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阿閦如来

阿閦如来

物事に動じず、迷いに打ち勝つ強い心を授ける仏

阿閦如来(あしゅくにょらい)とは?

語源は「揺るぎないもの」を意味し、物事に動じず迷いに打ち勝つ強い心を授けるといわれています。阿閦如来は「大円鏡智(だいえんきょうち)」と呼ばれる智慧を具現化した仏です。「大円鏡知」は知識や経験のない純粋な心、鏡のようにありのままを映し出す清らかな心という意味を持っています。

ご利益

密教における大日如来の五つの智慧を表す五智如来の一尊で、薬師如来と同等と考えらました。そのため病気治癒、無病息災、滅罪の功徳があるといわれています。

阿閦如来(あしゅくにょらい)の像容

左手は衣服の端を握り、右手は指を下に伸ばす降魔印(ごうまいん)を結んでいます。これは恐怖や誘惑に打ち勝つ強い心を表しています。阿閦如来の単独の造像はほとんどありません。

有名寺院と像

・京都府:東寺
・奈良県:西大寺

阿閃如来(あしゅくにょらい)の真言

オン・アキシュビヤ・ウン

Butsuzo List

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歓喜の頌歌

夜明け前の空気は、まだひんやりとしていた。蒼白い光が差し込み、街の喧騒がゆっくりと目を覚まし始める。

慎一は、駅のホームに立っていた。スーツのポケットに手を突っ込みながら、深く息を吸い込む。仕事に向かう人々の足音が響く中、彼はふと空を見上げた。

「人生は、いつもバラ色とはいかないな……」

呟くように口にしたその言葉は、冷たい朝の空気に溶けて消えた。会社では締め切りに追われ、家では家族を支える責任が重くのしかかる。社会人としての務めを果たし、家庭を守る。そのすべてが彼の肩にのしかかる日々だった。

「四苦八苦……か」

慎一の脳裏に、かつて読んだ詩がよぎる。

花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき

人の一生は、思うようにいかないことばかりだ。しかし、それでも――。

電車の到着を知らせる音が鳴り響く。慎一は改めて背筋を伸ばし、静かにホームの端を見つめた。

「欲が苦しみの原因である。欲を去れ」

仏陀の教えを思い出す。しかし、すべての欲を捨て去ることは難しい。社会で生きていく以上、最低限の欲望は必要だ。それでも、慎一は思う。

「必要な欲望ですら、時に壁に阻まれる……」

満員電車の扉が開く。押し寄せる人の波に飲み込まれそうになりながら、慎一は奥へと進んだ。揺れる車内でつり革を握りしめ、ふと車窓に映る自分を見つめる。

――このままでいいのか?

仕事に追われ、責任に押しつぶされ、ただ流されるように生きる。それが本当に「生きる」ということなのか。慎一は目を閉じ、深く息を吸った。

「いや、違うな」

目を開けた瞬間、彼の中で何かが変わった。どんなに困難でも、どんなに苦しくても、希望を持って生きることはできるはずだ。悲しみや悩みを引きずって生きるのではなく、喜びを持って生きる。

「生きてさえいれば、どんなことだって可能になる」

会社のビルが見えてきた。電車を降り、慎一は改めて歩き出す。

――今日は、どんな日になるだろうか?

ふと、目の前の青空が広がる。その青さに心を満たされながら、彼は静かに微笑んだ。

「よし、今日も頑張るか」

生きていることに感謝し、明日を迎える。人生はバラ色とは限らない。けれど、自らの心がバラ色に染め上げることはできるはずだ。

喜びを持って、今日を生きよう。

 

<東方浄土の誓い>

深淵より湧き上がる紫雲を突き破り、黄金の光が阿比羅提国を照らしていた。大目如来の蓮華座から滴り落ちる甘露が、聴衆の比丘たちの袈裟を虹色に染める。その中に、額に汗を光らせて座する一人の修行僧がいた。

「瞋恚は心を曇らせ、淫欲は智慧を蝕む」

雷鳴のような如来の声が肋骨を震わせた。若き比丘は袈裟の裾を握りしめ、爪先から頭頂までを痙攣させた。昨日の出来事が脳裏を掠める。托鉢の途中で出会った美しい巫女の笑顔。道端で子供に蹴られた犬の断末魔。己の胸中に渦巻く黒い感情の奔流。

「迷妄を断て」

突然、大目如来の指先から放たれた光の矢が眉間を貫いた。比丘は虚空に引き上げられるように立ち上がり、膝を折った。地面に叩きつける額から血が滲む。

「誓います!劫火に身を焼かれようと、三毒の炎を絶ちます!」

震える声が法衣を震わせた瞬間、不思議なことが起こった。比丘の影が十二支の方角へ分裂し、それぞれが剣を持って踊り始める。東方の影は竜を斬り、南方の影は毒蛇を踏み潰す。西方では孔雀が羽を広げ、北方では亀甲文様の盾が現れた。

大目如来の唇が緩んだ。「善哉。汝の決意は金剛の如し」

大地が轟き、無数の蓮華が一斉に開花する中、比丘の肉体が透明になっていく。肋骨が水晶のように透け、内臓が梵字の連なりに変化する。最後に残った心臓が、鏡面のように光り輝く円盤へと変貌した時──

「阿閦如来」

新しい名を授けられた存在は、右手の指先で大地に触れた。その途端、地底から湧き上がる業火が、周囲の煩悩を焼き尽くした。左手に握られた衣端からは、青い炎がゆらめきながら経文を紡ぎ出す。

「降魔印は迷える者への慈悲なり」

阿閦の瞳に映る現世の景色が変容していく。病める者の体内を這う黒い蛇、罪人の肩に巣食う赤鬼、飢えた亡者の喉元に咲く曼珠沙華。清浄なる鏡智がそれらを照らすたび、苦しみが雪解けのように消えていく。

五智を司る仏たちが天空に顕現した。中央の大日如来が宝冠を傾け、阿閦の額に月輪の印を押す。東西南北から響く真言が、新たな如来の法衣に刺繍のように刻まれていく。

「オン・アキシュビヤ・ウン」

阿閦が初めて口にした真言が、時空を歪ませた。過去世で殺した敵の亡霊が感謝の合掌をし、未来世で出会うべき弟子たちの影が跪く。鏡智の光は因果の糸を断ち、無数の魂を浄土へ導く虹架橋となった。

やがて説法の場は静寂に包まれた。阿閦如来の結んだ印から滴り落ちる金剛露が、現世では七回忌を迎えるある女性の頬を伝う。彼女は突然、長年患った咳が止まったことに気付き、仏壇に手を合わせた。その掌のひらで、阿比羅提国の蓮が一輪、そっと開花していた。