https://youtu.be/u3iGLasOfWI?si=61R6_kAQmo70KJNs
智慧の導き手──文殊菩薩
古の時代より、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)は人々の心の中に息づいていた。彼はただの伝説ではなく、悟りへの道を照らす智慧の光そのものであった。
剣と経典──真理の象徴
あるとき、悩める若き学僧・慧真(えしん)が山深い寺院に足を運んだ。彼は学問に励みながらも、自らの無知に苦しんでいた。幾度となく経典を読み返し、論議を重ねても、答えは霧のように消えていく。
「私は本当に悟りへ至れるのだろうか……?」
彼はふと見上げた。そこに祀られていたのは、鋭き剣を掲げる文殊菩薩の尊像。剣は迷いを断ち切り、左手に持つ経典は深遠なる真理を示していた。慧真は文殊菩薩に祈りを捧げた。
その夜、彼の夢に金色の光をまとった菩薩が現れた。獅子に乗り、穏やかな微笑を浮かべながら、こう語りかける。
「智慧とは知識を超えた先にあるもの。ただ書を読むだけではなく、己の心に問い続けよ。」
目を覚ました慧真は、不思議と心が軽くなっていた。それまでの焦燥は消え、経典の文字がこれまでとは違って見えた。まるで文殊菩薩の剣が、彼の心の迷いを断ち切ったかのようだった。
聖地・五台山への巡礼
時は流れ、中国・山西省の五台山では、多くの巡礼者が険しい山道を登っていた。そこは文殊菩薩の聖地とされ、彼を慕う者たちが祈りを捧げる地。
一人の少女が母に手を引かれながら、寺の門をくぐる。
「お母さま、文殊菩薩さまは私たちの願いを聞いてくださるの?」
母は優しく微笑みながら答えた。
「もちろんよ。あなたが心から学びを求めるなら、きっと文殊菩薩さまが道を示してくださるわ。」
少女は目を閉じ、深く祈る。文殊菩薩の静かなる眼差しが、彼女の心にそっと降り注いでいた。
日本における信仰
その後も時代が変わろうとも、文殊菩薩の教えは受け継がれた。京都の天龍寺、奈良の興福寺——そこでは今も、受験を控えた若者たちが、智慧の加護を求めて手を合わせる。
「どうか、私の努力が実を結びますように……」
そんな静かな願いが、文殊菩薩のもとへと届く。そして彼の智慧の剣は、今日もなお、迷える人々の心を照らし続けている。




