七覚支編・序章
「風が止み、光が満ちる――覚者への門前」**
山の稜線に、朝日がまだ届かない。
世界が息をひそめるような静寂の中、トウマは岩場に座していた。
四神足を成し遂げた夜から、彼の内側では何かが変わった。
胸に宿った光は弱まることなく、逆に“中心へと収束”していく。
師は言った。
> 「四神足は、悟りへ踏み出す“準備”。
七覚支こそ、悟りの“道”そのものだ。」
そして今朝、師はただ一言だけを残して去った。
> 「風が止むとき、始まりが現れる。」
その言葉の意味を、トウマはまだ理解できない。
だが――
この世界が“何かを待っている”気配だけは、肌で感じていた。
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◆1 風が止む
ふいに、山を渡る風がぴたりと止まった。
葉のざわめきも、鳥の声も、人里からの物音さえも消える。
音が消えた瞬間、世界の色が一段深く沈み、
すべてが“トウマの呼吸に合わせて”動いているかのようだった。
そのとき。
胸の中心の光が、まるで誰かに応えるように淡く脈動した。
四神足で得た“観神足の光”が、ゆっくりと頭頂へ昇り、
眉間、喉、心臓、臍、丹田――
すべてのチャクラを通過しながら、静かに点火していく。
――世界が観られている。
そう感じた。
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◆2 七覚支の“気配”
突然、足元から大地がほんのわずか震えた。
地震ではない。
世界そのものが“呼吸を変えた”としか表現できない震えだった。
そして、山の向こうから声が届いた。
声というより、心を直撃する波動だった。
> 『念(サティ)より始まる。
迷いを照らす“光の七段階”が、汝を待つ。』
“七段階”――トウマは息を呑む。
念・択法・精進・喜・軽安・定・捨
――これが七覚支。
四神足のように“能力の修行”ではない。
七覚支は、心が悟りへと直進するための“純粋な覚りの力”。
この道へ入れば、もう後戻りはできない。
その緊張と畏れの狭間で、トウマは立ち上がった。
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◆3 道が“開く”
山の岩肌が、ゆっくりと光を帯びはじめた。
ひと筋の白い道が、トウマの足元から延び、
誰もいない山中をまっすぐ天へ向かって伸びていく。
その光は、四神足で見た“千弁蓮の白光”と同じ色だった。
すべての修行が、ここへ繋がっていたのだ。
胸の奥で、熱い何かが波打つ。
> 「七覚支に…入る。」
トウマは呟き、光の道へ足を踏み出した。
世界が動き出し、風が吹く。
だが、その風はもう“ただの風”ではなかった。
風そのものが、トウマに智慧を授けている――
そんな感覚があった。
こうして、トウマは“覚者の七段階”の第一歩へ足を踏み入れる。
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