
千手観音
千の手と千の目を持ち、あらゆる衆生を救うという観音菩薩。その姿は、まさに慈悲の象徴であった。
深い霧に包まれた静寂の中、白蓮の咲く池のほとりに一人の旅僧が立っていた。彼の名は慧厳。長年の修行の果てに、千手観音の御前に辿り着いたのである。
「ここが……千手千眼観自在菩薩の御座す場所か……」
慧厳は深く息を吸い、ゆっくりと歩を進めた。霧の向こうには、黄金に輝く千の手を持つ観音が鎮座していた。その慈愛に満ちた表情は、すべてを包み込むような温もりを湛えている。
突如、観音の目がひらかれた。千の目が一斉に慧厳を見つめる。
「求めるものは何か?」
観音の声は、風のように静かに、されど深く響いた。
「私はただ、人々の苦しみを知り、救いたいと願うのみ……」
慧厳の言葉に、観音はゆっくりと手を差し伸べた。四十二本の手がそれぞれ異なる法具を携えている。そのうちの一本が、慧厳の額にそっと触れた。
「ならば、お前に慈悲の心を授けよう」
瞬間、慧厳の中に熱い光が流れ込んだ。それは限りない愛と慈しみの力。観音の千の手と目がすべての衆生を救うように、彼もまた、人々の苦しみに手を差し伸べる者となる運命を授かったのだった。
「オン・バザラ・タラマ・キリク……」
慧厳は静かに経を唱え、深く観音に礼をした。
その日から、彼は旅を続けながら、多くの苦しむ者たちに手を差し伸べることとなる。観音の慈悲の心を胸に抱き、ただひたすらに。
それが、彼に与えられた新たな道であった。
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