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 四神足法 ― 仏陀に至る道

 誰も知らぬ山奥、霧深き庵の中で、ひとりの修行者が静かに坐していた。時の流れさえ忘れたその姿は、まるで岩に根を下ろした古樹のように動かない。彼のまなざしは閉じられたまま、しかしその奥では燃えるような問いが灯っていた。

 ――苦しみは、なぜ尽きぬのか。
――迷いは、なぜ繰り返すのか。

 古より伝わる一つの法がある。
四神足法(しじんそくほう)――それは、ただの瞑想や技ではなかった。生命の根源にまで及び、苦悩の因縁を根こそぎ断ち切る、仏陀への道。選ばれし者がその四つの門をくぐり抜けたとき、彼は覚者ではなく、“仏陀に準ずる存在”、すなわち大聖者となる。

 だが、その道は決して優しくはない。
肉体を鍛え尽くし、精神を燃やし、魂までも浄めなければならぬ、過酷きわまりない修行であった。

 人の欲を燃料に変える欲神足(よくじんそく)
行動と集中を極限まで高める勤神足(ごんじんそく)
心の底を見つめ抜く心神足(しんじんそく)
そして、真理を観るまなざし――観神足(かんじんそく)

 この四つを成就したとき、人は神通を得る。仏のごとき力と智慧を、その身に宿すという。

 修行者は知っていた。
この道に、半端な心で挑むことはできない。
だが、それでも進まねばならぬ。人々の苦しみを、その根から断つために――。

 夜明け前、闇に沈む山の空気のなかで、彼の吐く白い息が、ひとすじの光となって静かに揺れていた。

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