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弥勒菩薩  2

夜の静けさが兜率天(とそつてん)の宮に広がっていた。その中心には、弥勒菩薩(みろくぼさつ)が蓮華の上に佇んでいる。その穏やかな表情には、数え切れないほどの慈しみと決意が宿っていた。

弥勒。彼の名は「慈しみ」を意味し、未来に訪れる人々の救済を約束された存在である。しかし、その日はまだ遥か先、56億7千万年後の未来。現在仏であるゴータマ・ブッダ(釈迦牟尼仏)が入滅し、この世にブッダがいなくなった後、弥勒が新たな悟りを開く時が来るのだ。

弥勒は今、この天界の一隅で静かに修行を続けている。彼の座下には、蓮華の上に聳える塔のシルエットが浮かび、傍らには水瓶が置かれている。その水瓶は、命の水を象徴し、未来において無数の生命を救う力を秘めていた。

兜率天の時間は地上のそれとは全く異なっている。ここでの1日は、人間界の400年に相当する。そしてこの天界での寿命は4000年――地上に換算すれば、まさに途方もない時間だ。しかし、弥勒にとってそれはほんの一瞬の修行でしかない。

一方、地上では「上生信仰」と呼ばれる信仰が広まり始めていた。中国、朝鮮半島、そして日本において、多くの人々が弥勒の住む兜率天への往生を願い、その慈悲の元での救済を求めた。彼らは信仰に祈りを込め、未来の希望を託すかのように、弥勒の姿を心に描いた。

月明かりが蓮華の周りに輝き、弥勒は静かに目を閉じた。その瞳の奥には、遥かな未来の人々の姿が浮かんでいるようだった。苦しみと悲しみ、そしてそれを超えて輝く笑顔。彼が降臨するその日、世界は再び光に満ち、無数の命が救済されるだろう。

「その時が来るまで、私はただ待つのではない。ここで、全ての生命への慈しみを深め続ける。」

弥勒は微かに微笑む。その微笑みは、未来の希望を抱えた全ての人々に、光のように届いていた。

 

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