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虚空蔵菩薩

 

虚空蔵菩薩

虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)(梵名アーカーシャガルバ(梵: आकाशगर्भ [Ākāśagarbha])、またはガガナガンジャ(梵: गगनगञ्ज、[gaganagañja]))は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。「明けの明星」は虚空蔵菩薩の化身・象徴とされ、明星天子、大明星天王とも呼ばれる。また、知恵の菩薩として、人々に知恵を授けるともいわれている[1]。

無限の智慧と慈悲の心を人々に与える菩薩

 

 

 

 

夜明け前、まだ星の残る空の下、ひとりの青年は寺の石段に座していた。
東の空に、ひときわ明るく輝く星があった。人々はそれを「明けの明星」と呼ぶが、修行者たちは別の名で呼ぶ――虚空蔵菩薩の化身、と。
青年は静かに合掌し、その名を心の奥で唱えた。
――虚空蔵。
宇宙のように限りなき智慧と、尽きることのない慈悲を蔵する者。
彼はまだ若く、迷いも多く、記憶も不確かだった。だが胸の奥には、どうしても知りたいという渇きがあった。真理を、言葉を、そして人の苦しみを救う道を。

そのとき、風も音も止んだかのような静寂の中で、彼の前にひとつの光が現れた。
白銀の光に包まれ、五仏宝冠を戴いた菩薩が、蓮華の上に坐していた。右手には煩悩を断つ剣、左手にはあらゆる願いを満たす如意宝珠を携えている。
「恐れることはない。」
声は、空の奥から響くように、深く澄んでいた。
「虚空とは、何もない場所ではない。
すべてを包み、すべてを生かす、無限の蔵である。
そこには、智慧も、慈悲も、記憶も、すでに満ちている。」
青年は、思わず涙をこぼした。
自分の中に欠けていると思っていたものが、実はすでに備わっている――その事実に、胸が震えた。

「願いなさい。」
菩薩は、如意宝珠をかざした。
「願いとは、欲ではなく、光を求める心。
その心があれば、蔵は開かれる。」
青年は深く頭を下げ、唱え始めた。
オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ――。
真言は、夜空に溶け、星々の間を渡り、彼の胸の奥へと降り注いだ。すると、不思議なことに、心の中の霧が少しずつ晴れていくのが感じられた。忘れていた言葉、読んだはずの経文、遠い昔に聞いた師の声――それらが、次々と蘇ってくる。
「これが……虚空蔵の智慧……。
青年は、震える声でつぶやいた。
菩薩は、穏やかに微笑んだ。
「これは私のものではない。
もともと、あなたの中にあったものだ。

私はただ、その蔵の扉を、少し開いただけ。」
その瞬間、東の空が白み始めた。明星は、夜明けの光の中に溶けていく。菩薩の姿もまた、空そのものへと還っていった。
残されたのは、静かな朝と、深く澄んだ心だけだった。
青年は立ち上がり、東の空に向かって深く一礼した。
その日から彼は、毎朝、虚空蔵菩薩の真言を唱えるようになった。
記憶は冴え、言葉は澄み、何よりも――人の苦しみに寄り添う智慧が、少しずつ心に宿っていった。

そして彼は悟った。
虚空蔵とは、空の彼方にある存在ではない。
それは、自分自身の内なる宇宙――
無限の智慧と慈悲を蔵する、心そのものなのだと。

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