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薬師如来の薬壷 The Apothecary of Yakushi Nyorai

薬師如来の薬壷
The Apothecary of Yakushi Nyorai

 

願いの壺に 声は眠る
触れた指先が 記憶を呼ぶ
私は本当に 愛されたのか
胸に問うのは 風の残響

癒しとは 許しじゃなくて
真実を 見つめること
涙の味を 知ったときから
世界はそっと 色を変えた

A wish sleeps deep in the silent jar
A single touch recalls a distant scar
Was I ever truly loved at all?
The wind replies with a voiceless call

Healing’s not in pardon or regret
But facing truths we can’t forget
From the taste of tears, I finally knew
The world had changed — its colors, too

 

 

 

阿伽陀を服した者

第一話 阿伽陀を服した者

第一章 願いの壺

その日、少女・華音は何の気なしに古寺を訪れていた。
かすかに風が香を運び、青磁の壺の前で彼女の足が止まった。
そこには僧・明識が静かに佇んでいた。

「これはなに?」

「……願いの壺。薬師如来の壺じゃ」

僧は微笑みながら答えた。

「ただし、ここに入れられる願いは、自らの魂に嘘をつかぬ者のみ」

華音は笑った。

「そんなもの、あるわけないじゃない」

それでも彼女の指は、なぜか壺に触れていた。
そのとき、壺の奥から静かな囁きが響く。

――お前は、愛されたことがないと信じているのか?

胸の奥に、なにかがざらりと波打つ。
それは、記憶の裂け目からこぼれ落ちるような、黒く冷たいものだった。

第二章 阿伽陀の服用

夜。
華音は僧から渡された「青い小瓶」を机に置いた。
それは、まるで光を内側から放っているような霊薬だった。

「この薬は、ただの治療薬ではない。
飲めば、自らの魂の病と対面することになる。」

明識の言葉を思い出し、彼女はためらった。
だが、どこかで確信していた。
もう逃げてはいけない。

静かに瓶を開け、一滴を舌に垂らす。
その瞬間、世界が反転する――。

第三章 記憶の下へ

彼女は、夢のような意識の中で、
幼い自分の姿と出会う。

部屋の隅。
泣いている少女。
そして、扉の外で母の声がした。

「……ごめんね、今日も病院。華音のこと、ちゃんと見てあげたいのに……」

幼い華音は、それを聞いていなかった。
いや、聞こうとしなかった。
「お母さんは、私を置いて行った」――そう思い込むことで、心を守った。

だが今、阿伽陀に導かれた意識の中で、母の声は明瞭だった。

「……あなたのこと、愛してるよ。
たとえ一緒にいられなくても、私はずっと――。」

少女の胸に、熱いものがこみ上げる。

――愛されていなかったのではない。
――愛されていることを、受け取れなかっただけだった。

彼女の目から、静かに涙が落ちる。

第四章 癒しの夜明け

目を覚ますと、朝日が差し込んでいた。
枕が濡れている。夢ではなかったのだ、と知る。

机の上には、青い瓶が空になっていた。
僧・明識の姿はない。だが一枚の紙が残されていた。

「癒しとは、
許すことでも、赦されることでもなく――
真実を、受け入れることじゃ。」

彼女は深く息をついた。
世界の色が、少しだけ変わって見えた。

第一話・結

こうして、少女・華音は、
魂の最初の業病――「私は愛されていない」という想念を癒した。

だが、《阿伽陀》の旅は、始まったばかりである。

――次に、それを必要とする者は、誰か?

薬師如来

薬師如来

病気に苦しむ人々を助ける仏

薬師如来(やくしにょらい)とは?

東方浄瑠璃世界の教主で、正式名を薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)といいます。

 

病気を治して衣食住を満たすという「十二の大願」を立て、生きている間に願いを叶えてくれます。阿弥陀如来のように死んだ後にやすらぎを与えるのではなく、現世にやすらぎを与えてくれるのが特徴です。昔の作例はとくに病気平癒を願ったものが多数存在します。

 

日光菩薩と月光菩薩を脇侍として三尊として並ぶことが多いです。さらに、7体の薬師如来で息災・増益を祈願する修法の本尊である七仏薬師というものも存在します。また、眷属として十二神将を従えています。

ご利益

病気治癒(特に目病)、健康長寿、災難除去、安産祈願、現世利益

薬師如来(やくしにょらい)の像容

薬壺(やっこ)を左手に持っており、右手の薬指を前に出しています。他の装飾品等は持ちません。ただし、奈良時代までの造形は薬壺を持たない場合が多く釈迦如来と区別がつきにくいです。

有名寺院と像

・奈良県:薬師寺
・奈良県:法隆寺
・京都府:醍醐寺

薬師如来(やくしにょらい)の真言

オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ

薬師如来

薬師如来

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
薬師如来

慧日寺跡 薬師如来坐像
薬師如来
梵名 「バイシャジヤグル」
भैषज्यगुरु
भैषज्यगुरुवैडूर्यप्रभराज
蔵名 སངས་རྒྱས་སྨན་བླ
別名 薬師瑠璃光如来
薬師仏
大医王
医王善逝
種字  バイ
真言・陀羅尼 オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ 他
#真言参照)
経典 薬師瑠璃光如来本願功徳経
『薬師瑠璃光如来消災除難念誦儀軌』
『薬師七仏供養儀軌如意王経』
信仰 密教
真言宗
天台宗
十三仏信仰
チベット仏教
浄土 東方瑠璃光浄土
関連項目 大日如来
釈迦如来
阿閦如来
日光菩薩
月光菩薩
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木造薬師如来立像
国宝元興寺[注釈 1]

薬師如来(やくしにょらい、サンスクリット語भैषज्यगुरुBhaiṣajyaguru[1]バイシャジヤグル)、あるいは薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)は、大乗仏教における信仰対象である如来の一尊。大医王医王善逝(いおうぜんぜい)とも称する[1]

三昧耶形薬壺、または丸薬の入った種字は尊名のイニシャルのバイ(भै、bhai)[2]

 

 

 

 

有漏の正思惟

朝靄の中、若き修行者シンは山道を登っていた。足元には霜の残る落ち葉が敷き詰められ、踏むたびにかすかな音を立てる。その音さえも、彼には自らの心を映すように感じられた。

――私はまだ、煩悩の只中にいる。

欲望が去ったわけではない。怒りが消えたわけでも、迷いが尽きたわけでもない。ただ、それらの闇を見つめる目だけは、ようやく少しずつ開かれつつあった。

師は言った。「思惟を恐れるな。ただし、それが煩悩に染まらぬよう注意せよ。それが正思惟だ」

彼は思い返す。

出離の思惟――この世を離れたいという願い。それは逃避ではない。快楽や欲望の果てに疲れ果て、ほんとうの安らぎを求める静かな意志。欲にまみれた心が、それでもどこかで「このままではいけない」と目覚める、かすかな光だ。

無瞋の思惟――怒りを抱いても、それに呑まれずに済む道を探すこと。誰かに心を傷つけられたとき、その苦しみの連鎖を断ち切ること。

無害の思惟――弱き者に手を差し伸べ、傷つけずに生きようとする姿勢。たとえ敵意を向けられても、報復を求めず、慈しみを返す勇気。

それらは、シンの中でまだ完成されてはいなかった。けれど確かに、芽生え始めていた。

「正思惟とは、煩悩を否定することではない。煩悩のなかにいても、それに引きずられず、清らかな心の方向を選ぶことだよ」

師のその言葉が、風のように耳の奥で響いた。

谷の向こうから、朝日が射し始めていた。冷えきった山の空気に、ひと筋の温もりが差し込む。シンは立ち止まり、静かに目を閉じた。

「この身は、まだ煩悩に染まる。しかし、この心に、正思惟の灯をともそう――」

それは小さな誓いだった。けれど、その一念が、迷いの森を抜ける第一歩になることを、彼はうすうす感じていた。