シャマタ想法
「その方法か、つまり、「シャマタ」(止)の法である。
これは、ケース・バイ・ケースで、指導者がその修行者の状態にしたがい、指導してゆくよりほかない。なぜならば、十人十色、千差万別で、人それぞれ、みなその持つ「因縁」「抑圧」がちが
うからである。つまり、医傷が、病人を治するように、詳細なカルテを作製し、治療方法を考えて、綿密に指導をすすめてゆくよりしかたがない。すべての経論が、抽象的な文章でしか「止」の力法を表現できなかったのもむりがない。
わたくしは、修行者の「因縁」(芸運命・抑圧意識)を解放し、これから解脱するためのいくつかの修行方法を編成している。それは、修行者の持つ「因縁」によってみな異なる。だから、前の節で述べた密教占星術による因縁把握は、すでに「シャマタの法」の一部なのである。それは、ソンディのソンディテストが、診断法であると同時に治療法になっているのとおなじである。
この修行法は、クンダリニー・ヨーガその他の古代ヨーガの訓練が主になっている。現代人のつよい抑圧や葛藤をとりのぞくには、肉体と意識の両面から改革してゆかねばならない。肉体と意識とそして頭脳の完全なる改革は、チャクラの覚醒によらねば不可能である。 真言密教の観法・該想法も修行の中にとり入れてあるが、それは、先ず、抑圧意識の除去、それ
から、観法・駅想法に関係のあるチャクラの覚醒訓練をしながら指導してゆく。「シャマタ瞑想法」 である。それにつづいて求聞持聡明法の修行に入る。
ところで、求聞持法の修行とは、大脳の脳細胞を覚醒し、これをフルに活用させようとする特殊技術の修得である。この修行に最も大切なことは、「こころの処理能力」を高めることである。
わたくしは、さきに、「脳細胞がその能力の数パーセントしか動かすことができないのは、ころの処理能力がそれしかないからである」といった。
「こころの処理能力」とは、要するに、抑圧・葛藤の、こころのひずみを除去することである。
ここでも、「止」の方法が大切なのである。
ところが、いままでの求聞持法にはそれがなかった。
この「止」の法をまなんで、こころのひずみを是正し、抑圧・葛藤をきれいに除去する方法を体
得しないと、求聞持法はぜったいに成就しない。脳ははたらくことを拒否するのである。理由はすでにおわかりであろう。むりにはたらくことを強要して修行をつづけると、こころも、からだも、 脳も大きく傷つくのである。(しかしまた、抑圧・葛藤が全然なくなってしまってもいけないのである。人間の改善・進歩・発展にはよい意味での抑圧や葛藤が必要なのである。それが苦行であり修行であり訓練なのである。)
そういう訓練・修行の段階を経ないで、観法や瞑想法、また求聞持法の修行に入るから、精神分裂や性格異常をひき起こし、大乘起信論「止観門」に説くような「魔事」が起きるのである。
密教占星術による強制運命・因縁の把握や分析のしかた、正しいシャマタの法の実施方式などについては、またべつにペンをとろう。それは、いうならば密教の奥儀に属するもので、読者は先ず 「密教入門」により、密教のあたらしい方向についてふかく考えておいてほしいのである。
密教入門———————212




