七倶胝仏母──七億の仏を生む母
遥か昔、世界がまだ混沌とし、争いと苦しみに満ちていた時代。天空を裂くように一筋の光が舞い降りた。その光の中に立つのは、一人の荘厳なる女神──准胝仏母(じゅんていぶつも)。
彼女の姿は、この世のものとは思えぬほど神秘的であった。三つの目はすべてを見通し、十八本の腕は慈悲と智慧を象徴するかのように優雅に広がっている。その手には、武器や蓮華、数珠が握られており、彼女の持つ力の偉大さを示していた。
慈悲深き仏母の誓い
「この世の苦しみを救わん…」
准胝仏母は静かに誓いを立てた。その誓いとともに、彼女の身体から七色の光が放たれ、その光の中から数えきれぬほどの仏が生まれていった。七億にも及ぶ仏たちは、この世界に悟りをもたらし、人々を苦しみから解き放つために旅立っていった。
それ以来、人々は彼女を**七倶胝仏母(しちくていぶつも)**と呼び、深く信仰するようになった。
六観音と七観音
時は流れ、准胝仏母の名は真言宗の修行者たちによって広められていく。彼女は、六道を救済する六観音──聖観音・千手観音・十一面観音・如意輪観音・馬頭観音とともに、人々を導く存在となった。
一方、天台宗の学僧たちは、彼女を観音ではなく如来に分類し、不空羂索観音とともに「七観音」として崇めた。
だが、どの教えにおいても准胝仏母の慈悲深き力は変わることなく、人々に救いをもたらした。
聖なる真言──解放の響き
人々は彼女の名を唱え、祈ることで加護を得ると信じていた。ある修行僧が、山奥の洞窟で厳しい修行に励んでいたときのこと。
ある日、彼は極限の疲労と飢えにより意識を失いかけた。その瞬間、彼の耳に優しく響く声があった。
「オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ…」
その言葉を口にすると、不思議なことに彼の体は軽くなり、意識は清明になった。まるで七億の仏が彼を導いているかのようだった。
彼は悟った──准胝仏母の加護は、真に求める者のそばに必ずあるのだ。
それ以来、この真言は人々の間で広まり、苦しみを乗り越えたい者、安産を願う者、悟りを求める者たちが、この言葉を唱え続けた。
「オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ…」
今もなお、その響きは世界のどこかで唱えられ、准胝仏母の慈悲の光は、静かに人々を見守り続けている。





