UA-135459055-1

叡智とは霊性に根ざしたもの

叡智とは霊性に根ざしたもの

 

その日、灰色の雲が都市の上空を覆っていた。
人々は相変わらず通勤電車に揺られ、昨日のつづきが今日であり、今日のつづきが明日だと、疑うことなく信じていた。
――だが、それはもう通用しない。
「昨日と今日のあいだには、深い断層が口をあけている。
今日と明日のあいだには、越えがたい亀裂が走っている。」
静かな声でそう語る老学者の言葉は、聴衆の心を冷たい水で打つようだった。
「なぜか?
それは、地球が、もはや耐えられなくなっているからです。」
スクリーンには、枯れ果てた大地、暴走する市場、武装する国家の映像が映し出された。資源は貪り尽くされ、経済は摩擦を起こし、宗教と民族の対立は火に油を注ぐ。
このまま進めば、世界は一瞬でカタストロフィーに突入する――誰の目にも明らかだった。
だが、危機はそれだけではなかった。
「科学と技術――とくにエレクトロニクスの進歩は、もはや人間の歩みをはるかに追い越しました。」
彼は、人工知能が制御する都市、遺伝子を書き換える医療、意識を操作する技術について語った。
それらは人類に無限の可能性を与える一方で、耐えられない格差と断絶を生み出していた。
適応できる者は少数。
多くの者は脱落し、人格を失い、底辺へと落ちていく。
「国家も社会も、この負荷に耐えきれず、やがて崩壊の縁に立つでしょう。」
沈黙が会場を包んだ。
やがて老学者は、ゆっくりと視線を上げ、こう言った。
「二十一世紀の世界は、極度に発達したエレクトロニクスと、極度に発達した“霊的感性”を持つ人間によってのみ、維持される世界となるでしょう。」
「霊的感性……?」
誰かが小さく呟いた。
「それは、単なる知識でも、技術でもありません。
人間を超えた感性、知性、徳性を備えた存在――それが、これからの“人”なのです。」
彼は一瞬、目を閉じた。
「ボタン一つで世界を破壊できる時代に、
キー一つで他者の脳を操作できる時代に、
未成熟な精神がその力を持てば、世界は終わります。」
そして、静かに問いかけた。
「……君の備えは、できているか?」
誰も答えられなかった。
老学者は続けた。
「もう、時代は始まっている。
君たちは、できるかぎり高い霊的世界に身を置き、純粋な霊的バイブレーションに触れ続けなければならない。」
「叡智とは何か――
それは、知識の集積ではありません。
応用力でもありません。」
彼の声は、確信に満ちていた。
「叡智とは、霊性に根ざしたものです。
しかし人類はいま、その霊性を失ってしまった。
叡智を失ったからこそ、我々はこの危機を招いたのです。」
彼は、深く息を吸った。
「だから、私は悲観的です。
霊性を失った人類が、この危機を乗り越えることは、きわめて困難でしょう。」
会場の空気が、さらに重くなる。
だが、老学者は、希望を捨ててはいなかった。
「ただ一つ、道があるとすれば――
それは、シャカの成仏法によって創造された“純粋な霊的世界”に帰ることです。」
「ブッダの成仏法には、人間を超えた能力――霊的能力を身につける技法が、確かに存在します。」
彼の眼差しは、まるで遥か彼方の光を見つめているかのようだった。
「叡智とは、霊性に根ざしたものでなければならない。
それ以外の叡智は、もはや叡智とは呼べないのです。」
その言葉は、聴衆一人ひとりの胸に、静かに、しかし確かに刻み込まれていった。
――世界は、いま、二つの道の分岐点に立っている。
機械の暴走か、魂の覚醒か。
そしてその選択は、他ならぬ「君」に委ねられているのだった。

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*