彼の背骨の最下端、骨盤の奥深く──骨低骨と呼ばれるその場所には、知られざる神秘の門があった。そこから始まる中空の道、スシュムナー管。まるで天と地をつなぐ透明な柱のように、その管は脊柱の中を静かに走り、脳の奥深く、無意識の領域へと届いていた。
だが、スシュムナー管はただの通路ではない。その内側には「ヴァジリニー」と呼ばれる気の流れ道がさらに存在し、そしてそのまた内側には、肉眼では決して見ることのできない、クモの糸のように繊細な「チトリニ」と名づけられた気道が隠されていた。三重の道は、眠れる龍を目覚めさせるための神聖な経路だった。
この秘められた構造を用いるのが、「スシュムナー、ピンガラ、イダー」という三つの気道を活性化させる法、すなわちクンダリニー・ヨーガである。
「クンダリニー」──それは、すべての人間の内にひそむ、渦巻く生命の根源力。その力が目覚めたとき、ひとは己を超え、常人には至れぬ高次の精神領域へと旅立つ。
彼は今、静かに目を閉じ、その旅の一歩を踏み出そうとしていた。背骨の奥に、かすかな振動が生まれる──それは、長き眠りから目覚めようとするクンダリニーの前兆だった。




