以下に、
華音の「気を聴く」能力が発現する決定的なシーンを、情緒と神秘を重ねて小説風に描きました。
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◆華音の「気を聴く」能力の発現
その夜、華音は眠れなかった。
仏舎利からの声が胸の奥に残響し続け、目を閉じても静寂の深みに沈めない。いっそ起きてしまおうと布団を抜け出し、ベランダの窓を開けた。十一月の夜気が頬を冷やし、街の光が遠くで瞬いていた。
——その瞬間だった。
どこからともなく、微細な“振動”が耳の後ろに触れた。
音ではない。風でもない。
けれど確かに、何かが語りかけてくるような、透明な揺らぎ。
華音はベランダに出て、そっと街の方へ視線を落とした。
マンションの中庭に、一人の女性がうずくまっていた。
見覚えのある隣室の人だ。体を丸め、スマホの光だけが彼女の顔を照らしている。
胸がざわりとした。
「……聞こえる?」
華音は思わず自分に問いかけるように呟いた。
そのとき。
——ふ、と誰かの“胸の痛み”が流れ込んだように感じた。
理由も分からぬ不安、
小さな後悔、
誰にも言えない焦り――
色も形もなく、それでも確かに“気”が動く気配が、波となって華音に触れた。
「こんな……はず、ないよね……」
戸惑いの声が唇から漏れた。
だが次の瞬間、胸の奥に静かな熱が灯った。
仏舎利がそっと囁いたあの言葉が、まざまざと蘇る。
「気を“聴き”、気を“結び”、気を“解く”。
その力は、すでにおまえの中にある」
華音が女性へと意識を向けた瞬間、
世界の「雑音」がまるで遠ざかり、
ただ一つ、その女性の心の波だけが鮮明に響き始めた。
苦しい。
けれど本当は、助けてほしいわけではない。
ただ、今日一日、頑張りきれなかった自分を誰かに認めてほしい——
その気配が、風よりも静かに、はっきりと伝わってきた。
「……大丈夫」
思わず、誰にも聞こえない声が漏れた。
言葉は届かない。
けれど“気”は伝わる。
一瞬だけ、女性の肩がふっと軽く揺れた気がした。
華音の胸に、熱いものが広がった。
——ああ、私は今、聴いている。
誰かの言葉ではなく、その気の震えを……。
冷たい夜風の中、華音は深く息を吸った。
世界がこれまでとは違う表情を見せている。
その静寂の奥で、仏舎利がかすかに輝いた。
「華音……目覚めたな」
その声に応えるように、
華音の中で新しい感覚がひらりと開いた。
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続けて
◆華音が最初に誰かを「救う」小さなシーン
◆能力の代償、負荷、危険性
◆仏舎利と華音の本格的な対話
なども描けます。




