我は、お前の過去の業を知り、未来の歩みを護る者。
闇を断ち、迷いを燃やす剣を持つ。」

真輝の胸が熱くなる。
そこに宿るものは恐れではなく、どこか懐かしい感覚――。

まるで、長い旅路の果てに帰るべきものと再会したかのようだった。

光が真輝の額へ触れるように降りてくる。

「名を刻め。
我が名は――」

炎が大きく揺れ、風が吹き抜けた。

その瞬間、真輝の胸に響く声がひとつの言葉を落とした。

「倶利迦羅(くりから)。」

その名が告げられると同時に、光は剣となり、龍となり、炎となり、真輝の背後へ溶けるように入っていった。

呼吸が止まった。
否――止まったのではない。
呼吸そのものが「彼」と共鳴し始めたのだ。

千導はゆっくりとうなずいた。

「……これでよい。
真輝、お前は今日より、守護を持つ者となった。
だが忘れるな――守護神とは力ではない。
試練だ。」

影の中で炎がゆらめく。
そして静かに――真輝の道が始まった。

守護神と共に歩む成仏の道。
光と闇の境界を往き、魂を救う者として。

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*