空間と時間の曼荼羅
夜の寺院は、静寂の海に沈み、蝋燭の炎が壁を揺らすたびに、微かな呼吸のような光が広がる。
青年は膝をつき、二つの曼荼羅を前に目を閉じた。
まず口にしたのは、胎蔵界の真言——
「アンビラウンケン……」
その音は柔らかく、広大な空間を抱きしめる母胎のように響いた。
光は胸の奥まで浸透し、迷いも恐れも静かに溶かしていく。
胎蔵界の空間は無限の広がり。すべてを受け入れ、すべてを育む大地のようだ。
青年の心は、世界の隅々までがひとつに結ばれる感覚を覚えた。
次に口にしたのは、金剛界の真言——
「オン・バサラ・ダト・バン……」
その音は鋭く、時間を切り拓く閃光のように走った。
金剛界の時間は流れの刃。過去も未来も今に凝縮し、理を超えた真理を明晰に照らす。
青年の胸に覚醒の光が走り、理だけでは届かない知の世界を切り開く。
胎蔵界の空間が母の手なら、金剛界の時間は師の眼。
抱き、育み、導き、そして鋭く覚醒させる。
空間と時間——広がりと流れが、青年の内で一つの光となり、魂を満たしていく。
夜は深まり、曼荼羅の光は静かに揺れ、空間と時間は溶け合って、青年の胸に永遠の響きを残した。




