UA-135459055-1

輪転生聯想法 ― 明星の覚醒

《輪転生聯想法 ― 明星の覚醒》

「そうか!」

私は、力いっぱい膝を打った。
その瞬間、胸の奥にひとつの光が閃いた。
「そうか……これが、明星だったのか!」

叫びとともに、私の視界の中で何かが爆ぜた。
それは比喩ではない。本当に、目から火が出たのだ。
刹那、鼻をつく焦げたような匂い――どこか懐かしい、剣道場の面金の中で嗅いだあの匂い。
ブーンという振動とともに、光が視野の奥を走り抜けた。

外から何かが頭を打ったわけではない。
それなのに、私の脳の内部で――まるで雷が走ったような衝撃。
あの火は、確かに内側から生まれたのだ。

私は再び姿勢を正し、呼吸を調えた。
頭の角度をわずかに変え、ある“定”の形に入っていく。
息を数え、意識を一点に沈める――すると。

何の予兆もなく、また同じ場所に火が灯った。
そして同時に、頭の深奥からかすかな音響が響きはじめた。
「来る」と思った瞬間には、もうその光があった。
だが、今度は痛みも恐怖もなかった。ただ、静謐な震えだけが残った。

私の頭の内奥に、明星がまたたいていた。
その中心から、言葉にならぬ喜びが溢れ出していた。

――まちがいない。脳の深部で、何かが起こっている。
しかしそれは、単なる錯覚ではない。
私の理解を超えた、化学的な異変だった。

それは「視床下部」――心と身体をつなぐ間脳の要。
そこに、未知の反応が起きていた。
私は古代ヨーガの秘法をもとに、自らの姿勢とムドラーを組み合わせ、
百日のあいだ、その一点に思念と圧力を集中させていたのだ。

精神の炎と、肉体の緊張。
それらが絡み合い、ついに視床下部の神経を震わせたのだろう。
神経液が変化し、分泌液が混ざり合い、
脳の奥で小さな雷鳴のような化学反応を起こした。

あの閃光は、その衝撃が視床の神経を打ち、網膜に走った電の火だった。
そしてその瞬間、私の中で**新たな神経の結び目(シナプス)**が生まれた。

それ以来、私は思念を向けるだけで、いつでも脳内に明星を輝かせることができるようになった。
脳は変わった。意識の構造そのものが変わったのだ。

求聞持聡明法――それは単なる呪法ではなかった。
それは、脳の内部における化学的覚醒、
輪転する生命の回路が新たに開く、
「輪転生」の法であった。

 

脳という宇宙の祭壇 ― 神経と霊の交響

私は、光が去ったあとの沈黙の中に座っていた。
視界は暗く、音は遠く、ただ自分の呼吸の音だけが聴こえる。
だが、その呼吸はもう以前の呼吸ではなかった。
吸うたびに、微細な電流が頭の中心を通り抜け、
吐くたびに、身体の輪郭がぼやけていく。

脳が、音を発している。
耳ではなく、脳そのものが鳴っているのだ。
「視床下部共鳴音」――そう名づけてもいい。
低く、しかし澄んだ音。まるで地球の自転音が、個の内部に転写されたような。

私は机にノートを開いた。
「視床下部は、神経と内分泌の交差点である」
そう書き出して、しばらくペンを止めた。
この場所こそ、古代が“サハスラーラ”と呼んだ領域ではないのか?
それは千の花弁を持つ蓮――すなわち、神経の花。
科学の言葉でいえば、シナプスの曼荼羅。

光は物理現象だった。
だがその発火は、同時に意識の拡張でもあった。
私はその両方を観察者として体験していた。
脳という器官の中で、
電気と霊が共鳴する一点を発見したのだ。

やがて、私は一つの仮説に辿り着いた。
――人間の脳は、宇宙の構造を模した“縮図”ではないか?
視床下部が銀河の中心にあたるなら、
松果腺は太陽であり、脳幹は惑星軌道を支える軸となる。
そして、そこを流れる神経電流こそ、プラーナ(生命エネルギー)。

私はノートの端に書きつけた。

「神経の発火は祈りであり、祈りは神経の再配線である。」

その夜、私は新しい実験を始めた。
静座し、呼吸を微細に刻む。
一吸一放のたびに、心拍と電位が同期していく。
ふと、脳の中に柔らかな光が満ちた。
思考は止まり、ただ光の粒子だけが、神経の間を泳いでいた。

その瞬間、私は理解した。
「意識とは、脳が宇宙を思い出す行為である」と。

私は再び明星を見た。
だが、今度の光は以前より穏やかだった。
痛みも衝撃もなく、ただ優しく脳の中心に咲いた。
視床下部――その小さな一点は、
いまや私の内にある宇宙の祭壇となっていた。

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*