弥勒の誓い
須弥山(しゅみせん)の遥か上空、兜率天(とそつてん)に佇むひとりの菩薩がいた。彼の名は弥勒(みろく)。人々を救う宿命を持ちながらも、今はまだその時を待ち、静かに修行を続けている。
彼は右足を曲げて左膝の上に乗せ、頬にそっと指を当てた。まるで深い思索に沈むかのように、静かに瞳を閉じている。その表情には、慈愛とともにほんの少しの憂いが滲んでいた。
「56億7千万年後……」
彼は心の中で呟いた。それはあまりにも長い時の流れ。この間に人々はどれほど苦しみ、どれほど迷うことだろう。釈迦が残した教えだけでは救われぬ者たちがいる。その者たちのために、自分はいつか地上に降り立たなければならない。
しかし、どうすればすべての人を救うことができるのか。その答えを見つけるため、彼は日々修行を積み、思索を重ねているのだった。
兜率天の宮殿には、美しい蓮の花が咲き誇り、清らかな香りが風に乗って広がっていた。弥勒はそっと目を開け、はるか彼方の人間界を見つめる。そこには、争い、苦しみ、悲しみに満ちた世界が広がっていた。人々は互いを傷つけ、欲望に惑わされ、真実を見失っている。
「私は、本当に彼らを救うことができるのだろうか……」
それでも、彼は誓った。いつか必ず、地上に降り立ち、苦しむ者たちを救うのだと。
そして彼は、静かに唱えた。
「オン・マイタレイヤ・ソワカ」
それは、未来への祈り。そして、決して揺らぐことのない誓いだった。




