心の革命想
― 呼吸の謎 ―
夜は深かった。
山の庵の中で、一本の蝋燭が静かに揺れていた。
外では風が杉の枝を揺らし、遠くの谷から水の音が聞こえている。
その夜、私は坐していた。
長いあいだ追い求めてきた問いがあった。
仏陀釈尊が阿含経典で説いた呼吸法とは、いったいどのようなものなのか。
それは単なる呼吸ではないはずだ。
釈尊は、呼吸を通して心を統御し、ついには悟りへと至った。
その秘密は、どこにあるのか。
私はそれを知りたかった。
その頃、私はクンダリニー・ヨーガを修練していた。
静かに呼吸を整え、意識を内側へ沈めていく。
深く、さらに深く。
やがて呼吸は細くなり、
心は静かな湖のように澄みわたる。
そのときだった。
ふっと、ある感覚が生まれた。
私は、体のある一点に、生気を集中していた。
生命の気を、ゆっくりとそこへ送りこみ、
それを凝縮していく。
それは、極度にむずかしい技法だった。
わずかな注意の乱れも許されない。
髪の毛一本ほどの隙でも、集中は崩れてしまう。
しかし、その夜、
その一点に意識を凝縮しているとき――
突然、ひらめいた。
「あっ!」
胸の奥に、雷のような直感が走った。
なんと……
私は心の中で叫んだ。
「仏陀の教えていることを、いま、私はやっているではないか!」
そうだ。
これだ。
私は歓喜に震えた。
そのまま定に入ったまま、
私は次々と、釈尊の教えた呼吸法を試みていった。
もちろん、そのとき、
すべてが理解できたわけではない。
しかし、確信した。
仏陀の呼吸法の核心を、私はつかんだ。
釈尊は、
後代に発展した
クンダリニー・ヨーガの原点となるものを
すでに教えていたのだ。
体の中の「力の泉」
クンダリニー・ヨーガは、古来、
超人的能力を生み出す修行として知られている。
その秘密はどこにあるのか。
それは――
人間の体の中にある
**七つの「力の泉」**である。
ヨーガでは、それを
チャクラ
と呼ぶ。
長いあいだ、チャクラは神秘的な存在とされてきた。
しかし近代の生理学は、興味深い事実を明らかにした。
チャクラの位置は、
すべてホルモンを分泌する内分泌腺と一致している
のである。
つまり――
チャクラとは、
人間の生命エネルギーと
ホルモンの働きが交差する
生命の中心点
なのである。
クンダリニー・ヨーガの熟達者は、
特殊な修行によってこのチャクラを刺激し、
普通の人間には現れない力を発現させる。
では、その特殊な修行とは何か。
私は気づいた。
それこそが――
仏陀釈尊の「特殊な呼吸法」だったのである。
仏陀の呼吸法
釈尊の呼吸法の特徴は、
二つの言葉に集約されている。
行息
止息
である。
行息
これは、
体の中で
気息を巡らせること。
つまり、
生命の気を
体の特定の場所へ送り、
それを次々と移していく。
では、その特定の場所とは何か。
それが――
チャクラである。
そしてもう一つ。
止息
これは、
気息をある場所に止めて
念を集中すること。
生命の気を
一点に凝縮する。
まさに、
私がその夜体験していた
あの集中である。
私は思った。
「そうか……」
釈尊は、
人間の体の中にある
生命エネルギーの泉を
呼吸によって覚醒させる
方法を教えていたのだ。
そして、修行はさらに深くなる
もし、チャクラが完全に覚醒したならば
人間はどうなるのか。
古来のヨーガは、こう伝えている。
あるチャクラは
圧倒的な生命力を生み、
あるチャクラは
恐れを知らぬ勇気を生み、
あるチャクラは
身体のすべての器官を統御する力を与える。
そして――
最上のチャクラが開くとき。
頭の中に
光明が現れる。
それは
覚醒の光
である。
古代の賢者たちは、
それをこう呼んだ。
「頭頂の光明」
そして、その光が完全に開くとき。
人は――
仏陀の覚性に到達する。
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