第四章 ブ(bu)の封印
十八の手──准胝
東の果てにあると伝えられる「火の谷」──
そこには、かつて天界より堕ちた者が封じられていた。
シィヤは炎に包まれたその地へと足を踏み入れた。
盲目であるはずの彼女の足取りは、なぜか迷いがない。
まるで、見えぬ何かに導かれているかのように。
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火の谷の入り口には、巨大な石柱がそびえ立っていた。
その柱には、古代語でこう刻まれている。
「ここに慈悲の種子眠るも、慈悲なき者 入るを許さず」
シィヤは手をかざし、静かに呟いた。
「慈悲とは、他者を許すこと……ではなく、共に傷つく覚悟」
その言葉に呼応するように、石柱がひとりでに割れ、炎の回廊が現れた。
彼女の試練が、始まる。
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谷の奥、紅蓮の空のもとに立つのは、かつて天界で美と力を誇った天人──
だが今はその身を焼き、闇の契りを結んだ存在。名はラクシャーサ。
「……誰だ? この谷に入るとは」
「わたしは、シィヤ。准胝の導きにより、この地に来ました」
「チュンディーだと? ならば見せてみろ。慈悲とは、ただの偽善ではないと」
ラクシャーサは燃える剣を抜き、シィヤに向かって振り下ろす。
だがその瞬間、彼女はその刃を恐れもせずに抱きしめた。
炎が身を焦がす。それでも彼女は叫んだ。
「あなたの苦しみを、わたしが引き受ける!」
ラクシャーサの剣が止まった。
その目に宿っていた狂気が、ゆっくりと和らいでいく。
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やがて、炎の地に蓮の光が咲いた。
空に浮かぶ十八の手──准胝の幻影が現れ、言葉を告げる。
「第一の種子、汝の内に芽吹け」
シィヤの胸に宿る黒い印が、今度は柔らかな金に染まる。
それが、慈悲の種子の証だった。
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ラクシャーサは沈黙の中に膝をつき、目を閉じた。
「……我は敗れたのではない。許されたのだな」
「苦しみの中にある者を、敵とは呼ばない」
シィヤはそう答え、炎の谷を後にする。
そして、次の地へ──
そこには智慧の種子を守る、無知と執着に囚われた古き王が待ち受けている。
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准胝仏母の声が、静かに響いた。
「七つのブ(bu)、すべてが揃う時、曼荼羅は再び回転を始める」
だがその背後で、もうひとつの力──
曼荼羅を断ち切らんとする「虚無の意志」が、密かに胎動を始めていた。
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歌詞はイントロ4行、サビ4行してください




