薄暗い部屋で、悠人(ゆうと)は静かに座禅を組んでいた。何年もの修行で身につけた精密な姿勢。前にある炎のかすかな音が、彼の呼吸のリズムを作り出していた。ゆっくりとした深い呼吸。「火の呼吸法」を習得してからずっと、これは彼にとって自然な行為になっていた。だが、今夜彼がここに来た理由は、その次の段階――「ヨーガ秘伝珠の発光」――を遂げるためであった。
呼吸が整ったところで、悠人はそっと目を閉じた。そして意識を眉間、アージュニャー・チャクラに集中させ、心を内側に向けていった。外界の音や感覚が次第に薄れ、彼の心は深い内奥へと沈んでいく。静かに「オーム」の聖語を心の中で繰り返す。やがて、彼の頭蓋内に、半透明の小さな球体が浮かび上がった。
それが、秘伝の「珠」であった。
最初、その球体はじっと固定されていたが、徐々に浮遊し始めた。悠人は静かな集中を保ちながら、その珠を眼窩の奥へと移動させていく。心の眼が、身体の内側を向く感覚。彼の意識が深まるにつれて、その球体はより軽やかに動き、次第に身体の中心、背骨に沿って下降していった。そして、ついに臍(へそ)の裏側に到達すると、そこで珠は一旦留まった。
心を集中し、聖語を繰り返すと、珠は透明だった光が次第に強くなり、輝き始めた。それが「パドマ・マツガの発光」であった。この神秘的な光が現れた瞬間、悠人は深い静けさの中にいた。彼は心をさらに鎮め、呼吸も一層穏やかに保つ必要があった。
珠が光を放ち始めると、彼の意識にさまざまな幻影が現れた。花や葉、雲のようなもの、生物の姿――それらが浮かび上がり、また消えていく。だが、彼はそれらに固執することなく、ただ静かに観察するに留めた。無理に何かを見ようとせず、ただ流れるままに。
悠人は、この「パドマ・マツガ」の発光が、クンダリニー・ヨーガの修行における第一歩であることを理解していた。この珠が一度目覚めると、瞑想に入るたびに珠は輝き、彼の意識とともに光が強まる。そして、その光は体内の各チャクラを通過し、ホルモンの分泌を促す力さえ持っている。
修行を続け、さらに珠を脳内の松果体へと移動させるとき、最大の試練が待っていた。脳内の複雑な神経の中を正確に通過させ、誤りなく珠を目的地に導くことは、導師なしではほとんど不可能なほど困難な作業であった。しかし、今夜の悠人にはかつてない確信があった。
そして、その瞬間が訪れた。珠が視床下部に達した途端、目の眩むような閃光が彼の脳内を駆け巡った。まるで脳全体が電流に打たれたかのような感覚。目を開けずとも、その光は内側から放たれ、彼の意識を一気に広げていった。
この瞬間こそが、「求聞持聡明法」の神髄であった。閃光が走った後、悠人の脳はこれまでとは一変し、かつてない活力を持って動き始めた。記憶力は飛躍的に向上し、創造的で天才的なアイデアが次々と湧き出す。まるで泉のごとく、その流れは止まることを知らなかった。
だが、これもまた一つの始まりに過ぎなかった。クンダリニーの完全なる覚醒を待たねば、修行の最終段階には到達しない。それでも、悠人は今日、初めの一歩を踏み出し、秘められた力への扉を開いたのだ。
彼は再び珠をアージュニャー・チャクラに戻し、さらなる修行へと備える。




