「サヘト・マヘトにしよう」
頭の深部から、あの音がまた聞こえはじめた。
重くもなく、鋭くもない。ただ、確かに“そこ”から響いてくる。
私は無意識のうちに身を固くしていた。ついさっき、電撃のような痛みが脳の片隅を貫いた記憶が蘇る。
再びあの痛みが来るのではないか――
おっかなびっくり、そっと意識をその一点に向けた。
だが今回は、何の痛みもなかった。
代わりに、頭の奥、脳の頂上付近に“明星”がふたたびまたたいたのだ。
それはまるで、虚空から差し込んだ一条の光だった。
――私の脳に、異変が起きている。
間違いない。けれど、それは病的な異常ではなかった。
それは、まるで化学反応のような衝撃だった。
脳の深部、視床下部――。
ここに変化が生じていたのだ。
私が長らく探していた“秘密”の原点は、松果体ではなかった。
すべては、この視床下部にこそ存在していたのである。
視床下部は、全ての内分泌腺を統御する司令塔だ。
古来より神秘の腺とされた松果体のすぐ隣に位置するが、実際の主役はここだった。
サハスラーラ・チャクラとは、ヨーガの教えにいう「ブラーマ・ランドラ」とは、松果腺ではなく、視床下部を指していたのだ。
この領域に私は百日間、ポーズとムドラーによって強い圧力を加えつづけた。
同時に、念を集中し、物質的にも精神的にも、圧倒的なエネルギーを注ぎこんだ。
その結果――神経線維に異変が生じた。
化学反応が起きたのだ。
分泌液が交じり合い、神経液が変質し、何かが爆ぜた。
そのとき、閃光が私の網膜を突き抜けた。
火――
それは神経が打たれた衝撃だった。
シナプスが火花を散らすように結び合い、私はついに“明星”を意のままに脳内にまたたかせることができるようになった。
同時に、私の脳は構造そのものが変わっていた。
古の行法「求聞持聡明法」――それは単なる記憶術や瞑想ではなく、
脳内の化学反応によって組織を変革させる、一種の“錬成”であったのだ。
これが「練行(タパス)」というものの真の姿であり、もしかすると私は、かつて誰も知らなかった、まったく新しい法を開発したのかもしれない。




