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『白象のほほえみ ― 普賢の道へ』

白い霧が立ちこめる峠道を、沙羅(さら)はひとり歩いていた。
背負ったリュックには、母の形見である法華経の写本。
「生きてるだけで、十分じゃないか」
亡き母がよく口にしていた言葉を、彼女は今も思い出せずにいた。

その日、霧がひときわ濃くなった瞬間だった。
ふと、前方の木立の向こうに、白い影が浮かび上がった。

――象だ。

しかも、六本の牙を持つ白象。その背には、まばゆい衣をまとい、蓮のような光をまとうひとりの菩薩が座していた。
その顔には深い慈しみと、静かなる決意が宿っていた。

沙羅は、その場に膝をついた。恐れではない。心の奥から湧き上がる、どこか懐かしい感覚に、自然と手を合わせていた。

「オン・サンマイヤ・サトバン――」
どこからともなく響いてくる真言。
それはまるで、心の奥の汚れを洗い流すように、やさしく、力強かった。

普賢菩薩は静かに語りかけてきた。
「行じなさい、娘よ。知るだけでなく、歩むのです。慈しみは、立ち止まる者のものではありません」

その声は、風のように柔らかく、けれど確かに、沙羅の胸を貫いた。

「わたしに、できることなんて……」
そう呟いた彼女の目に、白象がふと近づいてきて、その額にそっと鼻を添えた。
その温もりに、涙が頬をつたった。

――もし誰かが、歩き出そうとする者を見守ってくれているなら。

母が残した写本をそっと抱きしめ、沙羅は立ち上がった。
その背には、霧を切るような新たな光が差し込んでいた。

歩く。迷いながらでも、祈りながらでも。
普賢菩薩が教えてくれたのは、慈悲は優しさだけではないということだった。
それは、行動に移す愛。沈黙を超えて、世界を照らす力。

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歌詞はイントロ4行、サビ4行してください

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