愛染明王
愛染明王(あいぜんみょうおう)とは?
仏教では愛欲は煩悩の1つであり、煩悩を捨てることが悟りを開く道であるとされていました。しかし密教では「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」という煩悩があるからこそ、人々から悟りを求める心が生まれると考えられています。その教えを象徴したのが愛染明王であり、愛欲・煩悩を悟りを求める心に導き、様々な悩みを救ってくれるとされています。
ちなみに戦国武将・直江兼継の頭兜には「愛」の文字の前立てがあることで有名です。「愛」の1字は愛染明王から取ったとする説があります。
ご利益
良縁、結婚成就、夫婦円満、無病息災、延命、戦勝、染物屋・水商売守護のご利益があるとされています。
愛染明王(あいぜんみょうおう)の像容
全身赤色で、3つの目に6本の手があるのが一般的です。西洋の愛の神・キューピッドと同じで弓矢を持っています。
有名寺院と像
・奈良県:西大寺
・京都府:仁和寺
・和歌山県:金剛峯寺
愛染明王(あいぜんみょうおう)の真言
オン・マカラギャ・バザロウシュニシャ・バザラサトバ・ジャクウン・バンコク
愛染明王(あいぜんみょうおう)
- ご利益・役割: 縁結び、夫婦和合、人間関係の調和、子宝など、愛情や人間関係にまつわる「敬愛」の願いを叶えるとされます。
- 姿: 逆立てた髪と赤く染まった肌を持ち、六本の手で弓を持つなど、魅惑的な姿をしています。
- 象徴: 衆生の愛欲と煩悩。
愛染明王(あいぜんみょうおう 梵: rāgarāja[1])は、仏教の信仰対象であり、密教特有の憤怒相を主とする尊格である明王の一つ。愛染王とも[1]。
概説
いわゆる愛染明王の姿の特徴は、一面三目・六臂で、頭上には獅子の冠を頂き、冠の上には五鈷鉤が突き出ていて、その身は赤色で宝瓶の上にある紅蓮の蓮華座に、日輪を背にして座っている。これらの相が示すその象徴的な意味は以下のようになる。[10]
- 燃え盛る日輪を「織盛日輪」と言い、日輪は仏のもつ無上の浄菩提心を表し、燃え盛る炎は智火が煩悩に基づく執着や愛欲をことごとく焼き尽くし、その「愛染三昧」の禅定が不退転となる仏の勇猛心であることを表している。
- 頭上に獅子の冠を頂き、髪の毛を逆立てて怒髪天を突くさまを表すのは、百獣の王である獅子が吼えるとあらゆる猛獣もすぐに静かになる譬えのように、憤怒の怒りの相と獅子吼によって諸々の怨敵を降伏して、一切衆生を救済することを表している。
- 冠の上に五鈷鉤が突き出ているのは、衆生の本有(ほんぬ)の五智を呼び覚まして、邪欲を捨てさせて正しい方向へと導くことを意味し、愛染明王の大愛[注 5]が衆生の心に染み入り、仏法の真実を体得せしめることを表している。
- 一面三目で身体が赤色であり、その身を五色の華鬘で荘厳する点は、三つの眼は法身と般若と解脱を意味し、世俗面においては仁愛と知恵と勇気の三つの徳を表す。身体が赤く輝いているのは、愛染明王の大愛と大慈悲とがその身体からあふれ出ていることを意味し、五色の華鬘でその身を荘厳するのは、五智如来の持つ大悲の徳を愛染明王もまたその身に兼ね備えていることを意味し、両耳の横から伸びる天帯[注 6]は、「王三昧」に安住して如来の大法である真理の教えを聞くことを表している。
- 六臂として手が六本あるのは、六道輪廻の衆生を救う意味をもつ。また、左右の第一手は二つで「息災」を表していて、左手の五鈷鈴は、般若の智恵の音と響きにより衆生を驚愕させて、夢の如きこの世の迷いから覚醒させることを表し、右手の五鈷杵は、衆生に本有の五智を理解し体得させて、愛染明王の覚りへと到達せしめることを表している。[11]
- 左右の第二手は二つで「敬愛」と「融和」とを表していて、左手の弓と右手の矢(箭)は、二つで一つの働きをするので、この世の人々が互いに協力して敬愛と和合の精神を重んじ、仏の教えを実践する菩薩としての円満な境地に至ることを意味している。また、愛染明王の弓矢は、大悲の矢によって衆生の心にある差別や憎しみの種を射落とし、菩提心に安住せしめることを意味し、そして矢は放たれるとすぐに目標に到達することから、愛染明王への降魔や除災、男女の縁結び[12]における祈念の効果が早く現れることをも表している。
- 左右の第三手は二つで人生の迷いや煩悩による苦しみの世界を打ち払う「増益」と「降伏」とを表していて、左手に拳を握るのは、その手の中に摩尼宝珠を隠し持っていて、これは衆生が求めるあらゆる宝と財産や、生命を育むことを意味していて、右手の赤い未敷蓮華(みふれんげ)は、それらの衆生の財産や生命を奪おうとする「四魔」[注 7][14]に対して、大悲の鞭を打ち振るい、魔を調伏することを表している。
- 愛染明王が座っている紅蓮の蓮華座は、「愛染三昧」の瞑想から生じる大愛の境地を実現させた密教的な極楽浄土を意味していて、その下にある宝瓶は、仏法の無限の宝である三宝を醸し、経と律と論の三蔵を蔵することを表している。また、その周囲に宝珠や花弁が乱舞するのは、愛染明王が
愛染明王十二大願
更に、愛染明王は一切衆生を諸々の苦悩から救うために十二の広大な誓願を発しているとされ、その内容は以下のようになる。[15]
- 智慧の弓と方便の矢を以って、衆生に愛と尊敬の心を与えて、幸運を授ける。
- 悪しき心を加持して善因へと転換し、衆生に善果を得せしめる。
- 貪り・怒り・愚かさの三毒の煩悩を打ち砕いて、心を浄化し、浄信(菩提心)を起こさしめる。
- 衆生の諸々の邪まな心や、驕慢の心を離れさせて、「正見」へと向かわせる。
- 他人との争いごとの悪縁を断じて、安穏に暮らせるようにする。
- 諸々の病苦や、天災の苦難を取り除いて、信心する人の天寿を全うさせる。
- 貧困や飢餓の苦悩を取り除いて、無量の福徳を与える。
- 悪魔や鬼神・邪神による苦しみや、厄(やく)を払って、安楽に暮らせるようにする。
- 子孫の繁栄と、家運の上昇、信心する人の一家を守って、幸福の縁をもたらす。
- 前世の悪業(カルマ)の報いを浄化するだけでなく、信心する人を死後に極楽へ往生させる。
- 女性に善き愛を与えて良い縁を結び、結婚後は善根となる子供を授ける。
- 女性の出産の苦しみを和らげ、その子のために信心すれば、子供には福徳と愛嬌を授ける。
種字・印・真言
種字
印
真言
- オン・マカラギャ・バゾロウシュニシャ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バン・コク[18]
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- Oṃ mahārāga vajroṣṇīṣa vajrasattva jaḥ hūṃ vaṃ hoḥ[19]
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- 吽(引)吒枳吽(引)惹(入聲)[2]
- Hūṃ ṭaki hūṃ jaḥ[注 8]
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- 吽吒枳吽惹悉地[20]
- Hūṃ ṭaki hūṃ jaḥ siddhi[19]
愛染明王の起源
愛染明王(あいぜんみょうおう)は愛情や煩悩に起因する人間関係の調和、縁結びなどの「敬愛」を司り、不動明王(ふどうみょうおう)は煩悩や魔を退け、人々を救済する「降伏(こうぶく)」の力を持つとされます。両尊は密教仏として、大日如来の化身であり、それぞれ金剛界(不動明王)と胎蔵界(愛染明王)を代表するとも考えられています。
愛染明王(あいぜんみょうおう)
- ご利益・役割: 縁結び、夫婦和合、人間関係の調和、子宝など、愛情や人間関係にまつわる「敬愛」の願いを叶えるとされます。
- 姿: 逆立てた髪と赤く染まった肌を持ち、六本の手で弓を持つなど、魅惑的な姿をしています。
- 象徴: 衆生の愛欲と煩悩。
不動明王(ふどうみょうおう)
- ご利益・役割: 煩悩や魔を退け、全ての人々を救済する「降伏」の力を持ち、五大明王の中でも最も中心的な役割を持つとされます。
- 姿: 炎を背負い、逆髪(ポニーテールのような髪型)で、右手に剣、左手に索(索)を持つのが一般的です。
- 象徴: 衆生の心の迷いや煩悩を取り除く力。
両尊の関係と信仰
- 大日如来の化身: どちらの明王も、大日如来が人々の願いに応じて変身した姿とされます。
- 金剛界と胎蔵界: 不動明王は金剛界、愛染明王は胎蔵界をそれぞれ代表する仏であるという考え方もあります。
- 合体した姿: 時には、これら二尊が一体となって「両頭愛染明王」や「厄神明王」として合体した姿で信仰されることもあります。これは、両方の側面を持つ仏様として捉えられています。