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「軟酥」の法

軟酥の法

静かなところに座る、もしくは、立位でも構いません。
頭の上に金色に光り輝く塊をイメージしていただき、それが、ゆっくりと溶けて流れ出し、体の内側も外側も隅々まで行き渡理、そして、体にある全ての苦痛や苦悩など全てが足元から流れ出る様子を想像します。

ただ、これだけです。
毎日決まった時間に行っていただいても構いませんし、イライラした時や、気分がすぐれない時、緊張した時などに行っていただくと、気分が落ち着き心身のバランスが改善されように感じることでしょう。

 

「軟酥」の法  輪転生联想法Ⅱ

この法は、「摩訶止観』(中国の坐禅の古典、天台智顗[五三八一五九七]の著書) を学んだ白幽という道人から、臨済禅の白隠禅師に伝えられたもので、青年時 代に、わたくし自身、実行して、これにより重症の結核をなおす糸口をつかん だものである。

 

「軟酥の法」をご紹介しよう。

まず、床の上に、体をまっすぐ伸ばして仰臥する。体の中の力を抜き、眼を 閉じる。それから、鼻の先に一枚のごく軽い羽毛がついていると考える。その はね

 

ひたい 呼吸が調ったら、数を数える。つまり、数息観である。心が安定したら、観 想に入る。鶏の卵くらいの大きさの丸薬が、額の上に乗っていると観ずるので ある。この丸薬は、なんともいわれぬよい香りのするさまざまな妙薬を練りか ためたもので、バターのようにやわらかい。ちなみに、「なんそ」というのは牛 の乳から製したバターかチーズのようなものであるという。

た「なんそ」にひたされる

夜明け前、いままさに、東の空に日が昇らんとしている。あっ、いま、はる か向こうの山の頂に太陽が顔を出した。ぐんぐん昇っていく。その太陽の光 が、わたくしの全身をやわらかくつつむ。すると、その太陽のほどよいぬくも りとわたくしの体温で、頭のてっぺんの「なんそ」がしだいに溶けはじめるの である。バターが溶けるように溶けはじめる。じりじりと溶けはじめて

 

リーブ油のように流れはじめる。ほら、額の上、耳のうしろのほうにも流れて いく。

ごぞうろつぶ しだいに流れてゆく。しかもただ皮膚の上を流れていくだけではなく、眼の中 に入って眼を洗い、耳の中から入って脳を洗い、さらに鼻の穴から咽喉を通っ て気管、肺、胃、腸、肝臓と、五臓六腑にしみわたって、薬効を発揮していととの

なんといういい香りだろう。頭全体がくまなく、「なんそ」の妙薬におおわた。じつにいい気持ちである。「なんそ」は、香油のようによい香りを放ちなが ら、しだいに体の下のほうに流れていく。首から肩、胸、腹、背中のほうにもく。ことに肺の悪いところを、「なんそ」は念入りに循環して洗い清めてくれる。

わたくしには、この霊薬が、肺の黒くなった細胞の間をゆっくりとしみ透っていくのが如実に感じられるのである。「なんそ」は、内臓を全部洗い清める と、今度はそのまま下腹から、腿、膝となおも流れくだり、両足の爪先からし たたり落ちる。そのしたたりはしだいにベッドの中にたまり、背中から腰、腹、胸、とひたし、ついに、あごの下まで、風呂の中につかったように、溶ける。 かれた蛮の中におさまってしまう。この壺はまた明日の朝、開かれるのであ る。わたくしはそこで、じつに心身さわやかになって、静かに眼を開くのである「なんそ」にひたされる。

やがて、「なんそ」は、ベッドの一隅から徐々に流れ落ちはじめ、その下に置よく 約一時間かけて、わたくしは毎日、この「なんそ」浴をやった。というもの の、一時間の「なんそ」浴ができるようになるまで、二、三カ月かかったので ある。最初のうちは、日の光が射しはじめ、「なんそ」が額のあたりまで流れて きたところで、ほかのことに心が行ってしまっていることに気がつき、あわて て戻ってくる。これではいけないというので、もう一度太陽の出るところから やりなおす、ということで、これがあまりくり返されると、腹が立って、つい には寝ていられなくなって床の上に起き上がり、狂人のように目を怒らせてあ たりを見まわしたりしたものである。

しかしわたくしは、なんとしてでも生きぬきたかった。

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