密教の世界
『変身の原理』と密教ブーム
この『変身の原理』が出たあと、密教ブームが起こった。桐山は密教ブームに乗った、 いまになっていう人がいるが、事実はそうではなくて、この本が出る以前は、一般大衆密教という言葉さえ知らなかったくらいであった。この本が出てはじめて密教という言葉を知った人が多かった。と同時に、超能力という言葉も一般に使われるようになった。
「この頃、密教、密教としきりに聞くが、密教って、真言宗のことだってね」と言った直言宗のお坊さんもあったとか、とにかくこの本によって、密教ブームが起こった。
それコリン・ウィルソンの『オカルト』(新潮社)を翻訳された中村保男さんは、同書の「あとがき」で、この『オカルト』と、わたくしの『変身の原理』および『密教―――超能力の私南』とが、符節を合するように、同時期に刊行され、英語と日本語という本のちがいはああにしても、問然とはいえ、その内容の類似性が驚くほどであることを指摘し、わたくし
し自身がすでにそれを身につけているということをはっきりと断言しているわけである。
それは何かというと、わたくしは、この本の中で、密教の修行によって五つの超人的能
力をもつことができると断言している。
その五つの超人的能力とは、
一物事の明確な認識と予知および正確な選択力
自分を変え、他人を動かし、自分の思うままに環境をつくり変える力
五四三二すぐれた高度の創造力
四強な体力と卓抜な精神力
五すさまじい爆発的な念力による願望達成力
である。
そして、密教の指導者としてこの本を書いた著者は、その五つの力を身につけているのだと断言しているのである。断言したからには、それを実証してみせる義務があろう。それが実証できないのなら、断言すべきではないのである。だから、断言したということは、 実証してみせる自信があるからで、それはもはや単なる断言ではなく、宣言というべきものであろう。筆を執ったその時点において、どういうかたちでそれを実証するかというは
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桐山靖雄の『変身の原理―密教・その持つ秘密神通の力』(1971年)などの著作が流行し、密教の神秘性や超能力といった実践的な側面に注目が集まったことで起こりました。桐山の密教論は真言宗からは正統ではないと見なされましたが、ブームは既存の宗教とは異なる潮流として、「第二の近代化」期における「神秘・呪術ブーム」と関連づけられ、後の阿含宗のような霊術系新興宗教の台頭に繋がりました。
- 背景: 1970年代には、宗教社会学者の西山茂が指摘するように、「第二の近代化」における「神秘・呪術ブーム」が起きました。このブームの中で、密教の秘密の力や超能力、そして現世利益といった側面が人々の関心を集めました。
- 桐山靖雄の著作: 後の阿含宗の開祖となる桐山靖雄は、密教の神秘的な力に焦点を当てた著作を次々と発表しました。『変身の原理』は、そのような密教論の一例であり、密教が人を動かす力や奇跡を呼ぶ原理に触れる内容でした。
- 密教の関心: 『変身の原理』が多くの人々を惹きつけたのは、密教の本質である現世利益の追求と、それと結びついた「即身成仏」の教えが、当時の人々の関心にマッチしたためと考えられます。
- 既成宗派からの見解: 桐山の密教論は、密教の伝統的な教義とは異なる実践的な側面に焦点を当てており、真言宗からは「オーソドックスではない」と認識されていました。
- 新興宗教との関連: このブームは、単なる学術的な関心にとどまらず、桐山の活動に見られるように、後の阿含宗のような霊術系新興宗教の台頭を準備する土壌となりました。
- 即身成仏: 密教の根本思想に「即身成仏」があり、これは「この身このままで仏になれる」という教えで、現世での悟りを可能とします。
- 「変身の原理」の解釈: 『変身の原理』で語られる「超能力に変わる」ことや「人を動かす」ことは、この「即身成仏」の考え方と結びつき、現世で特別な能力を持つことができるという密教の側面を強調したと解釈できます。




