阿含経
だが、成長の道は、平坦ではなかった。
あるとき、アジャタは大きな失敗を犯した。
僧院に寄進を持ってきた村人たちを見て、
心の奥に「施しを受ける者としての誇り」ではなく、「施しを受けることへの慢心」が生まれてしまったのだ。
「私は修行者だ。施されて当然だろう。」
そんな思いが一瞬でも胸をよぎったことを、師・カッサパはすぐに見抜いた。
その夜、火のような叱責が飛んだ。
「アジャタ! お前は何を学んできたのか! 法は飾りではない! 心が汚れたなら、百の布施も、千の聴聞も、毒にすぎぬ!」
師の怒号に、アジャタは震えながら地に伏した。
心の中で何度も言い訳を探した。
──だが、どの言葉も、自分を救ってはくれなかった。
その夜、アジャタは僧院の裏手の林に一人座った。
闇が、彼を責めた。
「お前はもう駄目だ」「修行者にふさわしくない」
そんな声が心の中で渦巻く。
彼は、帰ろうかと思った。
俗世に戻り、楽な生活を送った方がいいのではないか、と。
しかし、そのとき、ふと師のかつての言葉を思い出した。
──「聞いたならば、持て。持ったならば、観よ。観たならば、深き義に至るだろう。」──
「……まだ、私は、観てもいないではないか……」
アジャタは拳を握った。
悔しさと恥ずかしさが混じる涙が、頬を伝った。
彼は静かに額を地に伏せ、誓った。
「私は、ここで終わらない。法に生きると決めたのだ……!」
翌朝、アジャタは、まだ暗い僧院の庭を掃き始めた。
誰に見られるでもなく、静かに。
心に湧く慢心を見つけるたびに、それを払い、
生まれる煩悩をひとつひとつ見つめ、取り除いていった。
師カッサパは、遠くからその姿を見ていた。
だが、声をかけることはなかった。
ただ、静かに、ほほえみを浮かべただけだった。
月日は流れ、アジャタの中で、確かな光が育っていった。
それは、もはや誰に誇るものでもなく、
ただ、静かに己の心を照らす光だった。
ある日、師は言った。
「アジャタよ。
真の修行とは、失敗してなお、立ち上がる心にある。
お前は、ようやくそれを、身をもって知ったのだな。」
アジャタは深く深く礼をした。
彼の額には、もはや一片の慢心もなかった。
そこには、ただ静かに燃える、真実の求道の心だけがあった。
だが、成長の道は、平坦ではなかった。
あるとき、アジャタは大きな失敗を犯した。
僧院に寄進を持ってきた村人たちを見て、
心の奥に「施しを受ける者としての誇り」ではなく、「施しを受けることへの慢心」が生まれてしまったのだ。
「私は修行者だ。施されて当然だろう。」
そんな思いが一瞬でも胸をよぎったことを、師・カッサパはすぐに見抜いた。
その夜、火のような叱責が飛んだ。
「アジャタ! お前は何を学んできたのか! 法は飾りではない! 心が汚れたなら、百の布施も、千の聴聞も、毒にすぎぬ!」
師の怒号に、アジャタは震えながら地に伏した。
心の中で何度も言い訳を探した。
──だが、どの言葉も、自分を救ってはくれなかった。
その夜、アジャタは僧院の裏手の林に一人座った。
闇が、彼を責めた。
「お前はもう駄目だ」「修行者にふさわしくない」
そんな声が心の中で渦巻く。
彼は、帰ろうかと思った。
俗世に戻り、楽な生活を送った方がいいのではないか、と。
しかし、そのとき、ふと師のかつての言葉を思い出した。
──「聞いたならば、持て。持ったならば、観よ。観たならば、深き義に至るだろう。」──
「……まだ、私は、観てもいないではないか……」
アジャタは拳を握った。
悔しさと恥ずかしさが混じる涙が、頬を伝った。
彼は静かに額を地に伏せ、誓った。
「私は、ここで終わらない。法に生きると決めたのだ……!」
翌朝、アジャタは、まだ暗い僧院の庭を掃き始めた。
誰に見られるでもなく、静かに。
心に湧く慢心を見つけるたびに、それを払い、
生まれる煩悩をひとつひとつ見つめ、取り除いていった。
師カッサパは、遠くからその姿を見ていた。
だが、声をかけることはなかった。
ただ、静かに、ほほえみを浮かべただけだった。
月日は流れ、アジャタの中で、確かな光が育っていった。
それは、もはや誰に誇るものでもなく、
ただ、静かに己の心を照らす光だった。
ある日、師は言った。
「アジャタよ。
真の修行とは、失敗してなお、立ち上がる心にある。
お前は、ようやくそれを、身をもって知ったのだな。」
アジャタは深く深く礼をした。
彼の額には、もはや一片の慢心もなかった。
そこには、ただ静かに燃える、真実の求道の心だけがあった。




