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〈交錯する二つの時代 ― 三福道の章〉

〈交錯する二つの時代 ― 三福道の章〉

第一場 古の林にて ―

夜明け前の竹林は、しんと静まり返っていた。
風のない空気の奥で、かすかに鳥の声が揺れ、星明りがまだ空の端に留まっている。

その中心に、ひとりの比丘が坐していた。

彼の眼差しは、深い湖のように澄み切っている。
釈尊――この世でただ一人、成仏法を完全に見極めた者

その朝、弟子たちがまだ眠りにつくなか、釈尊は遠くを見つめるようにして、静かに呟いた。

「わたしが説くべき法は、ただひとつ。
七科三十七道品――成仏のための七つのシステム、三十七の修行。
これ以外に、成仏の道はない。」

言葉は淡々としていたが、その響きは林の奥底に重く落ちていった。

「この法を修する者は、正覚へ向かう。
修せぬなら、いかに善行を積もうとも、解脱の門には至れない。」

弟子アーナンダは、その言葉を胸に刻むように深く合掌した。

「師よ、なぜ人はそれほどまでに迷うのでしょうか?」

釈尊は静かに目を閉じた。

「因縁である。
生の因縁は、死後も続く。
死者の霊の苦しみもまた、因縁によって縛られている。
だからこそ――死者をも解き放つ成仏法が存在する。」

アーナンダは息を呑んだ。
その法は厳密であり、生者の成仏法を完全に体得した導師だけが修することを許されると聞いていた。

「死者は自ら修行できぬゆえ、導師がその代わりとなる。
ゆえに、成仏法を悟った者でなければ、死者の解脱を導くことはできない。」
釈尊の声音は一層静まり、竹林の闇に溶けるようだった。

その夜、アーナンダは胸の奥で一つの誓いを立てた。
――この法を、後の世まで伝えなければならない。

やがて、東の空が淡く紅に染まりはじめる。
釈尊は、かすかに微笑を浮かべた。

「明日、三福道を説こう。
善なる根を植える道は、いかなる時代にも衰えぬ。
それを聞く者たちが、どれだけ救われるか――。」

陽が昇り始め、竹林全体が光に包まれていく。
その光は、二千五百年の時を越え、未来の修行者たちへと伸び広がるかのようだった。

〈現代 ― 法堂に満ちる光〉

その同じ光が、今、現代の法堂にも射し込んでいた。

真正仏舎利を本尊とした堂内では、白い朝光がゆっくりと床を照らし、静かに坐す修行者たちの肩を温めている。

導師は、ゆっくりと口を開いた。

「われらは――
釈尊直説の成仏法を、いまここで修する者たちである。」

修行者たちの心がひとつに重なった。

「三福道を植え、
因縁を断ち、
無上の運命を創造する。
その道は、いまも清らかに続いている。」

法堂の空気が透明に震える。
まるで、祇園精舎の梵鐘の響きが時を越えて届いたかのようだった。

修行者たちはゆっくりと息を整え、胸の内で唱える。

「如来に帰依し、
正法に帰依し、
聖衆に帰依す。」

その念は静かな波紋となって広がり、
釈尊が坐した古の竹林と、いま目の前の法堂が、
一つの光の道でつながる。

――こうして、
三福道は時代を越え、
 新たな修行者の胸へと植えられていく。

必要であれば続く
「第二場 三福道説法の朝」
「第三場 因縁解脱の法門」
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