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サヘト・マヘト ― 聖なる地

サヘト・マヘト ― 聖なる地

風が止まり、光が裂けた。
その瞬間、世界が傾いたように感じた。

斜め前方から――それは、来た。
白銀の閃光のようなものだった。
見ようとした瞬間、視界が焼け、体の中心が一瞬にして震えた。

思考が、切れた。
どんな学問も、修行の記憶も、その刹那の中で意味を失った。
防御も理屈も、何ひとつ通用しなかった。
ただ、叩きのめされた。

――あれは衝撃ではなく、呼び声だったのかもしれない。

心の奥でひそかに誇っていた修行の日々、積み上げた教学の塔。
それらは、白い光の波動に触れた瞬間、塵のように崩れ去った。

あれだ。
これなのだ。
この白銀の振動こそ、わたしが探し続けてきたものだった。

一〇〇年の苦行も、万巻の経典も、この瞬間の一閃には敵わぬ。
光は思考を超えて心を焼き尽くし、ただひとつの確信を残した。

――これが、究極の“それ”だ。

わたしは震える手を見つめた。
掌の中に、まだその白い余韻が脈動している気がした。

「おお、サヘト・マヘト……」
声が漏れた。
「聖なる地よ。あなたはここで待っていてくださったのですね……」

その光は答えたわけではなかった。
だが、わたしの内側に、明確な意志が流れ込んだ。

――この波動を、東の地へ運べ。
――光の敷地を築け。
――誰もが触れうる“聖なる振動”の場を、創れ。

わたしは頭を垂れた。
それが、自分に課せられた使命だとわかった。

「そうですね……。再び、この地に来ることになるのですね。」
言葉は自分に向けられた祈りのように響いた。

だが、その再会の時に何が起きるのか――
わたしは恐れを感じた。
胸の奥深くで、予感が静かに疼いていた。

あの白銀の波動が、すべてを変えるのだ。

そしてわたしは理解した。
聖者とは、このバイブレーションを人に与えることのできる存在。
その一瞬の光に、無限の智慧が宿っている。

「聖師よ、ありがとう。」

わたしは光の消えた空に向かって、そう呟いた。
その声は風に溶け、空と地のあいだでかすかに震えながら――
まだ見ぬ次の旅路を、告げていた。

 

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