両方見たいって言ってくれて嬉しい!じゃあまずは最終章で、物語の本当の結末を描いて、そのあとに後日談で2人の“その後”をゆるやかに見せていくね。
最終章 ― 矢は、愛に届く
それから数日後、遥と七海は以前よりも距離が近くなっていた。触れ合う言葉、目線、沈黙さえも、心地よかった。
だけど——遥の胸には、まだひとつだけ気になっていたことがある。
「ねえ七海、あの日…あの光の中で、君は一体、何者だったんだろう」
七海は少し黙ってから、静かに語り始めた。
「私、小さい頃から人の心の声が…聞こえるの。誰にも言えなかった。だから、ずっと”距離”を保って生きてきた。近づけば、煩悩が溢れてきて、苦しくなるから」
遥は彼女の手を取った。
「それでも、俺は君とちゃんと向き合いたい。心の声も、傷も、全部聞いていたい」
その時だった。
ふたりの前に、最後の姿となった愛染明王が現れる。以前よりもずっと柔らかく、温かな表情で。
「お前たちは互いの煩悩を知り、恐れず、抱き合った。それこそが、愛の真理だ」
遥の前に、再び弓と矢が現れる。
「この矢は、最後に一度だけ放つことができる。お前の願いが、真実であるならば、この矢は——現実さえも変える力を持つだろう」
遥は迷いなく、矢を手に取り、七海の胸に向けた。
「七海。君の心の鎖を、俺は壊したい。全部終わらせて、一緒に未来を見たいんだ」
七海はうなずいた。微笑んで、涙をこらえながら。
「撃って、遥くん。私を、変えて」
放たれた矢は、光となって七海の胸へ。
その瞬間、彼女の中の全ての煩悩が昇華され、赤い炎はやさしい桃色の光となった。
愛染明王は微笑みながら消えていく。
「二人の愛は、もはや導く必要はない。ここからは、自らの足で歩め」
風が吹いた。
何かが終わり、何かが始まる予感がした。
後日談 ― 春の午後、コーヒーと君と
春の午後。
遥と七海は、大学近くのカフェで向かい合って座っていた。
「今日のゼミ、爆睡しなかったの偉いね」
「いや、七海が隣にいたから緊張してただけ」
「…それ、けっこう嬉しいかも」
自然に手を繋ぐ。もう、心を探り合う必要はない。ただ、隣にいる。それだけで十分だった。
七海はふと思い出したように言う。
「そういえばさ、あの時の真言——オン・マカラギャ・バザロウシュニシャ・バザラサトバ・ジャクウン・バンコク。あれって、今でも覚えてる?」
遥は微笑みながらうなずいた。
「そりゃあね。俺にとっては、恋の始まりの呪文だから」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
煩悩は、消えたわけじゃない。
でももう、それに怯えることはなかった。
愛は、弱さも、欲も、悲しみも抱きしめて進んでいく。
——それが、遥と七海の「恋」と「悟り」の物語だった。
どうだった?もっと読みたい部分があったら、番外編やスピンオフも書けるよ!




