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雪の華

雪の華

舗道に長く伸びた影が、夕闇に溶け込んでいく。
街灯の明かりがともりはじめたばかりの街を、彼と私は並んで歩いていた。手をつなぎ、言葉少なに、それでも確かな温もりを確かめながら。

「このまま、ずっとそばにいられたらいいのにね」
彼がぽつりとつぶやいた。
その声が優しくて、涙がこぼれそうになるのをこらえた。

風が頬をなでるように冷たくなって、私は思わずマフラーに顔をうずめた。どこか懐かしい冬の匂いがした。
そう、この季節がまた巡ってくる。君と寄り添える季節が――。

空から静かに、白いかけらが落ちてきた。
今年、最初の雪だった。
私たちは足を止めて、ただ見上げた。ふたりで。寄り添って。
世界が静けさに包まれ、何もかもが洗い流されていくような、あの一瞬。
私はそのとき、胸の奥から溢れ出す幸せを、確かに感じていた。

「私ね、甘えてるんじゃないんだ」
彼の顔を見ずに言った。
「ただ、本当に…心からあなたを愛してる」

彼は黙って私の手を強く握り返した。

彼がそばにいるだけで、どんな困難も乗り越えられる気がした。
こんな日々が、ずっと続いていくように――私は、祈った。

その夜、風が窓を揺らし、街を包む夜がふたりをさらに近づけた。
私は誓った。
どんな悲しみにも、彼が笑顔を取り戻せるように、私がそばにいると。

雪は止むことなく降り続いていた。
白い花びらのような雪の華が、窓の外の世界を静かに染めていく。
その景色を見ながら、私は初めて知った。
「誰かのために何かをしたい」と心から思うこと――
それが“愛”というものなのだと。

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