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八つの光の道

 

八つの光の道

その山は、霧に包まれ、天と地の境を見失わせるほど静かだった。青年ソウマは、古びた羅漢の石像の前にひざまずき、心を鎮める。旅の始まりに師から託された言葉が、今も耳の奥に響いている。

「ソウマよ。もしお前が迷いの彼方を超え、真なる目覚めに至らんと願うなら、この八つの道を歩むのだ」

正見――
彼はまず、真実を見極める目を持とうとした。世界の苦しみ、その原因、滅びの可能性、そしてその超克の道。それが「四つの真理」であると教えられた。ソウマは山々を巡り、村人たちの生老病死を見つめながら、その道理を静かに心に描いた。

正思惟――
真理をただ知るだけでは足りない。それを思い、日々の行動にどう生かすかを問わねばならない。怒りが湧く時、欲望に流されそうになる時、彼は立ち止まり、思索した。自らの心の奥底を静かに照らすように。

正語――
ある村で、彼は言葉によって人を救い、また別の地で言葉によって争いを招く者を見た。ソウマは悟った。言葉とは、刃にも橋にもなり得る。ゆえに彼は、真実を語り、和を生み、無益な言を慎むことを誓った。

正業――
日々の営みが心を形づくると知ったソウマは、殺さず、盗まず、誤った情欲に耽らぬよう努めた。山の泉を守り、道に咲く花に礼を尽くすことすらも、彼にとっては修行の一環となった。

正命――
一匹の猿を売って金に換えようとした商人を見て、ソウマは苦悩する。生きとし生けるものと調和して生きるとは何か。彼は、己の「命の使い方」を問い続け、三業――身・口・意――を清らかに保とうと誓う。

正精進――
疲れが彼を襲う。何のための修行か、自分はなぜ歩くのか。だが師の言葉を思い出す。「怠ることなかれ。悟りは歩みの果てにある」。ソウマは再び歩き出す。真理を求める心が、彼の背を押す。

正念――
ある夜、夢の中で亡き母が現れ、彼を責める幻を見た。目覚めたソウマは自分の心が揺らいでいると知る。正念――今この瞬間に目覚めていること。それが邪念を払い、真の気づきへと導くと悟る。

正定――
山奥の庵で、彼は長い瞑想に入る。心は波立つが、やがて静けさに包まれ、迷いは消えていく。そしてある朝、朝露が葉を滑り落ちる音にさえも、深い法の響きを感じたとき、彼の意識は深い安らぎへと至った。

八つの道は、遠くにあるものではなかった。すべては、日々の一歩の中にあったのだ。

「歩みこそ、さとりの道なり」

ソウマは、再び杖を手に、東の空へと歩き出した。

 

 

 

 

 

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