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仏教

旅立ち ― 真理の種を携えて Departure — Bearing the Seeds of Truth 静かな朝に種を抱いて

 

旅立ち ― 真理の種を携えて

Departure — Bearing the Seeds of Truth

静かな朝に種を抱いて
風に揺れる、誓いの衣
ひとりひとりが光を携え
世界の闇へと歩き出す

求めずに与えよ、真理の雨を
疲れた魂に、慈悲を注げ
この道の先に 救いはあると
燃える灯火が 希望になる

In the quiet morning, they cradle the seed,
Robes of vow flutter in the gentle breeze.
Each one carries a glimmering light,
Stepping into the world’s dark night.

Give, not seeking — let truth’s rain fall,
Pour compassion on the weary soul.
There is salvation beyond this road,
A flame they carry becomes hope untold.

 

鹿野苑の朝

 

 

鹿野苑の朝

静かな朝だった。
空にはやわらかな光がさしはじめ、草木がかすかに揺れている。

ゴータマ――いや、いまや覚者となったブッダは、鹿野苑へと歩みを進めていた。
彼の心は、深い静けさに包まれていた。
だが、同時に、燃えるような情熱もまた胸にあった。

「誰かにこの道を伝えなければならない。」
「苦しみを超える道が、ここにある。」

そこにいた。
五人の修行者たち――

かつて、ともに苦行を重ねた仲間たち。
だが、ブッダが苦行を捨てたとき、彼らは軽蔑のまなざしを向け、彼を見捨てたのだった。

五人は、遠くから彼の姿を認めたとき、最初は顔をしかめた。

「ほら、あの男が戻ってきたぞ。」
「堕落者め。欲に負けた男だ。」
「話す必要などない。ただ無視しろ。」

そう、彼らは互いにささやき合った。

だが、ブッダが近づいてくるにつれ、なぜか五人の心に、奇妙な感覚が広がっていった。
その歩みは、静かで、揺るぎなかった。
その目は、どこまでも澄みわたり、慈しみに満ちていた。
その存在そのものが、語らずして語っていた。

――この人は、かつての誰でもない。
――なにか、全く別のものになった。

五人は思わず立ち上がり、ひざまずいた。
ブッダの前に、頭を垂れた。

最初の説法 ― 初転法輪

ブッダは、静かに彼らを見渡した。
優しく、そして力強く口を開く。

「比丘たちよ。
二つの極端を避けよ。」

一つは、欲望に溺れる快楽の道。
もう一つは、自己を苦しめる過酷な苦行の道。

どちらも、真理に至る道ではない。
中道――それこそが、悟りへ至る道である。

ブッダの声は、鹿野苑の空に、しずかに、しかし確かに響いた。
五人の修行者たちは、言葉の一つひとつを飲み込むように聴いていた。

「苦しみがある。
苦しみの原因がある。
苦しみの終滅がある。
苦しみを終わらせる道がある。」

これこそが、「四聖諦(ししょうたい)」であると。

苦しみとはなにか。
苦しみの原因とはなにか。
それは、欲望と無知に他ならない。
だが、これを滅する道がある――

それは、「八正道(はっしょうどう)」――
正しい見解、正しい思考、正しい言葉、正しい行い、正しい生活、正しい努力、正しい念、正しい定――

「この道を歩めば、
生も老いも病も死も、超えることができるのだ。」

ブッダの声は、力強く、かつ限りなく優しかった。
五人の修行者たちの心は、震えていた。
まるで、何百年も乾ききった大地に、初めて清らかな雨が降りそそいだかのように。

そして、その場で、五人のうち最初の一人、コンダンニャ(阿若憍陳如)が、
「すべてのものは生起し、滅びる」との理を心の底から悟ったのだった。

彼は叫んだ。

「わたしは、理解しました!」

こうして、ブッダに最初の弟子が生まれた。
世界で最初のサンガ(僧団)が、ここに生まれたのだった。

光は広がる

あの日、鹿野苑で灯された小さな光は、
やがて世界中へと広がっていく。

苦しみを超える道は、
いまも変わらず、われわれの足元に、
そっと敷かれている。

一歩、また一歩。
ブッダのように。

 

 

夜明けの誓い Vow of Dawn

 

夜明けの誓い Vow of Dawn

闇を裂いて 問いかける
なぜ人は 苦しむのか
すべて流れ すべて消え
なおも求め 歩きだす

いまここに 光はある
この命 燃え尽きても
真理へと ただ進め
夜明けは すぐそこに

Tearing through the dark, I ask aloud,
Why must we suffer in this life?
All things will flow, all things will fade,
Yet still I seek and start to walk.

Here and now, the light is near,
Even if this life should burn away,
March toward the truth alone,
The dawn is already close.

 

闇のなかの問い

 

闇のなかの問い

静かに呼吸を整えながら、ゴータマは思った。
――なぜ、これほどまでに人は苦しまねばならないのか。

彼はかつて王宮にあり、あらゆる快楽を享受していた。
だが、それらはすべて、老い、病、死――無常の影におびやかされていた。

「この世に変わらぬものはない。
どれほど愛しても、どれほど守ろうとしても、
すべては流れ、崩れ、消えていく。」

心の底から湧きあがるこの問いが、彼を瞑想へと導いていた。

放棄と探求

一切を捨て、ゴータマは修行の道を選んだ。
最初は過酷な苦行に身を投じた。
肉を削ぎ、骨に皮を貼るような日々。
だが、骨と皮ばかりになった自分の身を見つめながら、彼は静かに悟った。

「この道ではない。」

苦しみを極めても、真理にたどり着けるわけではない。
飢えた体と同じように、心も痩せ細るばかりだった。

――ならば、なにが道なのか?

彼は迷い、そして、再び坐った。
菩提樹の下に。
この身が朽ちてもよい。
この命が尽きてもよい。
だが、悟りに至るまでは、絶対にこの場を動かぬと誓って。

夜明けの刻

夜の闇がもっとも深いとき、ゴータマの心にもまた深い闇が押し寄せた。
恐れ、執着、無知――無数の悪魔たちが、心のなかにささやいた。

「やめよ。無駄なことだ。」
「おまえに何ができる。」
「死ね。すべてを諦めろ。」

だが、ゴータマは動かなかった。
たったひとつ、真理への渇望だけが、彼を支えていた。

そして。

一筋の光が、心の奥底から立ちのぼった。
それはどんな快楽よりも甘美で、
どんな言葉よりも確かだった。

ゴータマは見た。
縁起の法――すべての存在が、因と縁によって生起し、消滅する真理を。

彼は悟った。

苦しみは、無知から生まれ、
無知は、縁起の道理を知らぬことから生じていたのだ。

無知を滅することで、苦しみは消える。
それが、四つの真理――「四聖諦」の道であった。

静かな勝利

夜が明けた。
東の空が白みはじめるころ、
ゴータマはそっと目を開けた。

世界は変わっていなかった。
樹々はそこにあり、鳥はさえずり、
人々は今日も生き、悩み、笑い、泣くだろう。

だが、彼の心は、もはや何ものにも動かされなかった。

彼は完全なる解脱者――
覚者、すなわち「ブッダ」となったのだった。

そして、われわれへ

その道は、遠いものではない。
ゴータマ・ブッダが示した一歩一歩の道筋は、
時を越え、われわれにも手渡されている。

ほんの小さな一歩からでもいい。
目を閉じ、心を静め、
そして、自らの内なる問いに耳をすませてみるのだ。

苦しみを超える道は、いま、この瞬間にも、
あなたの足元からはじまっている。