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薬師如来

 

薬師如来

病気に苦しむ人々を助ける仏

 

 

薄青い光が満ちる瑠璃の大地に、一人の仏が静かに坐していた。
その左手には、小さな薬壺がのせられている。壺の中には、あらゆる病を癒す霊薬――阿伽陀が満ちていた。
人々はその仏を「薬師如来」と呼んだ。
病に伏す者、心に苦しみを抱える者、希望を失いかけた者たちは、皆、その名を胸に唱えた。
仏の右手は、そっと前へ差し出されている。
それは施無畏印――「恐れるな」と告げる手。
左手の薬壺は与願印とともに、人々の願いを受けとめ、苦しみを癒す力を宿していた。
薬師如来は、東方浄瑠璃世界の教主。

正式には「薬師瑠璃光如来」と称される仏である。
その世界は、澄みきった瑠璃の光に満ち、苦も闇も影もない、清らかな国土だった。
かつて薬師如来は、まだ菩薩であった時、十二の大願を立てたという。
病に苦しむ者を癒し、衣食住に困る者を満たし、恐怖に震える者の心を安らげる――
それらは、死後の救いではなく、生きている今この瞬間の救済を誓う願いであった。
そのため、人々はこう語り継いできた。
「阿弥陀如来は死後に極楽へ導く仏。

薬師如来は、現世を照らし、今を救う仏である」と。
薬師如来の両脇には、日光菩薩と月光菩薩が静かに立つ。
昼と夜、光と闇、活動と休息――すべての時間に寄り添い、人々の命を見守る存在であった。
さらにその背後には、十二神将が並び、病魔や災厄から人々を守るため、昼夜を問わず警護していた。

時に、七体の薬師如来が並ぶこともある。
それは七仏薬師と呼ばれ、息災・増益を祈る修法の本尊として、人々の祈りを集めてきた。
古い時代の仏像には、薬壺を持たぬ姿も多く、釈迦如来と区別がつかぬものもあったという。
しかし時が経つにつれ、人々はこの仏に「癒し」の姿を求め、左手の薬壺は薬師如来の象徴となっていった。

病に伏す子の枕元で、
不安に眠れぬ夜の灯の下で、
人々は静かにこの真言を唱えた。
――オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ。
その響きは、瑠璃の光となって世界に広がり、
肉体の病だけでなく、心の闇にもそっと触れ、
見えないところで、確かに癒しを起こしていた。

そして今もなお、薬師如来は静かに坐し続けている。
左手に薬壺を抱き、右手で恐れを取り除きながら、
「苦しむ者よ、ここに来なさい」と、
言葉なき慈悲で、すべての命を迎え続けている――。

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