UA-135459055-1

曼荼羅

寺院の奥、薄暗い光に浮かび上がる曼荼羅を前に、若き修行者は立ち尽くしていた。
それは単なる絵ではなかった。幾重にも重なる仏と菩薩の姿が、まるで宇宙の深層を映すように広がっていた。

師は静かに言う。
「これが金剛界曼荼羅だ。『金剛頂経』をもとに描かれた、悟りへの地図である」

修行者は息をのむ。曼荼羅の中央で輝く大日如来は、遥かに遠い理想でありながら、不思議と胸の奥で呼びかけていた。
曼荼羅の九つの世界――それぞれは道程であり、誓い、智慧、そして煩悩を砕く試練が刻まれている。

「この曼荼羅は仏の姿を写したものではない。お前自身が歩むべき修行の過程そのものを映しているのだ」

師の言葉が胸に沈む。
曼荼羅は彼の目の前で静かに広がり、やがて道となる。
それは彼が迷いを越え、仏へと成りゆくための、具体的な旅路の図絵であった。

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*