息に宿る道安那般那の真義
夜は沈み 音はほどけて
息だけが そこに在る
観る者すら 溶けていく
その境に 触れた夜
吸うたびに 世界が消えていく
吐くたびに “私”がほどけていく
息と念が ひとつになるとき
動きそのものが 止まる
喜も楽も やがて過ぎ去り
残るものは ただ“観”だけ
生まれる前の 静けさの中で
すべては すでに終わっている
数えるように 息を追って
静けさだけを 探していた
乱れる心 押さえつけて
「これが道だ」と 信じていた
外を閉ざし 内を見つめ
揺れる思考に 名をつける
だがその奥で かすかに響く
見ている“誰か”の気配
息を観ていた そのはずが
いつしか境が 消えていく
吸うのは誰だ 知るのは誰だ
問いだけが 残される
触れた瞬間 崩れ始める
「私」という 輪郭が
息と念が 交わるたびに
存在が ほどけていく
吸うことも 吐くこともなく
ただ“起こり”だけが消えていく
息と心が 完全に止まり
時間さえも 意味を失う
喜も楽も 影となり
観る者さえ 跡を消す
始まりもない 終わりもない
その静寂に 還っていく
すべてはすでに 起きていない
それでも 世界は現れる
消えたはずの この身の中で
ただ在るだけの 光がある




