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不動明王の焔

不動明王の焔

それは、古から語り継がれる神秘の存在。不動明王――動かざる守護者の名を冠するその姿は、どこか畏怖を誘いながらも温かな慈悲を秘めている。

灼熱の炎が背後で踊り狂い、その中心に佇む不動明王の眼差しは、まるで天地そのものを睨むかのように力強い。右目は天を、左目は地を射抜き、口元からは鋭い牙が上下一対で突き出していた。片手には龍の巻きついた剣、もう片手には煩悩を縛るための縄――羂索(けんじゃく)。どちらもその存在が纏う威厳を、言葉以上に雄弁に物語っていた。

「ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン」

その真言が唱えられるたび、無数の邪気が掻き消されていくような気配が漂う。不動明王は破壊と再生を司る存在。悪を容赦なく滅ぼし、混沌を平穏へと導くのだ。それでいて、仏道に入る者に対しては慈愛をもって守り抜く。その姿は、まさにインド神話のシヴァ神の面影を彷彿とさせる。破壊と創造――相反する性質を一身に宿しながらも、どちらも揺るがぬ意思で統べるその姿は、まさに「不動」の名にふさわしい。

日本では「お不動様」と親しまれ、庶民から戦国の将たちまで幅広い信仰を集めてきた。そのご利益は多岐にわたる。除災招福、悪魔退散、修行者守護、さらには現世利益さえも――すべてを求める者に力を授け、道を示す。酉年生まれの守り本尊として、彼らの厄を払い、願いを叶えるともいわれている。

五大明王の中心として、不動明王を取り巻く四体の明王――降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉。それぞれが東西南北を守り、不動を取り巻く結界のごとく配置される。その側には二人の童子、矜迦羅(こんがら)と制多迦(せいたか)が侍り、主の命を待つ。

夜の寺院。蝋燭の揺れる炎に照らされる不動明王像を前に、一人の修行僧が跪いていた。その瞳には決意の光が宿り、口元からは繰り返し真言が漏れる。

「ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン――」

怒りの表情を浮かべた像の奥から、微かに優しげな気配が漂うように

 

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