UA-135459055-1

大黒天 怒れる戦闘神が笑顔の福の神へ変貌を遂げる

 

 

大黒天

怒れる戦闘神が笑顔の福の神へ変貌を遂げる

夜の帳が静かに降りる山奥の寺院、その奥深くに祀られた黒き像が、まるで生きているかのように鈍い光を放っていた。像の名は大黒天。もとは怒れる戦闘神、破壊の象徴であるヒンドゥー教の神、マハーカーラの化身だと言われている。

かつて、その姿は恐ろしいものであった。青黒い肌に三つの目を持ち、腕は複数本。握られた武器は鋭く、見る者すべてを圧倒する威容を誇っていた。その神が現れるとき、それは戦争の終わりと破壊の始まりを意味した。破壊の神として、マハーカーラは敵を打ち倒し、秩序を作り出す使命を帯びていた。

しかし時が経つにつれ、この神はある変化を遂げることになる。

 

「オン マコキャラヤ ソワカ……オン マコキャラヤ ソワカ……」

僧の低く響く声が本堂に満ちる。祈りの声に応じるかのように、大黒天の像が静かに輝きを増していった。その姿はいつしか変貌を遂げ、かつての激しい怒りの神の面影はどこにもない。今、彼は頭巾をかぶり、優しげな微笑を浮かべていた。手には打ち出の小槌と福袋を抱え、足元には米俵が積まれている。

「だいこく様、どうしてそのようなお姿になられたのでしょうか……」

若い僧侶が像に向かい問うた。師である老僧は穏やかに目を閉じ、語り始めた。

「だいこく様は、かつて破壊と戦闘の神であった。しかし、日本の地に根付く中で、大国主命と習合され、人々の生活を守る福の神へとその姿を変えられたのだ。力で敵を制するだけでは、人は平和を得られないと悟られたのだろう」

「では、戦いの神としての力はもうお持ちでないのですか?」

「いや、その力は失われてはいない。ただ、必要なときだけ現れるのだ。だいこく様の祈りを捧げれば、いかなる戦いにも勝利する力を授けてくださると言われている。しかしそれ以上に、人々が欲するのは財福と平和だ。それをお与えになる存在となったのだよ」

若い僧侶は黙り込み、祈りの声を再び響かせた。

 

夜が明けると、大黒天像は穏やかな光を取り戻していた。その姿は、怒れる戦闘神の影をどこにも残していない。だが、その微笑の裏に秘められた力は、今も人々を守り続けているのだ。

 

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*