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心の迷宮を解く:ソンディの実践心理学の旅」

心の迷宮を解く:ソンディの実践心理学の旅」

 

 

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  • レオポルド・ソンディは、1893年、当時のハンガリー領(現チェコスロハキヤ領)のニイトラという町で生まれる。父はユダヤハンガリー人で、靴加工職人であった。彼は12人の同胞中、第12子で、かつ後妻の子であった。4歳の時、プタペストにいる異母兄にひきとられ成育した。その後1944年にナチのユダヤ追放の悲運に会うまでの47年間は、この地にあり、教育もこの地で受けたが、幼少時代からの貧困で複雑な家庭環境は、とりわけ異母兄夫婦のいさかいを見るにつけ、彼をして家族の問題に過敏にさせる素地を形成していった。
  • 1911年に高校を卒業と同時に、医科進学のための国家試験に合格。1919年ブタペスト大学医学部より学位を取得している。
  • 大戦後は、プタペスト大学のランシュブルグ教授が主宰する実験心理学研究所の助手にもなり、記憶実験や知能測定の実際を学んだ。最初の公刊論文は、この助手時代の成果である『欠陥知能』であった。
  • 1927年、プタベストの治療教育大学の精神病理学教室の講師に任ぜられ、同時に精神療法クリニックの医長も兼務し、1941年、ナチの追害による公職追放にあうまで、この地位にあった。この14年間は、ハンガリー時代における精神科医としての、もっとも充実した活動の期間でもあった。ことに精神薄弱児の治療と教育に関連しての体質学への関心は、遺伝学への興味となり、ミュンヘン大学のルーディン一派の家系研究に傾倒した。やがて無意識の遺伝学として、配偶者選択や職業選択のあり方に注目させ、ソンディをして生涯のテーマである運命分析学の臨床家たらしめることになった。

 

 

1. ソンディはフロイトの精神分析の本質である「無意識の抑圧と防衛の力動過程」の構造を,思考や観念ではなく目に見える形で表現する選択テストを創案すると同時に,その理論として衝動の選択心理学を創始した.そして,その認識方法を,精神の治療面と診断面で実用化する衝動病理学,衝動診断学を展開し,それによって思考精神医学の退路を遮断,実用精神医学への道を開いた.選択は運命であるゆえ,それは運命分析へと発展したのである.

2. フロイトがいろいろな局面で言及し,立ち止まらざるを得なかった原因,つまり分析を困難ならしめる「素因的なもの」というのは,「いろいろな無意識層のうち特に祖先から伝わり現在その個人の精神に成り変わって自演している厄介な衝動の振る舞い」にほかならなかった.これはソンディ心理学において8個の遺伝子記号の様態で表現される.この「遺伝子の力動過程」を,構造的に視覚化する方法,およびその認識を治療面で実用する運命分析療法を創始し,「終わりなき分析」を終結させる方法を完成した.

要約すれば,ソンディは,フロィトが1905年以来,本能と明確に区別して追求した「衝動 1)」のふるまいを研究し,次のような衝動学の全体系を完成させたのである.

衝動心理学——–「衝動ファクタ・ペクタの心理学」および「実験的症候群論」
衝動測定学——–「ソンディ・テスト」器具,方法,一般的解釈法
衝動診断学——–「実験衝動診断学」および「リンネ式表」,特別な解釈法
衝動病理学——–「衝動病理学A,B」および「自我分析」
衝動分析学——–「運命分析」
衝動治療学——–「運命分析療法」
彼が,多くの流派に分裂した深層心理学を統一しようと考えていたことは,フロイトの真の後継者として当然であった.彼が深層心理学研究の主流と考えた無意識の層は,フロイトの個人的無意識,ユングの集合的無意識,そして彼自身の家族的無意識の3つの層である.

それゆえ,ソンディ・テストの結果得られる前景・理論背景・実験背景の3つの人格プロフィルは,それぞれの無意識層が表現される.すなわち

精神分析的解釈(S.Freud)
象徴分析的解釈(C.G.Jung)
運命分析的解釈(L.Szondi)
の3通りの解釈が同時に実現し,了解され,説明される構造になっている.

本書は,ソンディがフロイトの遺言を完全に引き受け,延長し,無意識の遺伝学と診断・治療学を完成した事実と方法を,心理学徒やカウンセリングを学ぶ人にとって,すぐ役に立つ実用的な形で記載したものである.原稿を書くにあたって先人の訳業も充分に活用したが,重要部分は必ず原著に当たるとともに,ソンディに会って直接確かめた事項に基づき,新たな解釈を付け加えた部分も多い.

本書の各項にちりばめられているソンディの学説は,以下にあげる主要原著から得られたものである.

「運命分析」(1944,1948,1964)
「ソンディテスト」(1946)
「衝動病理学A,B」(1951)
「自我分析」(1956)
「衝動リンネ式表」(1960)
「実験衝動診断法」(1960)
「運命分析療法」(1963)
「衝動統合を失った人々」(1979)

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