守護神の契り
静かな灯りがともる和室で、ひとりの女性が正座していた。名を美咲という。彼女は幼い頃から運命の重みに耐えきれずにいた。仕事はうまくいかず、恋愛も長続きしない。何かが足りない、何かが欠けている——そんな焦燥感に日々苛まれていた。
「あなたのご先祖の中に、強い徳を持つ方がいらっしゃるかもしれません。」
そう言ったのは、白髪の僧侶であった。彼の名は蓮心。長年、霊的な探求を続け、先祖の霊を成仏させ、守護霊として人に授ける法を体得した男である。
「私のご先祖が……?」
美咲は半信半疑だった。しかし、何かにすがりたい気持ちが勝り、蓮心の指示に従うことにした。
数日後——。
蓮心は静かに瞑想に入った。そして、彼女の血筋を遡り、五百を超える祖霊を霊視した。やがて、一人の美しい姫君が現れた。
「この方こそ、あなたの守護霊としてふさわしい。」
姫君は幽玄な微笑をたたえ、そっと美咲を見つめた。その目は慈しみに満ち、彼女の魂の奥深くまで透徹するようだった。
「この方を守護霊として授けます。しかし、まだ完全に成仏されていない。そのため、まずは仏陀の成仏法を施します。」
蓮心は丁寧に供養を進め、姫君の魂を清めた。そして、美咲に言った。
「一心にこの守護霊を拝みなさい。心を込めて、敬いなさい。」
美咲はその言葉を信じ、毎日、姫君に祈りを捧げた。すると、次第に彼女の顔つきが変わりはじめた。以前はどこか陰のあった顔が、内側から光を放つようになった。肌は透き通るように美しくなり、姿勢も凛としたものになっていく。
そして、ある日——。
彼女は偶然、青年実業家の奏多と出会った。奏多は初対面の美咲を見た瞬間、なぜか心が惹かれるのを感じた。美咲の中に、どこか高貴な輝きを見たからだ。やがて二人は恋に落ち、ついには結婚に至った。
それは、まるで守護霊の姫君が彼女の運命を導いたかのようであった。
だが、蓮心はさらに思索を深めた。
「守護霊の力だけでは不十分ではないか……?」
そう考えた彼は、さらなる探求を続けた。そして、ついに「守護神」という概念にたどり着いたのだった。
守護霊を超え、より強力な神格を持つ存在——それが守護神である。
この秘儀には三つの法が必要だった。仏陀の成仏法、チベット仏教の秘法、そして古代神法。
蓮心は、長年の修行を経てこれらの法を習得し、ついに「守護神」を生み出す力を手に入れた。
「先祖の霊を神格化し、家を守る神として祀る……。これこそが、新たな信仰の形となるだろう。」
こうして、美咲の家には、新たな守護神が生まれた。
その日から、美咲とその家族の運命は、さらに輝きを増していった。




